250 / 267
【第七章】シベリザード連合国
【第五十三話】和也 ⑥
しおりを挟む
「どけえええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」
リズベットは和也のもとに辿り着いて早々、餓狼族たちを薙ぎ払った。
近接戦に不向きな職業を持つリズベットだが、流石に餓狼族たち相手なら余裕だ。
レベル差が明らかである以上、単純な物理攻撃でも十分に圧倒できる。
「リズ、ベッ…………ト…………」
「か、和也…………ッ!!しっかりしてください、和也…………ッ!!」
リズベットの目には涙が浮かんでいた。
今になって押し寄せてくる後悔────。
リズベットもまた、ここで餓狼族が仕掛けてくるなどとは夢にも思っていなかったのだ。
和也は焦点の合わない目を動かしながら、そんなリズベットへボンヤリと視線を向ける。
「失敗…………し、た…………。今、回…………ばかり、は…………気をつけていた、つもり、だっ、たのに…………」
「喋らないでッ!!アナタだけは必ず助けるから…………ッ!!」
和也の息は既に絶え絶えで、もう今すぐにでも途切れてしまいそうなほどにか細かった。
意識も朦朧としているのだろう。
一つ一つは小さなナイフでも、根本まで"何本も"刺されたのだ。
いくらロスベリータから与えられた加護が大きかろうと、その回復力にも限界はある。
「『グール』…………たち、は…………どう、なっ、た…………?」
「…………ッ!!皆、呪いが解けてヒューマンに戻れました…………ッ!!アナタのおかげです、和也ッ!!」
『リッチ』によって『グール』へと変えられていた冒険者たちは、今はその場に力なく倒れ込んでいた。
『ホーリーキュア』によって呪いが解除されたからだ。
今や魔族特有の邪気や瘴気も消え去り、ただのヒューマンの死体へと戻っている。
その『グール』たちによって引かれていた荷車ももちろん同様に停止だ。
結果、一緒に引かれていた『バーストロック』たちもそこに止まり、早めに対処したおかげでこことも十分な距離を取れている。
これで、ひとまずの危機は去ったと言えるだろう。
和也はそれを聞くと、満足気にホッと息を漏らした。
「そう、か…………。良かった。なら…………」
「…………ッ!!!!ま、まだ諦める時ではありませんッ!!す、すぐにでもノーシェル様かネシャス様に連絡を…………ッ!!」
「リズベット…………ッ!!」
すると、
その最中に別の所から声が聞こえてきた。
ネシャスだ。
その背後には数多の兵士に冒険者たち────。
結局、あれからネシャス自身も援軍として駆け付けることにしたのだろう。
まぁ、既に一足遅かったわけだが────。
ネシャスは血塗れになった和也を見て、サッと顔を青ざめさせる。
「クソッ!!い、言わんこっちゃない…………ッ!!すぐに転送玉を使えッ!!それを使って急ぎノーシェル様のもとへ……ッ!!」
だが…………
その瞬間のことだ。
ふと背中を走り抜ける悪寒────。
まるで無数の小さな虫が背中を這い上がってくるかのような────強烈な怖気が全身を包み込んでいく。
急ぎ気配のした方向に目を向けると、いつの間にかさっきの魔族たちが舌舐めずりと共にこちらを窺っているのが見えた。
リズベットがいなくなったことで、戦力差が崩壊したのだ。
あのベテランの冒険者たちは漏れなくその全員が皆殺しにされ、身体をバラバラに引き裂かれて地面に散らかされている。
さらには、
ついさっきまで電流で苦しみ続けていたはずのウルスも、いつの間にかこちらを向いて戦闘体制へと入っていた。
電流が止んでいるあたり、カザルからの命令が"変わった"のだろう。
今は、"命令通り"というわけだ。
流石に体中が丸焦げでフラフラな状態ではあるようだが、その目は強い怒りと憎しみで燃え上がっている。
「あぁ、痛い…………憎い…………。痛い憎い痛い憎い痛い憎い痛い憎い…………ッ!!イタイニクイイタイニクイイタイニクイイタイニクイイタイニクイああああああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!」
「「う…………ッ!!」」
それは、見るも明らかなほどに異常な様子だった。
不気味で悍ましくて気持ち悪い────。
既に身体は満身創痍となっているにも関わらず、感情が先に立ちすぎておかしくなっているようだ。
ある種における狂乱化────。
ウルスは荒れ乱れる息と共に身体を奮い立たせると、そのまま強く強く激しい雄叫びを上げる。
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
その声には様々な感情が入り乱れていた。
仲間を失った悲しみも────。
自らを囮に使ってきたカザルへの怒りも────。
そもそもの根本であるヒューマンへの憎しみも────。
今はその何もかもがメチャクチャになっているのだ。
何も分からない。
何も考えられない。
今はただ目に映る全てを…………
コ ワ シ タ イ ────。
「嘘…………。あれだけ電流を喰らっていながら、まだ動けるなんて…………」
リズベットは顔を青くしながら、絶望と共に呟いた。
ここで転送玉など取り出そうとすれば、彼らはその瞬間にすぐさまその隙をつきにやって来ることだろう。
アレもカザルの前で一度使っている以上、その僅かなタイムラグや予備動作も把握されてしまっているのだ。
前門の魔族に後門のウルス────。
見ると、いつの間にか挟み撃ちにされているばかりか、魔族たちはこうなることが"最初から分かっていた"かのように勝ち誇った笑みを浮かべている。
その笑みを見て、ネシャスは気づいた。
この状況を目論んでいたカザルが、"この程度"の追い討ちで満足するはずもないからだ。
ネシャスは大きな舌打ちと共に叫ぶ。
「き、気を付けろッ!!まだ何か…………ッ!!」
「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁちどきじゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「「「…………ッ!!!!」」」
その途端のことだった。
ここより遥か遠くの方から、巨大な地響きと共に声が聞こえてきたのだ。
声は間違いなく"地竜"『ドライダス』の声────。
待機させていた魔族軍を動かしたのだろう。
すぐさま声の聞こえてきた方向に目を向けると、"将"である『竜種』自らが先頭に立ち、大きな土煙を上げてこちらへ走ってきているのが見える。
リズベットは和也のもとに辿り着いて早々、餓狼族たちを薙ぎ払った。
近接戦に不向きな職業を持つリズベットだが、流石に餓狼族たち相手なら余裕だ。
レベル差が明らかである以上、単純な物理攻撃でも十分に圧倒できる。
「リズ、ベッ…………ト…………」
「か、和也…………ッ!!しっかりしてください、和也…………ッ!!」
リズベットの目には涙が浮かんでいた。
今になって押し寄せてくる後悔────。
リズベットもまた、ここで餓狼族が仕掛けてくるなどとは夢にも思っていなかったのだ。
和也は焦点の合わない目を動かしながら、そんなリズベットへボンヤリと視線を向ける。
「失敗…………し、た…………。今、回…………ばかり、は…………気をつけていた、つもり、だっ、たのに…………」
「喋らないでッ!!アナタだけは必ず助けるから…………ッ!!」
和也の息は既に絶え絶えで、もう今すぐにでも途切れてしまいそうなほどにか細かった。
意識も朦朧としているのだろう。
一つ一つは小さなナイフでも、根本まで"何本も"刺されたのだ。
いくらロスベリータから与えられた加護が大きかろうと、その回復力にも限界はある。
「『グール』…………たち、は…………どう、なっ、た…………?」
「…………ッ!!皆、呪いが解けてヒューマンに戻れました…………ッ!!アナタのおかげです、和也ッ!!」
『リッチ』によって『グール』へと変えられていた冒険者たちは、今はその場に力なく倒れ込んでいた。
『ホーリーキュア』によって呪いが解除されたからだ。
今や魔族特有の邪気や瘴気も消え去り、ただのヒューマンの死体へと戻っている。
その『グール』たちによって引かれていた荷車ももちろん同様に停止だ。
結果、一緒に引かれていた『バーストロック』たちもそこに止まり、早めに対処したおかげでこことも十分な距離を取れている。
これで、ひとまずの危機は去ったと言えるだろう。
和也はそれを聞くと、満足気にホッと息を漏らした。
「そう、か…………。良かった。なら…………」
「…………ッ!!!!ま、まだ諦める時ではありませんッ!!す、すぐにでもノーシェル様かネシャス様に連絡を…………ッ!!」
