上 下
14 / 33

青崎真司郎と企み

しおりを挟む
観客席の上、そこにあるのは恐らくVIP席。そこでは莫大な金が動く賭けが行われている。ならばその賭けを成立させる運営が必要なはず。運営を受け持つのが街の役場の奴で、そのトップ運営委員長的な役回りを受け持つのは街の上層部と見て間違いない。
もしそこで俺が暴れたら相手の最優先手はVIP客の保護。こっちが先手を取れていれば勝機は……
「トイレはそっちじゃねえぞ。」
不意に背後から話しかけられて少し動揺を覚える。
「らしくねえな。俺が背後についてくることくらいおまえなら匂いと気配でわかるんじゃねえのか? そんなことも忘れるくらい冷静さを欠くなんて。」
「……別に。せっかくだからシステムの中見て回ってみようかと思って。入院してた頃から気になってたんだ。」
「そんな薄っぺらい嘘はいらねえ。おまえ何をする気だ青崎。」
問い詰める白松の目を見て俺は諦めたようにフッと笑った。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「突撃~~!!」
合図とともにどす黒い球体から20近くの黒い手が放たれる。通山がそれを回避するたびに地面がえぐれて振動が起きる。
「俺に攻略できない、ねえ。さすがトップ5は言うことが違う。けどなあ俺ももう上位ランカーになって12年だ。いい加減2桁に甘んじるのはうんざりなんだよ!」
言葉と同時に通山の周辺を円を描くように風が生じる。その渦はだんだん強く、だんだん大きくなっていき会場の地面を削るほどの威力を見せつける。
「俺の奥義トルネードだ。人間の1人や2人簡単に殺すことが可能だ。これでもテメェの能力には及ばないか?」
すると黒い手はトルネードに突っ込み、次々と消滅する。
「びっくりドッキリ~~~!」
「その耳障りな声、やめろよ。」
通山は殺気に満ちた目で睨みつけるとトルネードを常坂の方向へと進行させる。
『地面を巻き込みながら進むトルネードはさらに大きくなっていき、その猛威はただ1人常坂に向けて放たれる。観客席から見てもわかる明らかに尋常じゃないまさに最強の風!!
ここにきて互いの奥義をぶつけ合う力押し勝負だ!!』
「僕のブラックホールは~~~~!!!」
常坂は引くことはせず、黒い球体をトルネードに当てる。上位ランカー同士が切り札を見せ合う激しいバトル展開に観客も盛り上がる。
「すげえ! 異次元のバトル! やっぱり上位ランカーってのは化け物だな!」
「1番楽しんでた2人がいないけどな。」
テンションの上がる堀川に末高が水を差す。
「どこ行ったのかしら。青崎君……。」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「……まあ、ここまできて誤魔化そうだなんて甘いよな。」
俺は笑顔を意識的に消して、白松の真剣な眼差しに答える。
「いいぜ、言うよ。俺が何をしたいのか、何をしようとしてるのかをな。」
すぐ下から聞こえる大きな歓声も今の2人にはただのBGMと化していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

梯子の街のニーナ ~婚約破棄から始まる底辺貴族のダンジョン成り上がり冒険譚~

冴吹稔
ファンタジー
 三代前の武勲によって貴族の末席に加えられ、今も声望あるドゥ・シュヴァリエ家。  現当主の三男であるテオドールは、自分を婿にと声をかけてくれた子爵家の令嬢アナスタシアを、日々甲斐甲斐しくエスコートしていた。  だがある日、些細なことが原因で彼は婚約を破棄されてしまう。王立学院での学業も沙汰やみ、実家にもどったものの、子爵家からの支援が打ち切られたため居場所はないに等しい。意気消沈するテオドールのもとに、幼馴染で二つ年上の旧友から手紙が届く。  それはかつて王国を救った勇者でさえ攻略を完遂出来なかった巨大な地下迷宮、『梯子(ラダー)』の探索への誘いであった。 『梯子』を擁するのは王国の北方、ユーレジエン州の古都エスティナ。  テオドールはその街で、高級娼婦を名のる知的で奔放な美女・ニーナと出会う――

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...