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【第82話】支援部隊のその後

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ある日クルミのもとに珍しい客が訪れた。

レオパルド王とミン宰相だった。今回はミンシアの姿でやってきた。

「竜神王国の王は暇なの?」
「まぁ、ちょっとした外遊と休暇だ。」

「クルミ様、おかわりないようで何よりです。」
ミンシアは優雅に挨拶をした。こういうところをクルミは真似したいと思った。

「今日は何か用なの?」
「俺はただの観光だけど、ちょっとこいつらはアリスに用があってな。」

ドレドラスの支援部隊を引き連れていた。最初はレオパルド王の護衛かと思ったが違ったみたいだ。

「もうすぐ返ってくると思うよ。今孤児院に行ってるから。」
「孤児院ですか。」

事情について説明を行う。そうしている間にアリスがシャオ、ライゲンが一緒に戻ってきた。部屋にはメリット、与一も入ってきた。

「アリス、レオパルド王が話があるんだって。」
アリスがレオパルド王の前に座る。

「竜神王国の兵士達は戦場に向かう前に手紙を置いていくことが慣わしになっている。帰ってきてその手紙を破る為にも生きて返ってくることが一番大事だ。」

レオパルド王は、アリスに手紙を渡した。
「ドレドラスの手紙だ。」

アリスは今にも泣きそうな顔で手紙を受け取った。

「恐れながらレオパルド王。少しお時間をいただけませんでしょうか?」
シャオが王に進言した。

「構わない。」

「こちらの部屋で読もうか?」
メリットが一緒に出ていった。

与一とライゲンが顔を見合わせる。
あの2人出遅れたなとクルミは思った。

「ジィ2人!!メリットにまかせて。
それで他には何かあるの?」

「あぁ。クルミに向けて、支援部隊に向けても手紙を預かっている。」

レオパルド王は、クルミにも手紙を渡した。

クルミは手紙を開けた。

『クルミ殿へ』

『この手紙を見ているということは、そういうことなんだろう。クルミ殿は決勝で戦って我と引き分けて腕前も中々なのは認める。』

何を言っているんだとツッコミたくなった。

『アリスが懐いているので、悪い人間ではないだろう。こちらに支払える物はないがアリスのことをよろしくお頼み申す。何かあったら呪い殺すからな。』

ドレドラスらしい文だった。
お願いされなくてもアリスを放おっておくことなどできないのに。

「わざわざ届けてくれてありがとう。」
クルミは、レオパルド王とミンシアに礼を伝えた。

「それでドレドラスが率いていた竜神王国の支援部隊はどうしてここへ?」

「その件だが、先にクルミ殿に話しておくか。部隊のいる外まで来てくれるか?」

「わかった。」

想像はつくけどね。クルミ達は外に出た。外に出るとすぐに支援部隊は、集合、整列をした。

「カリディアの女王クルミ様に、是非ともお願いしたいことがあります。」

ドレドラスと、一緒によくいた副部隊長が発言した。

「私はこの部隊をドレドラス隊長より託された、ラウルと言います。」

「それで要件は何かしら?」

また親衛隊が増えるのかとドキドキしながら構えた。

「支援部隊の1部隊ではごさまいますが、この度アリス様に仕えたくお願い申し上げます。」

全員が合わせてお願いをした。

私じゃないんだぁと思ってしまったのはちょっとショックなクルミだった。

「それって竜神王国を除隊するということなの?」

「はい。除隊してこちらに来ております。」

あっさりとレオパルド王の前で発言をした。これは不味いのではないかと思い、レオパルド王とミンシアを見た。

「許可はしてあるから大丈夫だ。」

ミンシアが事情を説明し始めた。


トルゴラムの侵略が終わり、ドレドラスが亡くなり支援部隊も解散となるはずだったが、多くの支援部隊がこのまま部隊の継続を願ったのだった。

ミン宰相がレオパルド王に報告をした。
「ドレドラスが率いていた支援部隊員の多くが除隊してそのままカリディアに留まりたいと嘆願に来ております。」

そもそも支援部隊は、竜神王国の有力者達の3男や妾の子など有り合わせて作られた部隊だった。本人達も王国での出世など無縁でやる気もなく親から言われたままに生活をしていた。

そんな支援部隊の部隊員は自分達より弱そうなドレドラスを最初はあまり好きではなかった。

しかし、その人柄、面倒見の良さで次第に好かれるようになっていった。

部隊員の話を親身に聞いたり、アドバイスをしてくれたりと今まで誰も相手にしてくれなかった自分達を必要としてくれた初めての人になったのだった。

そんなドレドラスが亡くなった。自分達の力の無さ、弱さを嘆いた。

そこにドレドラスからの手紙がきたのだった。

『皆に助けられて感謝する。力は弱い部隊長、そして部隊だったが絆は竜神王国最強の部隊だった。その最強の部隊員に最後のお願いをしたい。アリスの力になって欲しい。しかし強制でも命令でもなく自分の意志で決めてくれると嬉しい。』

今まで誰にも必要だとされていない部隊員にとってこれは、自分の悔しさを晴らす機会だと考えた。

そして王への嘆願に繋がったのだった。

ミン宰相の話を聞いた。レオパルド王は
「その支援部隊に会おう。」

王は広場へと向かった。その途中にカーグシン竜王も表れた。

「面白いことになったの。お前はどうする?」
「まだどうするかはわかりませんが、部隊員を見て決めたいと思います。」

カーグシン竜王は頷くと何も言わずに着いてきた。
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