「リズベット…………ッ!!」
すると、
その最中に別の所から声が聞こえてきた。
ネシャスだ。
その背後には数多の兵士に冒険者たち────。
結局、あれからネシャス自身も援軍として駆け付けることにしたのだろう。
まぁ、既に一足遅かったわけだが────。
ネシャスは血塗れになった和也を見て、サッと顔を青ざめさせる。
「クソッ!!い、言わんこっちゃない…………ッ!!すぐに転送玉を使えッ!!それを使って急ぎノーシェル様のもとへ……ッ!!」
だが…………
その瞬間のことだ。
ふと背中を走り抜ける悪寒────。
まるで無数の小さな虫が背中を這い上がってくるかのような────強烈な怖気が全身を包み込んでいく。
急ぎ気配のした方向に目を向けると、いつの間にかさっきの魔族たちが舌舐めずりと共にこちらを窺っているのが見えた。
リズベットがいなくなったことで、戦力差が崩壊したのだ。
あのベテランの冒険者たちは漏れなくその全員が皆殺しにされ、身体をバラバラに引き裂かれて地面に散らかされている。
さらには、
ついさっきまで電流で苦しみ続けていたはずのウルスも、いつの間にかこちらを向いて戦闘体制へと入っていた。
電流が止んでいるあたり、カザルからの命令が"変わった"のだろう。
今は、"命令通り"というわけだ。
流石に体中が丸焦げでフラフラな状態ではあるようだが、その目は強い怒りと憎しみで燃え上がっている。
「あぁ、痛い…………憎い…………。痛い憎い痛い憎い痛い憎い痛い憎い…………ッ!!イタイニクイイタイニクイイタイニクイイタイニクイイタイニクイああああああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!」
「「う…………ッ!!」」
それは、見るも明らかなほどに異常な様子だった。
不気味で悍ましくて気持ち悪い────。
既に身体は満身創痍となっているにも関わらず、感情が先に立ちすぎておかしくなっているようだ。
ある種における狂乱化────。
ウルスは荒れ乱れる息と共に身体を奮い立たせると、そのまま強く強く激しい雄叫びを上げる。
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
その声には様々な感情が入り乱れていた。
仲間を失った悲しみも────。
自らを囮に使ってきたカザルへの怒りも────。
そもそもの根本であるヒューマンへの憎しみも────。
今はその何もかもがメチャクチャになっているのだ。
何も分からない。
何も考えられない。
今はただ目に映る全てを…………
コ ワ シ タ イ ────。
「嘘…………。あれだけ電流を喰らっていながら、まだ動けるなんて…………」
リズベットは顔を青くしながら、絶望と共に呟いた。
ここで転送玉など取り出そうとすれば、彼らはその瞬間にすぐさまその隙をつきにやって来ることだろう。
アレもカザルの前で一度使っている以上、その僅かなタイムラグや予備動作も把握されてしまっているのだ。
前門の魔族に後門のウルス────。
見ると、いつの間にか挟み撃ちにされているばかりか、魔族たちはこうなることが"最初から分かっていた"かのように勝ち誇った笑みを浮かべている。
その笑みを見て、ネシャスは気づいた。
この状況を目論んでいたカザルが、"この程度"の追い討ちで満足するはずもないからだ。
ネシャスは大きな舌打ちと共に叫ぶ。
「き、気を付けろッ!!まだ何か…………ッ!!」
「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁちどきじゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「「「…………ッ!!!!」」」
その途端のことだった。
ここより遥か遠くの方から、巨大な地響きと共に声が聞こえてきたのだ。
声は間違いなく"地竜"『ドライダス』の声────。
待機させていた魔族軍を動かしたのだろう。
すぐさま声の聞こえてきた方向に目を向けると、"将"である『竜種』自らが先頭に立ち、大きな土煙を上げてこちらへ走ってきているのが見える。
1
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる