25 / 41
ハリーside
25
しおりを挟む「シャーロット嬢、この度は婚約を受け入れてくれてありがとう。」
婚約後の顔合わせ当日。あれから、どうにか俺とシャーロットの婚約を了承してもらい、ようやくシャーロットに会うことができた。久しぶりに会うシャーロットは、一層美しくなっていた。俺が渡したスズランの花束を抱き締め微笑む姿は、可憐で目が離せなかった。
シャーロットに目を奪われてばかりだったが、公爵家の庭を案内されている時、シャーロットの口から驚かされる言葉が飛び出てきた。
「私の父が、何かハリー様やラッセル伯爵へ無茶な条件を言ったのではないでしょうか。ハリー様へ何かご迷惑をお掛けしているのではないでしょうか。」
「な・・・」
「ハリー様、正直に仰ってください。父が無理難題言っているのであれば、私が解決します。何でも致します。ですので、どうか教えてください。」
思わず、動揺してしまったのは、俺の失態だった。だが、公爵が俺に無茶な条件を言ったのは事実だったのだ。
◇◇◇
「婚約は了承しよう。今、シャーロットを守れる者で、ハリー殿以上の適任はいない、とは思う。」
あの日、公爵は苦々しい顔をしながら、そう言った。
「ありがとうございます。必ず幸せに致します。」
「だが、条件がある。」
「は・・・はい。」
公爵の恐ろしい顔を見て、いったいどんな過酷な条件なのかと震え上がった。
「まず、ハリー殿が昔からシャーロットを思っていたことは俺からは伝えない。自分でシャーロットを口説き落とすように。口説けずに、シャーロットが君との婚約を嫌がるようならすぐにでもこの話は無しだ。」
「はい。」
「次に、婚約期間中、スキンシップは無し!エスコート以外触るな!適度に距離を保て!」
「・・・え。」
急に乱心した公爵に戸惑いを隠せなかった。一つ目は理解できた。自分から思いを伝えたいと思っていたし、シャーロットの思いを優先したいとも思っていた。だが、二つ目は。
「え~今時婚前交渉も普通でしょ?ハワードは固いなぁ。」
「こっ婚前交渉だと・・・!駄目だ!絶対許さない!」
「婚前交渉は言いすぎたけどさ~ハワードはさ、口説けとか言ってる癖に、スキンシップ無しは厳しすぎない?ハワードは、夫人と結婚する前は多少スキンシップもしていたでしょ?手を繋いだり、抱き締めたり?」
「いや、俺は一切スキンシップはしなかった。婚約期間は、言葉だけで口説いた。」
「えぇ~堅物だなぁ。俺はがっつり婚前交渉までしてたけどなぁ。」
「お前・・・。」
親世代の閨事情は精神的なダメージがあったが、とにかく俺は公爵と二つの条件の元、婚約を了承してもらった。
◇◇◇
「何でも・・・いや、シャーロット嬢、君のお父上は何も条件など言っていないよ。安心してほしい。」
「ですが、ハリー様・・・。」
俺は、こんな言葉で誤魔化せたと思い込んでいた。やっとの思いでシャーロットに会えたことに舞い上がっていて、シャーロットの不安を上手く聞き出すことも、心の憂いを晴らすことも出来なかった。ここで、すぐ昔から愛していた、と伝えられていたら。公爵がシャーロットを大事に思う余りに、スキンシップしないよう厳しく言われている、と伝えていたら。あんなに拗れることはなかったのだろう。
4
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
かわいそうな旦那様‥
みるみる
恋愛
侯爵令嬢リリアのもとに、公爵家の長男テオから婚約の申し込みがありました。ですが、テオはある未亡人に惚れ込んでいて、まだ若くて性的魅力のかけらもないリリアには、本当は全く異性として興味を持っていなかったのです。
そんなテオに、リリアはある提案をしました。
「‥白い結婚のまま、三年後に私と離縁して下さい。」
テオはその提案を承諾しました。
そんな二人の結婚生活は‥‥。
※題名の「かわいそうな旦那様」については、客観的に見ていると、この旦那のどこが?となると思いますが、主人公の旦那に対する皮肉的な意味も込めて、あえてこの題名にしました。
※小説家になろうにも投稿中
※本編完結しましたが、補足したい話がある為番外編を少しだけ投稿しますm(_ _)m
結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……
君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる