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第4話 ケーキと一緒に痛みはいかが?
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前回のあらすじ
幼なじみの高田桜と出会った晴斗は、桜の喧嘩の姿に昔のトラウマを思い出し、失禁した後殴られ、新し家族にギクシャクする日を過ごした。
そして場面は次の日―――
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
「待ちなさい!」
昨日高田さんに告白された僕だが、僕は恐れるあまり拒否ることにした。
そして今日は殺されるかもしれない。
「逃がすか!」
「ぐぇっ!!」
襟を掴まれ、首が閉まる。
ものの5分間の逃走劇が幕を閉じる。
「学校でも避けて、どういうつもり?!」
「昨日理不尽な暴力をされて、逃げない訳がないです!」
「あぁん?!」
「ひぃぃ!すみません!」
多分、周りからはヤンキーにパシられるいじめられっ子とかに見られているんだろうなー。
「殴ったって十発だけよ!」
「十発も殴ったじゃないか! おかげで今朝の寝覚めは最悪だったよ!」
「だってハルが悪いんだもん……」
り、理不尽すぎる!
告白されて断ったら殴るという神経があるなんて……。
そしてあまつさえまだ殴り足りないと言うのか!
「ぼ、僕は暴力に屈しないぞ! 例えこの体が朽ちようとも僕はと言いたいですができれば死なない程度でおなしゃす!!!」
僕は頭と手をぴったりと地面につけ、誠心誠意のDOGEZAをする。
「ええ? 何で土下座されなくちゃいけないのよ!」
土下座だけでは許さないということか。
じゃあ靴を犬のように舐めるしか助からないな……
「昨日のことはもういい……こともないけど! 一応自分の中では整理できたから気にしてない」
え?
「じゃあ何で追いかけて来るの?」
「何でって……」
そして高田さんは顔を赤らめさせながら、ゆっくりと口を開く。
「喫茶店……一緒に行こうと思ったら」
………
「お金忘れちゃった☆」
「今度返してくれればいいわ」
ちくしょう!!
僕は再度逃げ出したが、結局喫茶店まで連行された。
※※※
学校から徒歩二十分弱の喫茶店。
商店街に並ぶ店の一つであり、学生の中で密かに人気のスッポトだと聞く。
「アタシはこのいちごのショートケーキとカフェオレお願いします。ハルは?」
「僕だけ先に会計いいですか?」
「カフェオレもう1つ」
「かしこまりました」
「……」
店の中にも、窓の外にもちらほらと同じ学校の生徒が見える。
もしクラスメイトに見られたら変な噂が回らなければいいけど……
「ふふ、ハルと二人で喫茶店なんて嬉しいわ」
「ははは、僕は嬉しくないような楽しくないような」
するとガンッと弁慶の泣き所を蹴られ、僕は静かに悶絶する。
「い、痛いじゃないか!」
「ハルってしばらく会わないうちに冷たくなったわね」
いや、昔と変わらずあなたに恐怖を感じていますけど。
「な、何でそんなに僕の事が好きなの?」
僕は疑問だった事を聞いてみることにした。
「え?」
「いやおかしいよ。だって僕、何も取り柄がないし、昨日も告白してくれたのに断ったんだよ? そんな男と一緒に喫茶店行こうなんて普通思わないよ」
もしかしたら、高田さんが好きな人を勘違いしているパターンもあるはずだ。
いや、その場合であってくれ!
「まず一つ」
すると高田さんは淡々と話し出す。
「ハルだけに限らず、取り柄がない人なんていない。嘘でもそう言う事は言わないで」
急に大人の女性みたいに怒られた。
「で、ハルのどこが好きかって言うと…」
高田さんはしばらく沈黙する。
…もしや無いって事はないだろうな?
「いっぱいあるけど強いて言えば、アタシがピンチになったら助けてくれる所…かな」
誰だい? そのナイスガイは?
助けてくれたって過去形だけど、もちろん僕が何か助けた覚えはない。あと冷静でも、まして強い訳がない。
「あっ! あとツンデレなところと、顔が……ちょっと良い」
ツンデレはあんたでしょうが!
……まぁ面倒だし言わないけど。
しかし、顔が良いか……僕の可能性も捨てきれないな!
「あとアタシはまだハルをあきらめたつもりはない」
「え?」
まさか昨日の記憶を消したのか?
