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第5話 喧嘩を売らないで!!!
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午前6時
ピピピピッ!ピピピピッ!ピピ
「……六……時」
スホマのアラームを消し、時間を確認する。
眠っている体をぐっと起こし、部屋から出ると、魔獣のうめき声が聞こえてきた。
「ぐおぉぉぉぉぉ……すぴ~」
「……母さんか」
確か昨日は夜勤だから、早朝に帰ってくると言っていたな。
僕は寝ている母さんを起こさないよう静かに一階に降り、朝ごはんと
弁当の準備でもしようかと考えていると、
「晴斗くん、おはよう」
「あっ、おはようございます」
母さんの再婚相手である一平さんが、声をかけてくる。
一緒に住み始めて一週間以上経つが、やはり距離を置くことが多い一平さん。
きっといい人に違いないのだが、父さんのことを思い出すとちょっとな。
一平さんを受け入れるのはまだ時間がかかりそ……って、これは!
「口にあうかどうか分からないけど、良かったら食べてほしいな」
机に目を向けると、そこには栄養バランスがとれていて、実に美味しそうな朝ごはんと弁当が並べられていた。
「いいんですか?!」
「青春真っ只中の少年が早起きするもんじゃあないよ。ボクが高校生の頃なんて、毎日遅刻ギリギリの時間に起きていたぐらいだしね」
な、なんということだ!
父さんが亡くなってからずっと日課だったものに、今、終止符が打たれようとしている!
「で、でも! そんなのわるいですよ!」
「家族なんだし、遠慮しないの。それに、僕はリモートの仕事が多いからね。暇も多いし、これから朝は気にしなくても大丈夫だよ」
「まぁこれでお互いの距離が近くなるなら安いもんさ」
「お父さん!!」
「……思っていたよりも距離が遠くなくてよかったよ」
父さん、さようなら!
これからは過去の事を忘れ、一平さんという新しいお父さんとの家族の思い出を深めていくよ!
……と、冗談を考えてしまうほど僕にとっては嬉しい出来事だ。
何て言ったって、一日の睡眠時間が増えるのだから!
僕は一平さんの想像通り美味しい朝ごはんを食べ終え、学校に行く準備を始めようと部屋に戻ると、トイレに行くため起きていた航太くんと目が合う。
「航太くん、おはよう!」
「……」
航太くんは軽く会釈して、そのまま部屋に戻った。
彼は現在中学生なのだが、いじめにあった過去を持っているため、現在は半場引きこもっている状態らしい。
一平さんからは今は見守っていてほしいと言われ、僕も母さんもそれを承諾した。
まぁ人によって触れてほしくないこともたくさんあるだろうし、家族になったとはいえ、すぐに仲良く! ……とは簡単にはいかない。
だから、航太くんが拒絶してこない限り、時間をかけて仲良くなっていこうと思う。
「やばい! のんびりしていたら遅刻ギリギリだ!」
そして僕は家を後にし、学校へと向かうのだった。
※※※
学校に着くまでは約40分
自転車で通ってもいいのだが、軽い運動にもなるからね。
通り道の商店街を抜け、電車で10分。電車を降りて、徒歩20分で学校に着く。高校に通い始め、早1週間。
まぁ普通の男子高校生の日常……
「ハルー!」
すると学校に向かっている途中に、日常とは遠く離れた存在、魔王TAKADAのの襲撃だ。
僕はとっさに身構えるが、
「ぶっ」
「おはよう!」
時すでに遅し。
ドンっ!! と強い衝撃が、僕の背中を襲う。
朝からなんて力で叩くんだ。魔王にでも殴られたかの威力。
これは高田さんなりのスキンシップと言ったところか。
「ごふっごふっ…おはよう高田さん。朝から無駄に元気だね」
「うん!」
皮肉を言ったつもりなのだが……。
その元気分けて欲しいよ。
僕は学校という単語だけで寝込む事ができるのに。
「ハルは元気ないね」
「学校に喜んで行く人は少ないと思うよ」
「そう? アタシは最近学校に行くのが楽しみだぞ!」
「もしかして僕と会えるから嬉しいとか?」
「……」
「ちょっ、い、痛い! 照れるたびに殴るのやめない?!」
顔を真っ赤にして、チラチラと僕を見てくる。
彼女に暴力というものがなければ、僕はコロッと心を奪われていただろう。
まぁ高田さんには夢のまた夢か。
そして毎日の恒例になりつつある儀式を終えた高田さんは、一緒に行くのが当然のように僕の横に並んで歩きだす。
「そういえばさ。ハルってLINEやってる?」
まずスマホを持っている高校生ならやっているに決まっている。
これを聞いてくるということは……
「ハルに何かあった時のためにも交換しておいても悪くないでしょ?」
やっぱり。
何かあったらって、ほとんど高田さんが原因になりそうだ。
その時は、すぐさま警察に連絡し、暴行罪で逮捕してもらお
「えへへ。これでいつでも連絡できるね」
僕は抵抗などはせず、普通に交換した。
拒否したらダメージを負うのは必須だからね。
とりあえず高田さんから連絡が来るたびに恐怖したくないから、明るい着信音に変えておこう。
※※※
「起立、礼」
委員長の声と同時に、この時間の授業が終わる。
さて、次の授業は音楽だから……移動教室か。
クラスメイト達は続々と教室を出る。
僕は未だに友達0なので、一人で向かわなければならない。
高校に入学してから早一ヶ月だが、何故か誰からも話しかけてもらえず、自分からも何度か話しかけても避けられる。
一体僕が何をしたと言うんだ!
「ハル! 一緒に行こ!」
「!」
高田さんが声をかけてくると同時に、クラスメイト達の視線が僕に集中する。
風のうわさで聞いたところ、高田さんは最近、この学校の番長を倒したのだとか。
まず進学校であるこの学校に番長がいることにもツッコミどころ満載だが、一番問題なのが、その番長を倒した高田さんだ。
高田さんによると、
『絡まれたから殴った』
らしい。
何故絡まれたら殴るという選択肢があるんだ。
なんか番長が可哀そうに思えてきた。
見た目に惑わされて、魔王にちょっかいをかけてしまうとはな。
そういったことで、高田さんの悪名が広がってしまい、見事学校中の恐れられる存在になったとさ。
まぁ本人は気にしてないらしいけど。
では、そんな彼女に話しかけられる僕はどうだろう。
「何あの子」
「怖~」
「関わりたくはないな」
「ちょっと可愛いくて頭がいいからって」
「てか話しかけてるやつ誰?」
「あんなやついたっけ」
「あいつも関わらない方がいいな」
こうなる訳さ☆
高田さんと一緒にいると誰も近づいてくれない。
彼女が原因で、僕にまで風評被害が起きている。
この状況は非常にまずい。
高校でぼっちは嫌だ!
ここは少し注意しておいた方がいいな……
「高田さん。極力目立つような声量で話しかけないでよ。みんな見てるから……」
と小声で言ってみると、高田さんは顔の形相を変え、クラスメイトを睨む。
「あ゙あ゙ん? 何見てんのよ!」
「ち、違う! そういう事じゃなくて……あっ」
クラスメイト達は僕たちから逃げるように、教室を出て行った。
……僕の高校生活、終わった。
こうして晴斗は、他の作品との違いを少し出すためとは言え、やはり暴力ヒロインなんかよりも、ありきたりな優しいヒロインの方が良いと実感するのだった。
ピピピピッ!ピピピピッ!ピピ
「……六……時」
スホマのアラームを消し、時間を確認する。
眠っている体をぐっと起こし、部屋から出ると、魔獣のうめき声が聞こえてきた。
「ぐおぉぉぉぉぉ……すぴ~」
「……母さんか」
確か昨日は夜勤だから、早朝に帰ってくると言っていたな。
僕は寝ている母さんを起こさないよう静かに一階に降り、朝ごはんと
弁当の準備でもしようかと考えていると、
「晴斗くん、おはよう」
「あっ、おはようございます」
母さんの再婚相手である一平さんが、声をかけてくる。
一緒に住み始めて一週間以上経つが、やはり距離を置くことが多い一平さん。
きっといい人に違いないのだが、父さんのことを思い出すとちょっとな。
一平さんを受け入れるのはまだ時間がかかりそ……って、これは!
「口にあうかどうか分からないけど、良かったら食べてほしいな」
机に目を向けると、そこには栄養バランスがとれていて、実に美味しそうな朝ごはんと弁当が並べられていた。
「いいんですか?!」
「青春真っ只中の少年が早起きするもんじゃあないよ。ボクが高校生の頃なんて、毎日遅刻ギリギリの時間に起きていたぐらいだしね」
な、なんということだ!
父さんが亡くなってからずっと日課だったものに、今、終止符が打たれようとしている!
「で、でも! そんなのわるいですよ!」
「家族なんだし、遠慮しないの。それに、僕はリモートの仕事が多いからね。暇も多いし、これから朝は気にしなくても大丈夫だよ」
「まぁこれでお互いの距離が近くなるなら安いもんさ」
「お父さん!!」
「……思っていたよりも距離が遠くなくてよかったよ」
父さん、さようなら!
これからは過去の事を忘れ、一平さんという新しいお父さんとの家族の思い出を深めていくよ!
……と、冗談を考えてしまうほど僕にとっては嬉しい出来事だ。
何て言ったって、一日の睡眠時間が増えるのだから!
僕は一平さんの想像通り美味しい朝ごはんを食べ終え、学校に行く準備を始めようと部屋に戻ると、トイレに行くため起きていた航太くんと目が合う。
「航太くん、おはよう!」
「……」
航太くんは軽く会釈して、そのまま部屋に戻った。
彼は現在中学生なのだが、いじめにあった過去を持っているため、現在は半場引きこもっている状態らしい。
一平さんからは今は見守っていてほしいと言われ、僕も母さんもそれを承諾した。
まぁ人によって触れてほしくないこともたくさんあるだろうし、家族になったとはいえ、すぐに仲良く! ……とは簡単にはいかない。
だから、航太くんが拒絶してこない限り、時間をかけて仲良くなっていこうと思う。
「やばい! のんびりしていたら遅刻ギリギリだ!」
そして僕は家を後にし、学校へと向かうのだった。
※※※
学校に着くまでは約40分
自転車で通ってもいいのだが、軽い運動にもなるからね。
通り道の商店街を抜け、電車で10分。電車を降りて、徒歩20分で学校に着く。高校に通い始め、早1週間。
まぁ普通の男子高校生の日常……
「ハルー!」
すると学校に向かっている途中に、日常とは遠く離れた存在、魔王TAKADAのの襲撃だ。
僕はとっさに身構えるが、
「ぶっ」
「おはよう!」
時すでに遅し。
ドンっ!! と強い衝撃が、僕の背中を襲う。
朝からなんて力で叩くんだ。魔王にでも殴られたかの威力。
これは高田さんなりのスキンシップと言ったところか。
「ごふっごふっ…おはよう高田さん。朝から無駄に元気だね」
「うん!」
皮肉を言ったつもりなのだが……。
その元気分けて欲しいよ。
僕は学校という単語だけで寝込む事ができるのに。
「ハルは元気ないね」
「学校に喜んで行く人は少ないと思うよ」
「そう? アタシは最近学校に行くのが楽しみだぞ!」
「もしかして僕と会えるから嬉しいとか?」
「……」
「ちょっ、い、痛い! 照れるたびに殴るのやめない?!」
顔を真っ赤にして、チラチラと僕を見てくる。
彼女に暴力というものがなければ、僕はコロッと心を奪われていただろう。
まぁ高田さんには夢のまた夢か。
そして毎日の恒例になりつつある儀式を終えた高田さんは、一緒に行くのが当然のように僕の横に並んで歩きだす。
「そういえばさ。ハルってLINEやってる?」
まずスマホを持っている高校生ならやっているに決まっている。
これを聞いてくるということは……
「ハルに何かあった時のためにも交換しておいても悪くないでしょ?」
やっぱり。
何かあったらって、ほとんど高田さんが原因になりそうだ。
その時は、すぐさま警察に連絡し、暴行罪で逮捕してもらお
「えへへ。これでいつでも連絡できるね」
僕は抵抗などはせず、普通に交換した。
拒否したらダメージを負うのは必須だからね。
とりあえず高田さんから連絡が来るたびに恐怖したくないから、明るい着信音に変えておこう。
※※※
「起立、礼」
委員長の声と同時に、この時間の授業が終わる。
さて、次の授業は音楽だから……移動教室か。
クラスメイト達は続々と教室を出る。
僕は未だに友達0なので、一人で向かわなければならない。
高校に入学してから早一ヶ月だが、何故か誰からも話しかけてもらえず、自分からも何度か話しかけても避けられる。
一体僕が何をしたと言うんだ!
「ハル! 一緒に行こ!」
「!」
高田さんが声をかけてくると同時に、クラスメイト達の視線が僕に集中する。
風のうわさで聞いたところ、高田さんは最近、この学校の番長を倒したのだとか。
まず進学校であるこの学校に番長がいることにもツッコミどころ満載だが、一番問題なのが、その番長を倒した高田さんだ。
高田さんによると、
『絡まれたから殴った』
らしい。
何故絡まれたら殴るという選択肢があるんだ。
なんか番長が可哀そうに思えてきた。
見た目に惑わされて、魔王にちょっかいをかけてしまうとはな。
そういったことで、高田さんの悪名が広がってしまい、見事学校中の恐れられる存在になったとさ。
まぁ本人は気にしてないらしいけど。
では、そんな彼女に話しかけられる僕はどうだろう。
「何あの子」
「怖~」
「関わりたくはないな」
「ちょっと可愛いくて頭がいいからって」
「てか話しかけてるやつ誰?」
「あんなやついたっけ」
「あいつも関わらない方がいいな」
こうなる訳さ☆
高田さんと一緒にいると誰も近づいてくれない。
彼女が原因で、僕にまで風評被害が起きている。
この状況は非常にまずい。
高校でぼっちは嫌だ!
ここは少し注意しておいた方がいいな……
「高田さん。極力目立つような声量で話しかけないでよ。みんな見てるから……」
と小声で言ってみると、高田さんは顔の形相を変え、クラスメイトを睨む。
「あ゙あ゙ん? 何見てんのよ!」
「ち、違う! そういう事じゃなくて……あっ」
クラスメイト達は僕たちから逃げるように、教室を出て行った。
……僕の高校生活、終わった。
こうして晴斗は、他の作品との違いを少し出すためとは言え、やはり暴力ヒロインなんかよりも、ありきたりな優しいヒロインの方が良いと実感するのだった。
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