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シャーロットside
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しおりを挟む淑女失格の走りを見せた私は、辻馬車を見つけ、乗り込もうとした。その時。
「シャーロット嬢!」
腕をぐいっと捕まれ、振り向くとハリー様がいた。眉を寄せ、悲しそうな顔をしている理由が私には分からなかった。
「お嬢様・・・速すぎます・・・。」
はぁはぁ、と息を切らし、ソフィアが追い付いてきた。
「この年でお転婆はお止めください。」
「シャーロット嬢は昔からお転婆で運動神経が良かったな。」
懐かしそうに目を細めるハリー様は、私を大事にしているように見えて、苦しくなる。そんな私を余所にハリー様は、ソフィアを見て、とんでもない提案をしてきた。
「ソフィア殿。私にシャーロット嬢を送らせてくれないだろうか。」
「え・・・」
このタイミングで二人きりなんて止めてほしい。どうにか断ってほしくて、ソフィアへ目で合図するが、ソフィアはにっこりと笑い「是非お願い致します。」と頭を下げた。
◇◇◇
辻馬車に揺られ、公爵家に向かう。舞踏会の時は斜め前に座られた、というのに今は何故か隣同士で座っている。想像以上の距離に近さに胸が高鳴った。
「シャーロット嬢・・・やはり私のような粗野な人間とは結婚したくないだろうか。」
「へ・・・?」
結婚したくないのはハリー様の方ではないか。お父様がきっと無理難題押し付けた婚約が嫌だったのではないか。だからあのような美女と楽しく過ごしていたのではないか。そう言葉にしたいのに、口からは何も出てこない。
「シャーロット嬢、この前の舞踏会の時から様子が可笑しかった。やはり愛するエドモンド第二王子を久しぶりに目にして、私との結婚が憂鬱になってしまったのではないか。」
・・・誰が、誰を愛しているですって?
「私は、騎士の仕事だけしかしてこなかった。エドモンド第二王子のような賢さも人脈もない。だから、シャーロット嬢と結婚して公爵家の仕事をする時もきっと迷惑をかけるだろう。君よりも十六も歳上だというのに、女性の扱いも全く上手くできない。」
ハリー様は、私がエドモンド様を愛していると思い込んでいて、それを悲しんでいるの・・・?
「だが、どうか傍にいてほしいんだ。」
私の手を遠慮がちに握り、眉を寄せたままの悲しい表情で懇願しているハリー様には本当のことを言うしかなかった。
「・・・お慕いしております。」
「やはり、エドモンド第二王子を・・・。」
まるで死刑宣告を受けたかのような絶望の表情を浮かべるハリー様は自分のことだとは夢にも思わなかったのだろう。拗れた私たちの思いをどうにかほどきたい、そう強く思った。
「いいえ。ハリー様、貴方をお慕いしております。十五年前からずっと貴方のことだけを愛しております。」
呆けた顔で私を見つめるハリー様を、誰にも見せたくないと、独占欲が私の胸で弾けた。
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