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ようこそ悪人ども

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「おい、おい起きろ。起きろって。」

そんな声で僕は目を開けた。視界に入ったのは見覚えのない若い男の声だった。
若い、とはいえ生前高校3年生だった俺よりは年上そうな……生前?そうだ!俺はもう!

「俺は、死んだはずじゃ…」

「やはり君もか。後ろを見てごらん。」

そう言われて後ろを見た。後ろ、いや正確には後ろは後ろでも下だ。そこには何千、何万もの人がいた。後ろを振り向いて初めて気づいたが俺は崖の上にいた。

「あそこにいる奴ら全員が口を揃えて自分は死んだはずだというんだ。もちろん俺も自分は死んだと思っている。」

「あれだけの数の人間が全員?」
そうなるとここは

「ここは死後の世界。そう考えるのが妥当だろうな。」

俺の顔を見て何を考えているかがわかったらしい。

「自己紹介が遅れた。俺の名は松田創士(まつだそうじ)。自分の名前は割と好きだったが死んだ後まで使うことになるとは思わなかったよ。よろしくな。」

この流れで自分の名前を名乗っていいのだろうか。何せ今わからないことだらけの状態なのだ。一瞬そう悩んだが悪気のなさそうな顔をしていたので、深く考えるのはやめた。

「俺は海崎大地(かいざきだいち)。俺も海と陸どっちも制覇できそうなこの名前嫌いじゃない。よろしくな創士。」

「はは、お前面白いやつだな。」
「そいつはどうも」

と言ってお辞儀(じぎ)をして見せると、創士はさらに笑った。
すると下から「なんだあれ!」という声とどよめきが上がった。
その声で目線を創士から声のした方へ移すと、何かが宙に浮かんでいるのが見えた。

『レディース&ジェントルメーン!!ボーイズ&ガールズ!!』

その声は明らかに宙に浮かんでいる何かから発せられている。

「あれって、人間か?」

創士がそうつぶやいた。確かに人間のような姿をしている。だが人間にしてはサイズがでかすぎる。横にではなく、全体的にだ。言うなら人間ではなく巨人だ。だが巨人という言葉で片付けるのも違う気がする。もっと何か不思議なオーラのようなものを感じる。そんなものは俺個人の感想に過ぎないがともかく

「人間以外の何か、だな。」

『ここには現在100万の悪人があつまっていまぁーす。』

「悪人だあ?俺は何もした覚えないぞ!」

誰かが叫んだ。もちろん俺だって身に覚えがない。

『はあ、これだから人間は罪深い。あなた達本当に死ぬまでに一度も罪を犯さなかったと言い切れますか?』

「なんだと?」

『いいですか?罪に大小は存在しません。何も殺人や強盗などだけが罪ではないのです。
信号無視などの軽犯罪、さらに人に嘘をつくなども罪。最近ではながらスマホというが増えてますねえ。さあ、あなたはこれらの罪を一度も犯さなかったと胸を張って言えますか?』

するともう、誰も反論の声をあげなかった。

『あなた達も一度は聞いたことがあるでしょう?神様はいつも見ているよ、とね』

さっきから俺は1つ気になっていることがある。それはあの宙に浮かんでいる何かの声に何故か聞き覚えがあることだ。

『あ、申し遅れました。私、神です。以後よろしくお願いします。ヘルゲームプレイヤーの皆さん♫』

「神だと?テメェふざけるのもいい加減に」

「そんなことはどうでもいい!」

俺はそう叫んだ。すると言葉を遮られた奴が俺につっかかってくる。

「なんだテメェ?俺にケンカ売ってんのか。」

「だからそういう茶番は今どうでもいいだろうが。それより神とやら、早くそのヘルゲームってやつについて説明して貰おうか。」

『懸命な判断ですよ。さすがです、海崎大地君。』

「やっぱり。あの朦朧(もうろう)とする意識の中でごちゃごちゃ語りかけてきやがった声の主はお前だな?会えて嬉しいぜ。」

『察しがいいね、君。いいプレイヤーになりそうだ。それじゃ説明に入ろう。ヘルゲーム、通称償いのゲームについて…!』
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