上 下
29 / 106

【第29話】一騎討ち

しおりを挟む
不死鳥の炎によって人と魔物の間に炎の壁ができた。

壁の向こうでは、冒険者達と兵士達が避難誘導をジークの指示で行っていた。

クルミは魔物の方にいた。そして、ローマンも

「ローマンなんで、こっちにきちゃたの?」
クルミが声をかけた。

「1人で、行かせるわけにはいきません!」

魔物は少し減ったがまだ半分の150体は残っていた。

「全く、少しさがって!一気にいくから!」

「何を?」

【疾風竜胆一閃】

クルミが横凪の一閃を放った。
数十体の魔物が切られた。

魔物が恐怖して、敗走していく。
敗走した魔物が炎の壁により、人々の方へ行けない状況だから、クルミは力業にでたのだった。

今までは、逃げた魔物が人々のいる方に逃げてしまう可能性があったから時間を稼いでいて、本来殲滅ならクルミ1人でも可能だった。

「これは夢なのか....」
ローマンが呆けていた。

そして、近づいてくる親衛隊をクルミは察知していたのだった。

「フリード、そっちに逃げた魔物を可能な限り撃破して!」

「かしこまりました!親衛隊今こそ力をクルミ様に見せるときだ!」

「おおーーー!」

魔物相手に怯まず向かっていく、クルミが鍛えたこともあるが、妖精達が、【妖精の加護】を施していたのだ。

クルミは、短期間で妖精に気に入られたことに驚いていた。

「これならいける!」

クルミも殲滅に加わったのだった。

ほどなくして、魔物は消え去り窮地を脱したのだった。

「ジーク王子!」
「ありがとう!」

避難誘導をしている、人々が感謝の言葉を告げているのを聞いてクルミも嬉しい気持ちになっていた。


その頃、レオパルドとミン宰相、セオドは玉座にたどり着いていた。

「さてそろそろ本番を始めようか!」

レオパルドがルーク公爵に化けた中級悪魔のガウラに話しかけた。

「お前は竜王の息子か?邪魔ばかりしおって。」

「ルーク公爵は、死んでるのか?」

悪魔は死体を操ることが多いので死んでいるのかと思ったが、

「まだ生きているよ。その方が利用価値がありますから。」

「こざかしい!」

レオパルドは、ルーク公爵は殺しても仕方がないと考えた。

ルーク公爵と激しい打ち合いになったが、こちらにはミン宰相の援護魔法があった。

徐々にレオパルドが有利になっていったのであった。

「このままでは、厳しいですか。どうやら魔物もやられてしまったようです。」

「それでどうするんだ?」

「今回は引き上げましょう。この屈辱はいずれ必ず返しにきます!」

ルーク公爵から、黒い煙が消えた。

「逃げられたか、中級程度の悪魔ってところだろうな。」

「あれで中級ですか....」
セオドは、驚いていた。自分ではかなわなかっただろう。

「さて、ルーク公爵。意識は戻りましたか?」

「あーぁ。そなたは?竜神王国のものか?」

「こちらはレオパルド王でございます。」

「此度の件、感謝いたします!
なんとお礼をもうしたらよいか。」

「悪魔の仕業だから仕方がないけど、それで許されるのか?」

「無理でしょう。責任は取ります。あなた様が来られていると言うことはジーク王子もこちらへ」

「あーぁ   人々の避難誘導をしている。」

ルーク公爵は、考え込んでいるようだ。そして、操られていたが多少意識もあり今まで何をしたのか白状した。

魂をもらうと言うことで、定期的に国民を上級悪魔への生け贄にしていたのだった。
それも数百人にも及ぶとのこと。

それして一番の罪はジークの父親である王を殺したのだった。

普通の国では死罪は免れないだろう。

ここは、他国なのでレオパルドはこの国の者に判断を任せることにした。

ジークのもとへルーク公爵を連れていく。

ルーク公爵は、ジークへ問いかけた。

「これ以上は、言葉は無用!騎士らしく一騎討ちで勝敗を決めようではないか!」

レオパルドはこの発言に驚いたが、悪魔に利用されたと言っても王を殺すことは重罪。この言葉の意味を理解していた。

「叔父上、何を全ては悪魔の企みだったのではないのですか?」

「悪魔でも何でもこの国を強くするために利用したまでのこと。いざ!」

「待ってください!」

ルーク公爵は切りつける。
それを防ぐジーク。

攻めるルーク公爵に守るジーク。

クルミが止めに入ろうとしたが、レオパルドに止められる。

「はなせ!」
「一騎討ちの重さを理解できないのか?」

この戦いには、深い意味があるのかもしれないがジークは人を殺すことなどまだできないだろうと考えていた。

「大丈夫だから、見てろ。」
「何が大丈夫だ、もしジークに何かあったらあなたを許さないから!!」

本来なら王にそのような言葉を言うなど許されないのだが、ミン宰相は思わず身震いをして何も言えなかった。

クルミの覇気がすごすぎたのだ。
悪魔と戦っているレオパルドよりも濃密で重い覇気だった。

竜王が話していた。クルミを怒らせるなとの忠告が理解できた気がした。

戦いは、あっけなく終わった。
攻めるルーク公爵に対して、ジークは剣を捨てたのだった。

「ジーク!!」叫ぶクルミ。

迫るルーク公爵。そして、剣を振りかぶった。ジークは目を閉じた。

「グハッ」

ルーク公爵は、自分で胸を刺したのだった。

ジークは目を開くと、倒れかけたルーク公爵が見えた。

「叔父上!!」

抱きかかえるジーク。

「これで全ての責任を渡しに!
レオパルド王!見届け人をお願い...」

「しかと! 竜神王国の王、レオパルドが宣言する。反逆人ルーク公爵は、ジーク王子によって処罰された!」

最初からレオパルドには、分かっていた。罪の重さに耐えきれていなかったルーク公爵を。人はそれほど強くはないのだと。

「オーーー!」

回りの人々からは歓喜の声があがる。
ジークは、涙を流していた。

走りよるクルミ。ジークを抱きしめた。まわりにはその姿を見せないように、そっと優しく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

公爵に媚薬をもられた執事な私

天災
恋愛
 公爵様に媚薬をもられてしまった私。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷 ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。 ◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡

処理中です...