「引っ越していた時の空白が空いているからね。今回は仕方ないわ。だからその空白を埋めるために、ハルがアタシの事好きになるまでアタックし続けるつもり」
「は、はぁ」
いや好意はありがたいのだけどね?
だが、やはり僕ではないな。
きっと高田さんが好きなナイスガイと僕は別人だ。しばらく会わなかったせいで、記憶に障害を覚えたに違いない。
じゃあ僕に出来ることはただ一つ。
「今からでも遅くない。一緒に病院に行こう」
記憶障害を治すことだ。
「何でよ!」
「大丈夫。きっと治るはずさ。ゆっくり記憶を元に戻していこう」
「はぁ?……よく分からないけど、とにかくアタシがハルの事が好きなの!」
いやマジで分からん。
もっと具体的に聞いて、何を企んでいるのか暴いてやる!
「お待たせしました」
大きないちごが乗ったショートケーキとカフェオレ二つが、テーブルに並べられ、店員はホールへと戻った。
「美味しそうね!」
ちっ! 今はそんなことは……
「……うん」
ふわふわのスポンジと、滑らかなクリームが交互に重ねられ、その間には大きないちごがケーキいっぱいに敷き詰められている。
「ん~! 美味しい♡」
そしてケーキの頂上にはショートケーキの王冠、丸々のいちごが乗せられている。そう、これはインスタ映えのようなオシャレに着飾っていないごく普通のショートケーキだ。
だが、美しく切り分けられている部分は1mmのずれのない美しい切りくちであり、その上!
「ハルも食べる?」
しまった! つい見惚れてしまった。
がめついと思われるから、誤解を解かないと。
「い、いらない」
「……よだれ出てるよ?」
気付くと僕はよだれを垂らしてケーキを見ていた。甘党の僕にケーキがあればよだれが垂れても仕方がないよ…恥ずかし。
「そ、そうだね。追加で注文しようかな」
「……お金足りないから、一口あげる」
「その間は何だい?」
「な、ないものはないの!」
まぁ別にいいけど。
でも確か僕が財布を忘れたという設定だったか。
しかし、僕は一口ではなくもっと食べたい。
やっぱりあったという設定に変えるか。
「いや、大丈夫。さっきカバンをよく見たらあ…あれ?」
ない…あれ?財布がない!
「確か帰る時にはあったのに?!」
「帰る時には?」
しまった! このままだと嘘をついていたとバレる。
「い、いや、見間違いだったかな?あはは」
「ふーん…じゃあどうするの?一口食べる?」
一口では物足りない。だが、それでも食べたいし…
「…一口だけ貰おうかな」
せっかくのチャンスを逃す訳にもいかない。むしろ味見ができてよかった。美味しかったらまた改めて食べればいい訳だし。
「あーん」
「え?」
僕がフォークを取ろうとすると、高田さんがケーキを刺したフォークを僕に向ける。
「ほら、食べて」
さすがにカップルじゃないのに、それは……人の目がある所でやるのは恥ずかしい。
「フォ、フォークあるから!ほらここにあrいてててててててて!!」
横に置いてあったフォークを持つなと言わんばかりに、高田さんは僕の指をへし折ろうとしてくる。
「あ~ん」
「いや僕達付き合ってる訳じゃないしさ!それに同じ学校の人にも見られると僕としてはいやぁぁぁぁぁ?!?」
「あ・あ・ん!!」
…これ食べないと殺されるわ。
「……」
僕は意を決して食べる。
周りの人から、外に歩いている人にも見られ、ヒソヒソなにか言われてる。
「美味しいでしょ?」
「…うん」
今は美味しさよりも恥ずかしさの方が強い。
高田さんは実に嬉しそうだ。
「もう一口食べなさいよ」
確かにたくさん食べたいと思っていたが、これ以上公開処刑を食らうわけにはいかない。
絶対断ろう。
「も、もうお腹いっぱいたたたたたたた?!」
すると今度は、僕の足を強く踏んでくる高田さん。
まさか女子と喫茶店にいくと酷い目に合うなんて思いもしなかった。
「食・べ・る?」
やだよー。
でも食べないと何されるか分からないよー。
それにさっきから僕が嫌そうに食べているから店員さんとかほかのお客さんが変なものを見るかのように見てくるよー。
「あぁ、いやその……はい」
僕には食べるという選択肢しかないのだと理解した。
「おいしいね」
「……はい」
僕は今日、高田さんと食べるケーキが美味しくない事を初めて知った。
幼なじみの高田桜と出会った晴斗は、桜の喧嘩の姿に昔のトラウマを思い出し、失禁した後殴られ、新し家族にギクシャクする日を過ごした。
そして場面は次の日―――
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
「待ちなさい!」
昨日高田さんに告白された僕だが、僕は恐れるあまり拒否ることにした。
そして今日は殺されるかもしれない。
「逃がすか!」
「ぐぇっ!!」
襟を掴まれ、首が閉まる。
ものの5分間の逃走劇が幕を閉じる。
「学校でも避けて、どういうつもり?!」
「昨日理不尽な暴力をされて、逃げない訳がないです!」
「あぁん?!」
「ひぃぃ!すみません!」
多分、周りからはヤンキーにパシられるいじめられっ子とかに見られているんだろうなー。
「殴ったって十発だけよ!」
「十発も殴ったじゃないか! おかげで今朝の寝覚めは最悪だったよ!」
「だってハルが悪いんだもん……」
り、理不尽すぎる!
告白されて断ったら殴るという神経があるなんて……。
そしてあまつさえまだ殴り足りないと言うのか!
「ぼ、僕は暴力に屈しないぞ! 例えこの体が朽ちようとも僕はと言いたいですができれば死なない程度でおなしゃす!!!」
僕は頭と手をぴったりと地面につけ、誠心誠意のDOGEZAをする。
「ええ? 何で土下座されなくちゃいけないのよ!」
土下座だけでは許さないということか。
じゃあ靴を犬のように舐めるしか助からないな……
「昨日のことはもういい……こともないけど! 一応自分の中では整理できたから気にしてない」
え?
「じゃあ何で追いかけて来るの?」
「何でって……」
そして高田さんは顔を赤らめさせながら、ゆっくりと口を開く。
「喫茶店……一緒に行こうと思ったら」
………
「お金忘れちゃった☆」
「今度返してくれればいいわ」
ちくしょう!!
僕は再度逃げ出したが、結局喫茶店まで連行された。
※※※
学校から徒歩二十分弱の喫茶店。
商店街に並ぶ店の一つであり、学生の中で密かに人気のスッポトだと聞く。
「アタシはこのいちごのショートケーキとカフェオレお願いします。ハルは?」
「僕だけ先に会計いいですか?」
「カフェオレもう1つ」
「かしこまりました」
「……」
店の中にも、窓の外にもちらほらと同じ学校の生徒が見える。
もしクラスメイトに見られたら変な噂が回らなければいいけど……
「ふふ、ハルと二人で喫茶店なんて嬉しいわ」
「ははは、僕は嬉しくないような楽しくないような」
するとガンッと弁慶の泣き所を蹴られ、僕は静かに悶絶する。
「い、痛いじゃないか!」
「ハルってしばらく会わないうちに冷たくなったわね」
いや、昔と変わらずあなたに恐怖を感じていますけど。
「な、何でそんなに僕の事が好きなの?」
僕は疑問だった事を聞いてみることにした。
「え?」
「いやおかしいよ。だって僕、何も取り柄がないし、昨日も告白してくれたのに断ったんだよ? そんな男と一緒に喫茶店行こうなんて普通思わないよ」
もしかしたら、高田さんが好きな人を勘違いしているパターンもあるはずだ。
いや、その場合であってくれ!
「まず一つ」
すると高田さんは淡々と話し出す。
「ハルだけに限らず、取り柄がない人なんていない。嘘でもそう言う事は言わないで」
急に大人の女性みたいに怒られた。
「で、ハルのどこが好きかって言うと…」
高田さんはしばらく沈黙する。
…もしや無いって事はないだろうな?
「いっぱいあるけど強いて言えば、アタシがピンチになったら助けてくれる所…かな」
誰だい? そのナイスガイは?
助けてくれたって過去形だけど、もちろん僕が何か助けた覚えはない。あと冷静でも、まして強い訳がない。
「あっ! あとツンデレなところと、顔が……ちょっと良い」
ツンデレはあんたでしょうが!
……まぁ面倒だし言わないけど。
しかし、顔が良いか……僕の可能性も捨てきれないな!
「あとアタシはまだハルをあきらめたつもりはない」
「え?」
まさか昨日の記憶を消したのか?
