106 / 145
【第四章】ドラルスの街
【第十二話】道のり ⑤
しおりを挟む
スパイルのもたらした情報をもとに、恭司とスパイルはドラルスへの道のりをひたすらにまっすぐ歩いていた。
2人のいた地点は元々国境沿いに近い所だったため、道のりとしてはほぼまっすぐ進むだけでいい。
道に迷う心配はないし、2人とも元々そこへ向かうつもりだったのだから、当然問題などない。
だが、
スパイルが言う『アテ』については、問題が大有りだった。
「えっと……『魔法医師』……だったか?…………何だそれ?」
恭司の声には不信感が満ち満ちていた。
恭司自身、情報収集は色々としてきたが、そんな話は聞いたこともない。
それに、
何より『魔法』だ。
おそらくは魔法のような速度で治すとかそういう意味なのだろうと推測できるが、普通に信じられない。
「いや、それがマジなんだって。俺も人から聞いた話だから詳しく知ってるわけじゃないんだが、どうにもソイツは本当に魔法が使えるらしいんだ」
「…………」
推測はハズれて、本当に魔法を使うという意味らしい。
恭司の疑惑の視線がより強くなった。
「仮に、その話が本当だとして、ソイツがどこにいるかは分かってるのか?こんな体で街中探し回るなんてゴメンだぞ……」
「あー……、どこにいるかって情報までは……流石に無いな。ただ、ソイツは女らしいぜ」
「女ってだけならそこら辺にいるだろう……。それだけの情報で探し回ってたら日が暮れるぞ」
「まぁ、確かにな。俺も流石に現実的じゃねぇとは思ってるよ。ただ、普通の医者は俺たちのことなんて診てくれないと思うが、その辺りはどうするつもりなんだ?」
「……??脅せばいいじゃないか」
「人の心はどこかに置いてきちまったのか?」
「真夜中に住民ごと家を焼いた奴に言われたくねぇよ」
「まぁ、確かにな」
そんな会話をしながら、2人はドラルスまでの道のりを着々と消化していった。
心なしか、2人とも進むペースが速くなってきている。
度重なる連闘で、体の限界を感じつつあるのだ。
なるべく早く治療に移った方が良い。
「この感じだとあと1日くらいかね?ドラルスに行くのは久しぶりだな……」
ふと、スパイルが話し出す。
本当に脅すかどうかは別にして、話題は切り替わったようだ。
恭司も特にやることはないため、普通に返事を返す。
「俺は今回が初めてだな。前にきたのはどんな時だったんだ?」
「ドラルスを攻めて領土拡大しようとした時だな」
「あぁ……。そういえばそんな話あったな……。結局、ミッドカオスに察知されて不発に終わったんだったか」
「そうそう。アイツらは本当に憎たらしいよ……。俺たちが動くのを見計らって、こっちに攻め入ろうとしやがったんだ。思えば、それもシェルによる仕業だったのかもしれねぇな……」
「多分そうだろうな。アイツは敵の居場所をリアルタイムで正確に把握してくる。もしシェルに近付かれたら、ディオラスには雷の雨が降ることになっていただろう」
「おー、怖い怖い……。この世の皇太子にマトモな奴はいないのか……」
「『メルセデス』に期待するしかないな」
そんな会話をしていると、いよいよ辺りが暗くなってきた。
相変わらず剛風と雨が天気を荒らす中、2人は足を止める。
夜目のきく恭司はともかく、スパイルはこの暗さだと進むのに神経を使うからだ。
どうせドラルスには急いで歩いてもあと1日かかる。
今日はここで野宿することにした。
2人のいた地点は元々国境沿いに近い所だったため、道のりとしてはほぼまっすぐ進むだけでいい。
道に迷う心配はないし、2人とも元々そこへ向かうつもりだったのだから、当然問題などない。
だが、
スパイルが言う『アテ』については、問題が大有りだった。
「えっと……『魔法医師』……だったか?…………何だそれ?」
恭司の声には不信感が満ち満ちていた。
恭司自身、情報収集は色々としてきたが、そんな話は聞いたこともない。
それに、
何より『魔法』だ。
おそらくは魔法のような速度で治すとかそういう意味なのだろうと推測できるが、普通に信じられない。
「いや、それがマジなんだって。俺も人から聞いた話だから詳しく知ってるわけじゃないんだが、どうにもソイツは本当に魔法が使えるらしいんだ」
