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【第二章】ミッドカオス

【第七話】逃走 ④

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「クククククク!!ここにはいなかったかァ!!なら次に行くぜェ!!パーティータイムだッ!!」


そう言うと、ビスは次々と術符付きのナイフを放ってきた。

200本、300本とどんどん生成されていく中、森には常時ナイフの雨が降り続き、絶え間なく火柱が上がる。

恭司はその中を辛くも駆け抜けた。

三谷の技は使えないが、三谷は元々暗殺を生業とする一族だ。

シェルのような規格外の気配探知能力でもない限り、物陰が少しでもあれば隠れられる。

体力は既に限界近いが、今はこれで耐え凌ぐしかない。


(くそッ!!くそくそくそくそくそッ!!ビス・ヨルゲンめ……ッ!!お前もいずれ殺してやるぞッ!!)


恭司は何とかナイフと火のラッシュから逃げ切り、ほんの少し離れた所で状況を見つめる。

ナイフの雨と大量の火柱は、いったん止まったようだった。


「おかしいなぁ……。さっき、確かに殺気を感じたと思ったんだが……。気のせいだったかね?」


たった数分であっという間にその場一帯を焼き尽くしたビスは、そう言って再び移動を開始した。

恭司は焼け野原となったその一帯の少し横の森の中で、ホッと息を吐く。

今は何とか、やり過ごせたようだ。


(カササギ草とマルドキノコが見つかっていて本当に良かった……。それがなかったら、流石にヤバかったかもしれない)


取り急ぎ止血し、眩暈や頭痛が止んでいたことで、何とか多少は動くことが出来ていた。

いくら身を隠していようと、その場から動かなければ、今頃恭司は焼死体になっていたはずだ。

悪運が強かったと言える。


(しかし、よりにもよって奴が追いかけてくるとはな……。ただの兵士長や将軍が追い掛けてくるならともかく、バルキーの近衛部隊長が自ら出張ってくるなんて、予想外もいい所だ)


恭司は木の幹を背にして一旦そこに座り込んだ。

本来はもっと先の予定だったが、ビスのおかげで体力を急速に消費した今、不本意ながらも休息を取る必要がある。

恭司は思わず歯をギシリと噛み締めた。

標的を狙って返り討ちに遭い、本来ならこっちから追うはずの優先目標2位と3位にしてやられるなど、痛恨の極みだ。


(借りはいずれ必ず返す……ッ!!だから、今は何とか体を休めて……)


「見ぃぃぃつけた~」

「ッッッッ!!??」


途端に上から聞こえた声ーー。

見上げると、生い茂る葉の間から顔だけを出した、ビス・ヨルゲンがいた。

ビスは目を大きく見開き、口は裂けんばかりに三日月状に開いて、不気味な笑みを浮かべている。

恭司は瞬時にその場を立ち退いた。

途端、

元いた所にナイフの雨が降り注ぐ。

恭司はバックして距離を空け、刀を構えた。

何故、バレたのか。
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