「引っ越していた時の空白が空いているからね。今回は仕方ないわ。だからその空白を埋めるために、ハルがアタシの事好きになるまでアタックし続けるつもり」
「は、はぁ」
いや好意はありがたいのだけどね?
だが、やはり僕ではないな。
きっと高田さんが好きなナイスガイと僕は別人だ。しばらく会わなかったせいで、記憶に障害を覚えたに違いない。
じゃあ僕に出来ることはただ一つ。
「今からでも遅くない。一緒に病院に行こう」
記憶障害を治すことだ。
「何でよ!」
「大丈夫。きっと治るはずさ。ゆっくり記憶を元に戻していこう」
「はぁ?……よく分からないけど、とにかくアタシがハルの事が好きなの!」
いやマジで分からん。
もっと具体的に聞いて、何を企んでいるのか暴いてやる!
「お待たせしました」
大きないちごが乗ったショートケーキとカフェオレ二つが、テーブルに並べられ、店員はホールへと戻った。
「美味しそうね!」
ちっ! 今はそんなことは……
「……うん」
ふわふわのスポンジと、滑らかなクリームが交互に重ねられ、その間には大きないちごがケーキいっぱいに敷き詰められている。
「ん~! 美味しい♡」
そしてケーキの頂上にはショートケーキの王冠、丸々のいちごが乗せられている。そう、これはインスタ映えのようなオシャレに着飾っていないごく普通のショートケーキだ。
だが、美しく切り分けられている部分は1mmのずれのない美しい切りくちであり、その上!
「ハルも食べる?」
しまった! つい見惚れてしまった。
がめついと思われるから、誤解を解かないと。
「い、いらない」
「……よだれ出てるよ?」
気付くと僕はよだれを垂らしてケーキを見ていた。甘党の僕にケーキがあればよだれが垂れても仕方がないよ…恥ずかし。
「そ、そうだね。追加で注文しようかな」
「……お金足りないから、一口あげる」
「その間は何だい?」
「な、ないものはないの!」
まぁ別にいいけど。
でも確か僕が財布を忘れたという設定だったか。
しかし、僕は一口ではなくもっと食べたい。
やっぱりあったという設定に変えるか。
「いや、大丈夫。さっきカバンをよく見たらあ…あれ?」
ない…あれ?財布がない!
「確か帰る時にはあったのに?!」
「帰る時には?」
しまった! このままだと嘘をついていたとバレる。
「い、いや、見間違いだったかな?あはは」
「ふーん…じゃあどうするの?一口食べる?」
一口では物足りない。だが、それでも食べたいし…
「…一口だけ貰おうかな」
せっかくのチャンスを逃す訳にもいかない。むしろ味見ができてよかった。美味しかったらまた改めて食べればいい訳だし。
「あーん」
「え?」
僕がフォークを取ろうとすると、高田さんがケーキを刺したフォークを僕に向ける。
「ほら、食べて」
さすがにカップルじゃないのに、それは……人の目がある所でやるのは恥ずかしい。
「フォ、フォークあるから!ほらここにあrいてててててててて!!」
横に置いてあったフォークを持つなと言わんばかりに、高田さんは僕の指をへし折ろうとしてくる。
「あ~ん」
「いや僕達付き合ってる訳じゃないしさ!それに同じ学校の人にも見られると僕としてはいやぁぁぁぁぁ?!?」
「あ・あ・ん!!」
…これ食べないと殺されるわ。
「……」
僕は意を決して食べる。
周りの人から、外に歩いている人にも見られ、ヒソヒソなにか言われてる。
「美味しいでしょ?」
「…うん」
今は美味しさよりも恥ずかしさの方が強い。
高田さんは実に嬉しそうだ。
「もう一口食べなさいよ」
確かにたくさん食べたいと思っていたが、これ以上公開処刑を食らうわけにはいかない。
絶対断ろう。
「も、もうお腹いっぱいたたたたたたた?!」
すると今度は、僕の足を強く踏んでくる高田さん。
まさか女子と喫茶店にいくと酷い目に合うなんて思いもしなかった。
「食・べ・る?」
やだよー。
でも食べないと何されるか分からないよー。
それにさっきから僕が嫌そうに食べているから店員さんとかほかのお客さんが変なものを見るかのように見てくるよー。
「あぁ、いやその……はい」
僕には食べるという選択肢しかないのだと理解した。
「おいしいね」
「……はい」
僕は今日、高田さんと食べるケーキが美味しくない事を初めて知った。
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