「…………」
推測はハズれて、本当に魔法を使うという意味らしい。
恭司の疑惑の視線がより強くなった。
「仮に、その話が本当だとして、ソイツがどこにいるかは分かってるのか?こんな体で街中探し回るなんてゴメンだぞ……」
「あー……、どこにいるかって情報までは……流石に無いな。ただ、ソイツは女らしいぜ」
「女ってだけならそこら辺にいるだろう……。それだけの情報で探し回ってたら日が暮れるぞ」
「まぁ、確かにな。俺も流石に現実的じゃねぇとは思ってるよ。ただ、普通の医者は俺たちのことなんて診てくれないと思うが、その辺りはどうするつもりなんだ?」
「……??脅せばいいじゃないか」
「人の心はどこかに置いてきちまったのか?」
「真夜中に住民ごと家を焼いた奴に言われたくねぇよ」
「まぁ、確かにな」
そんな会話をしながら、2人はドラルスまでの道のりを着々と消化していった。
心なしか、2人とも進むペースが速くなってきている。
度重なる連闘で、体の限界を感じつつあるのだ。
なるべく早く治療に移った方が良い。
「この感じだとあと1日くらいかね?ドラルスに行くのは久しぶりだな……」
ふと、スパイルが話し出す。
本当に脅すかどうかは別にして、話題は切り替わったようだ。
恭司も特にやることはないため、普通に返事を返す。
「俺は今回が初めてだな。前にきたのはどんな時だったんだ?」
「ドラルスを攻めて領土拡大しようとした時だな」
「あぁ……。そういえばそんな話あったな……。結局、ミッドカオスに察知されて不発に終わったんだったか」
「そうそう。アイツらは本当に憎たらしいよ……。俺たちが動くのを見計らって、こっちに攻め入ろうとしやがったんだ。思えば、それもシェルによる仕業だったのかもしれねぇな……」
「多分そうだろうな。アイツは敵の居場所をリアルタイムで正確に把握してくる。もしシェルに近付かれたら、ディオラスには雷の雨が降ることになっていただろう」
「おー、怖い怖い……。この世の皇太子にマトモな奴はいないのか……」
「『メルセデス』に期待するしかないな」
そんな会話をしていると、いよいよ辺りが暗くなってきた。
相変わらず剛風と雨が天気を荒らす中、2人は足を止める。
夜目のきく恭司はともかく、スパイルはこの暗さだと進むのに神経を使うからだ。
どうせドラルスには急いで歩いてもあと1日かかる。
今日はここで野宿することにした。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
「3年だけ妻を演じて欲しい」そういう約束でしたよね?
cyaru
恋愛
事情があり没落したオルーカ伯爵家の令嬢サーディには「あと3年」だけ耐えられるお金が必要だった。
家族にも相談できない事情があるカンディール家のマカレルも「あと3年」だけ現状を維持する必要があった。
サーディーが頼みの綱としていたシャーク子爵家のコバーンに婚約解消を告げられる場に出くわしたマカレルはサーディに「では、私と結婚をしないか?」と提案した。
お金は喉から手が出るほど欲しいけれど戸惑うサーディ。
「家庭内別居」「不干渉」「3年後の離縁」が互いの条件。
「3年だけ妻と言う役を演じて欲しい」との言葉に気持ちが揺らぐ。
更にマカレルは「私が後見人になってもいい」最強のダメ押しだった。
サーディはマカレルの提案に同意した。
約束の期日まであと1年。
家庭内別居と言えど女主人の仕事はせねばならず「これもオプション」と奮闘しつつも屋敷の使用人達と和気藹々と過ごすサーディー。(但し契約通りに夫のマカレル抜き)
一方マカレルは‥‥。
★例の如く恐ろしく省略しております。
★興味がなく契約結婚の筈だったのに…という展開です。
★10月4日投稿開始、完結は10月7日22時22分です。
★シリアスを感じ、イラァ!とする展開もありますが、出来るだけ笑って頂け・・・お察しください。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
本編終了で10万字を超えてましたので長編にしました<(_ _)>
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる