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【第六章】クレイア
【第十三話】ククル・ウィスター<1>⑦
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「……何か、狙ってそうな気がするな」
ボソリと呟かれた言葉は、対戦相手には聞こえていなかった。
相手は自分の攻撃に夢中になっている。
こんな遅い攻撃、リアルに目を瞑ってみても避けられるだろう。
周りからは相手を応援する声が響いていて、どこまでもククルの時と同じ展開だが、恭司の頭の中はそれ以外のことで一杯だった。
さっさと片付けて万事に備えるのもいいが、ここにきてさっきの話が気になってくる。
『大会に出場しそうな選手の情報はブラックマーケットで高く売れる』
売りに行く人間は大会に出場できない人間だと思っていた。
だが、
よく考えてみればそうとは限らない。
『大会に出場する選手』がライバルを蹴落とすために敢えて流す可能性もあれば、情報を使って実行したい『賭け主側の人間』だって、当然自分でも情報収集するだろう。
いやむしろそっちの方が明らかに現実的だ。
さっきの殺気のことを考えても、『敵』はそのどちらかである可能性が高い。
あるいは……
(……無いとは思うが、俺の正体に気がついている……?)
後者だとすれば事態はかなり深刻だ。
気付くには至っていなかったとしても、可能性を感じた者がいたとすれば、そいつは現状で最も危険な存在となる。
ボルディスの長男どころでは無い。
もしそうならそいつこそがいの一番に殺さなくてはならないターゲットだ。
今日すぐにでも始末しなければならない。
敵になるのかどうかも含めて、可能性のある者を把握しておくことは急務だ。
「ま、参りました……」
と、そんなことを思っていた所で、目の前の槍使いから声が聞こえた。
考え事と他への注意で気付かなかったが、どうやら決着までククルと同じになってしまったらしい。
ククルの勝ち方に良い感情を抱かなかっただけに、少し申し訳ない気持ちになった。
「ありがとうございました」
恭司は最低限のマナーだけ尽くして、そそくさとその場を去る。
至急、ユウカと話さなくてはならないことが出来た。
「それでは、本日の『実技訓練』の授業はここまでとする!!各自、疲れを残さぬよう入念にストレッチしてから教室に戻るように!!以上!!解散ッ!!」
そこで、先生から授業終了の号令がかかった。
どうやら組み合わせ的に恭司が最後だったらしい。
ユウカの所に戻ると、ユウカは体操着姿のまま、不思議そうな表情で恭司を見つめていた。
ユウカが対戦に行ってからの一連の出来事が疑問なのだろう。
恭司は無表情のままだったが、ユウカはとりあえず、
「お疲れ様。初白星おめでとう」
とだけ言った。
恭司はその様子にフッと微笑むと、ユウカの頭をポンポンと撫でる。
「ありがとう。ちなみに後で相談したいことがあってな。……少し真剣な奴だ」
「……分かった」
恭司の声のトーンで察したユウカは、小さい声と共に頷いた。
そして、
格技場に残ってストレッチをするクラスメイトたちを尻目に、2人は一足先に教室へと戻っていった。
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ボソリと呟かれた言葉は、対戦相手には聞こえていなかった。
相手は自分の攻撃に夢中になっている。
こんな遅い攻撃、リアルに目を瞑ってみても避けられるだろう。
周りからは相手を応援する声が響いていて、どこまでもククルの時と同じ展開だが、恭司の頭の中はそれ以外のことで一杯だった。
さっさと片付けて万事に備えるのもいいが、ここにきてさっきの話が気になってくる。
『大会に出場しそうな選手の情報はブラックマーケットで高く売れる』
売りに行く人間は大会に出場できない人間だと思っていた。
だが、
よく考えてみればそうとは限らない。
『大会に出場する選手』がライバルを蹴落とすために敢えて流す可能性もあれば、情報を使って実行したい『賭け主側の人間』だって、当然自分でも情報収集するだろう。
いやむしろそっちの方が明らかに現実的だ。
さっきの殺気のことを考えても、『敵』はそのどちらかである可能性が高い。
あるいは……
(……無いとは思うが、俺の正体に気がついている……?)
後者だとすれば事態はかなり深刻だ。
気付くには至っていなかったとしても、可能性を感じた者がいたとすれば、そいつは現状で最も危険な存在となる。
ボルディスの長男どころでは無い。
もしそうならそいつこそがいの一番に殺さなくてはならないターゲットだ。
今日すぐにでも始末しなければならない。
敵になるのかどうかも含めて、可能性のある者を把握しておくことは急務だ。
「ま、参りました……」
と、そんなことを思っていた所で、目の前の槍使いから声が聞こえた。
考え事と他への注意で気付かなかったが、どうやら決着までククルと同じになってしまったらしい。
ククルの勝ち方に良い感情を抱かなかっただけに、少し申し訳ない気持ちになった。
「ありがとうございました」
恭司は最低限のマナーだけ尽くして、そそくさとその場を去る。
至急、ユウカと話さなくてはならないことが出来た。
「それでは、本日の『実技訓練』の授業はここまでとする!!各自、疲れを残さぬよう入念にストレッチしてから教室に戻るように!!以上!!解散ッ!!」
そこで、先生から授業終了の号令がかかった。
どうやら組み合わせ的に恭司が最後だったらしい。
ユウカの所に戻ると、ユウカは体操着姿のまま、不思議そうな表情で恭司を見つめていた。
ユウカが対戦に行ってからの一連の出来事が疑問なのだろう。
恭司は無表情のままだったが、ユウカはとりあえず、
「お疲れ様。初白星おめでとう」
とだけ言った。
恭司はその様子にフッと微笑むと、ユウカの頭をポンポンと撫でる。
「ありがとう。ちなみに後で相談したいことがあってな。……少し真剣な奴だ」
「……分かった」
恭司の声のトーンで察したユウカは、小さい声と共に頷いた。
そして、
格技場に残ってストレッチをするクラスメイトたちを尻目に、2人は一足先に教室へと戻っていった。
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