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【第96話】作戦開始

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城の外では、元富士の国兵士で今は奴隷兵士となった兵士達が、降伏をしていた頃、城内でトルゴラムの兵士達は
女性達から歓迎の宴が開かれていた。

「さぁ皆様。まずはごゆっくりくつろがれてください。お酒、食事の用意はできています。」

鈴多が兵士達へ告げた。

「さぁこちらへ。」

カリディアの女性達が兵士達を案内していく。こちらも粒ぞろいの美女が対応している。警戒はしているが誘惑に負けて食事を取ることにした。

お酒をすすめられて気が大きくなる兵士達。

「こっちにもくれ!!」

「はぁ~い。」

この接待を取り仕切っているのは、富士の国では、夜のお店を営んでいた。女性だった。名前は凛麗(リンレイ)

この作戦を考えたのは、喜介とライゲン将軍。与一将軍は追い返すことを提案したのだが、こちらの被害もそれなりにあるのではないかと懐柔作戦を提案してきたのだった。

「まぁせっかくここまで、作った街が少しでも壊れるのは避けたいな。」

与太郎も戦いたいとは考えたが、その作戦も悪くはない気がしていたので許可をした。

そして、アリスにいつも鍛えられている、凛麗が接待役を取り仕切ることになったのだった。

凛麗も培ったこれまでの経験が活用されるならと全力で取り組む決意をした。


「おい、こっちにこい!」

「キャアー。」

酒に酔った兵士達が、女性達に抱きつき始めたのだった。

凛麗もこうなることは予想していた。
カリディアは女性は多いが、皆が接待に慣れているわけではなかった。上手に対応できない者もいて不安になっていた。

「やめてください!」
まだ若い女性が抵抗していた。

「どうかせれましたか?」
周辺の女性がフォローに入るが無駄だった。

「ちょっと夜の相手もしてくれよ!」

「いや!」

怒った兵士が武器に手をかけた。剣を抜こうとしたのだった。

その瞬間、1人の女性が前に立った。

「ボコッ。」

凛麗の拳によって眠らされたのだった。

「やっぱりこうなるのよね?」

凛麗はチラッと鈴多を見た。

「・・・・・」

「やっぱりまずかったかな?」

「大丈夫かと。与太郎様も話しておられていました。」


凛麗が作戦について話し合いの時に、

「何かあったら、夜も共にして骨抜きにしてあげますよ!」

凛麗はその決意を語ったのだった。

アリスは不機嫌に話を聞いていたのだった。どうしてトレドラスの敵かもしれない敵をもてなさなくてはいけないのかと不満だったが、クルミから譲り受けたカリディアを守りたいとの気持ちもありしぶしぶ我慢していたのだった。

そして、この凛麗の発言には我慢できなかった。

「それっ・・・・」

「それは駄目だ!許可できない。」

アリスと重なるように与太郎が凛麗の発言を否定した。

「お前がそこまでする相手ならいいがそうでなければ、叩きのめせ。」

「えっと~」

凛麗は、当然夜の経験もそれなりにあり、それもこの国を守るためならばと考えていたのに否定され動揺してしまった。

「旅人を迎えもてなすのはいいが、相手にも礼節がなければ叩き出すのは仕方あるまい。」

与一も良しとはしていないようだった。

「相手を見極め、懐柔するか潰すか凛麗に任せる。」
与太郎が決定を下した。

凛麗は、複雑な表情で考え込んでいた。

アリスは少しホッとして、与太郎を見直した。

「それで、その部隊の責任者は私の相手かな?」

アリスは与太郎に問いかけた。

「バカか、それはおれの相手だろ?」

「姫にバカは発言はどうかと思いますよ。」

元トレドラスの支援部隊、今はアリスの護衛部隊の隊長ラウルが注意した。

「まぁ姫が相手するのはどうかと私も思います。」

「止めるなら、相手になるよ。」

アリスが、与太郎、ラウルに怒気を浴びせた。そして護衛部隊は隠れて潜むことを条件で了承させたのだった。


その頃、カリディアの異変を聞きたクルミはローマンとフリードと相談をしていた。

「兵数が1万、これはカリディアを潰せると思ってるのかしら?ちょっと伏兵はないのかな?」

「伏兵の気配は感じられないそうですがあってもおかしくはないです。」

クルミの質問にローマンが答えた。

「あと考えられるのは陽動ですかね。本命が別にあるとかですかね。」

フリードがクルミと同じ考えを発言した。

これはカリディアのイサカリ商店から『妖精通信』でもたらされた情報だった。

「こちらから支援を送りますか?」

ローマンの質問にクルミは考え込む。

送りたいのは送りたいが、時間的に間に合わない。精霊召喚で運ぶのも限度がある。

それでも精霊に手助けをお願いするしかないと思い風の精霊ルードを呼び出した。

「クルミ様何かありましたか?」

「ちょっと様子を見てきてほしいことが・・・・あっ。」

水の精霊ルティーがクルミに飛びかかり、クルミはルティーを抱っこする形になった。

「にゃ~。」

「あなたが行ってくれるの?」

「任せろにゃ~。」

ルティーがしゃべって答えた姿にローマンはびっくりしていた。

「ルティー様が行かれるのであれば私がクルミ様のお世話をしてお帰りをお待ちしましょう。」

ルードがそう言ってくれた。

「じゃあにゃ。」
そういうとルードの肩をフミフミして消えてしまった。

「ルティーに任せておけば大丈夫でしょう!」

クルミはそう言ったが、ローマンは不安だった。

「クルミ様、大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だよ。ルティーはあれでも最上位の水の精霊だから。」

「そうなのですか・・・」

ローマンとフリードに精霊について少し教えた。

精霊は下級精霊、中級精霊、上位精霊、最上位精霊と分けることができることを、妖精召喚しかできない2人には関係ないことでもあるが知っていて損はない。

「ルティー様は最上位の精霊ですので、クルミ様の生命力を必要なく動くことができます。」

最上位精霊の一番のメリットはここだった。

つまり独自で自由に動けるのだった。

しかしクルミはルティーの動きで気になることがあった。ルードからフミフミして風の力を少し持っていったような気がしたのだった。

後は、無事に乗り越えることを祈るクルミだった。
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