228 / 267
【第七章】シベリザード連合国
【第四十九話】準備 ⑤
しおりを挟む
「くそ…………」
「畜生…………」
「何でこんなことに…………」
魔族たちの心情は不満だらけだった。
まぁ、元々彼らはドライダスたちによって無理矢理連れてこられたようなものなのだ。
成長だの協力だの…………頼んでもいないのに勝手に巻き込まれて無茶苦茶言われている。
でも…………
恭司が最後に言った言葉だけは、全員に響かざるを得なかった。
当たり前の話だ。
言う通りに出来なければ殺される────。
それだけは、どんなバカにだってすぐに分かる。
「あぁ、やってやるよ、クソッタレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
「こんな所で死んでられるかッ!!」
「おいッ!!テメェら、"協力"しろッ!!"一緒"にあの魔王ブチ殺すぞッ!!」
魔族たちは一斉に雄叫びを上げた。
協力の重要さに気づいたのではなく、単に死にたくないのだ。
恭司はそれを見てニヤリと笑うと、再び刀を鞘にしまう。
「なら、第二ラウンドといこうか────。突撃するだけのカカシ相手じゃ物足りなかったからな。根性見せてみろッ!!」
そうして────。
再び恭司と魔族たちによる乱闘が幕を開けた。
恭司の言った言葉を正しく理解したかどうかはよく分からないが、別にそこまで期待しているわけではないのだ。
キッカケが脅しだろうと何だろうと、ちゃんと"経験"させることこそが狙い────。
強い奴を相手にした時に『逃げる』以外の選択肢を持てさえすれば、それで良い。
元々コレは強行軍なのだ。
これだけの数をそれぞれキチンと教育できるわけでもないし、文字通り身体で覚えさせる方が早い。
そして…………
(クク…………。悪くねぇ感触だな)
その目論見はある程度は果たしていると言えそうだった。
魔族たちは次第に、背中越しに身を寄せ合うようになってきたのだ。
どこから来ても正面から受けられるようにするためだろう。
まぁ、例え正面から受けたところで、そのまま一人でも吹っ飛ばせばすぐに瓦解する程度の策だが、とにかく"考え始めた"点は評価できる。
流石に全員が全員ではないものの、ここで大事なのは『下地』を作ることであって、こんなことで魔族の低脳が解決するはずもないのだ。
ちゃんとした効率的なやり方なら、恭司が改めて考えて教えてやれば良い。
「くそ…………ッ!!やっぱ強ぇ…………ッ!!」
「こ、殺されるッ!!"誰か"来てくれッ!!」
「"一斉放射"だッ!!ブレスが使える奴は"集まれ"ッ!!」
とはいえ、魔族たちの成長は恭司の想定していた以上に著しかった。
元々が単純だからか、一度学べば盲目的にそればかりを繰り返しているようだ。
思考力が足りない分、誰でも思いつく程度のことなら素直にすぐ実行へ移す。
こういった即興の強行軍においては、彼らはヒューマン以上に優秀な兵力かもしれなかった。
いちいち余計なことを考えない分、扱いが楽なのだ。
これだけ単細胞揃いなら、恭司の思う"戦略"にも十分対応できるだろう。
逃げずに言われたことさえちゃんと出来れば、それで良い。
そうして…………
「ふむ…………」
それから2時間も経った頃には、その場にいた魔族のほとんどは地に伏せて倒れ込んでいた。
全滅だ。
全員が倒れ込み、気絶しているかもう動けなくなっている。
「お疲れ様です、魔王様」
すると、
頃合いを見て、ドライダスが歩み寄ってきた。
遠目から観察していたのだ。
ドライダスは始まった当初と比べて、今は驚きと感心に満ちた表情をしている。
この何万という数もすごいが、『誰も死んでいない』ことが意外で仕方ないのだ。
てっきり恭司なら何百何千かくらいは殺してしまうかと思っていたのだが、意外と自制心が効いていたということだろう。
恭司もまた、満足気に呟く。
「俺は…………もしかしたら『教育者』に向いているのかもしれねぇな」
『それだけは絶対に無い』と内心でツッコミながら、ドライダスは黙って頭を下げた。
こういう時はスルーが正解だ。
下手に口を出すとロクなことがない。
「とにかくコレで多少は『下地』ができたな。ドワーフどもの方はどんな調子だ?」
「ハッ…………。取り急ぎ、試験的な第一号は完成したようです。確認なさいますか?」
「へぇ、もう出来たのか…………。流石の仕事ぶりだな。もちろん確認しよう」
そう言って、恭司はその場を後にした。
魔族たちと違い、特に疲労も感じていないようだ。
何万もの魔族を相手にした後とは思えない、相変わらずの化け物ぶりだが、ドライダスもそこには突っ込まない。
今さらだ。
恭司はドワーフたちのもとへ向かうと、"それ"を見て感心に息を漏らす。
「畜生…………」
「何でこんなことに…………」
魔族たちの心情は不満だらけだった。
まぁ、元々彼らはドライダスたちによって無理矢理連れてこられたようなものなのだ。
成長だの協力だの…………頼んでもいないのに勝手に巻き込まれて無茶苦茶言われている。
でも…………
恭司が最後に言った言葉だけは、全員に響かざるを得なかった。
当たり前の話だ。
言う通りに出来なければ殺される────。
それだけは、どんなバカにだってすぐに分かる。
「あぁ、やってやるよ、クソッタレエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
「こんな所で死んでられるかッ!!」
「おいッ!!テメェら、"協力"しろッ!!"一緒"にあの魔王ブチ殺すぞッ!!」
魔族たちは一斉に雄叫びを上げた。
協力の重要さに気づいたのではなく、単に死にたくないのだ。
恭司はそれを見てニヤリと笑うと、再び刀を鞘にしまう。
「なら、第二ラウンドといこうか────。突撃するだけのカカシ相手じゃ物足りなかったからな。根性見せてみろッ!!」
そうして────。
再び恭司と魔族たちによる乱闘が幕を開けた。
恭司の言った言葉を正しく理解したかどうかはよく分からないが、別にそこまで期待しているわけではないのだ。
キッカケが脅しだろうと何だろうと、ちゃんと"経験"させることこそが狙い────。
強い奴を相手にした時に『逃げる』以外の選択肢を持てさえすれば、それで良い。
元々コレは強行軍なのだ。
これだけの数をそれぞれキチンと教育できるわけでもないし、文字通り身体で覚えさせる方が早い。
そして…………
(クク…………。悪くねぇ感触だな)
その目論見はある程度は果たしていると言えそうだった。
魔族たちは次第に、背中越しに身を寄せ合うようになってきたのだ。
どこから来ても正面から受けられるようにするためだろう。
まぁ、例え正面から受けたところで、そのまま一人でも吹っ飛ばせばすぐに瓦解する程度の策だが、とにかく"考え始めた"点は評価できる。
流石に全員が全員ではないものの、ここで大事なのは『下地』を作ることであって、こんなことで魔族の低脳が解決するはずもないのだ。
ちゃんとした効率的なやり方なら、恭司が改めて考えて教えてやれば良い。
「くそ…………ッ!!やっぱ強ぇ…………ッ!!」
「こ、殺されるッ!!"誰か"来てくれッ!!」
「"一斉放射"だッ!!ブレスが使える奴は"集まれ"ッ!!」
とはいえ、魔族たちの成長は恭司の想定していた以上に著しかった。
元々が単純だからか、一度学べば盲目的にそればかりを繰り返しているようだ。
思考力が足りない分、誰でも思いつく程度のことなら素直にすぐ実行へ移す。
こういった即興の強行軍においては、彼らはヒューマン以上に優秀な兵力かもしれなかった。
いちいち余計なことを考えない分、扱いが楽なのだ。
これだけ単細胞揃いなら、恭司の思う"戦略"にも十分対応できるだろう。
逃げずに言われたことさえちゃんと出来れば、それで良い。
そうして…………
「ふむ…………」
それから2時間も経った頃には、その場にいた魔族のほとんどは地に伏せて倒れ込んでいた。
全滅だ。
全員が倒れ込み、気絶しているかもう動けなくなっている。
「お疲れ様です、魔王様」
すると、
頃合いを見て、ドライダスが歩み寄ってきた。
遠目から観察していたのだ。
ドライダスは始まった当初と比べて、今は驚きと感心に満ちた表情をしている。
この何万という数もすごいが、『誰も死んでいない』ことが意外で仕方ないのだ。
てっきり恭司なら何百何千かくらいは殺してしまうかと思っていたのだが、意外と自制心が効いていたということだろう。
恭司もまた、満足気に呟く。
「俺は…………もしかしたら『教育者』に向いているのかもしれねぇな」
『それだけは絶対に無い』と内心でツッコミながら、ドライダスは黙って頭を下げた。
こういう時はスルーが正解だ。
下手に口を出すとロクなことがない。
「とにかくコレで多少は『下地』ができたな。ドワーフどもの方はどんな調子だ?」
「ハッ…………。取り急ぎ、試験的な第一号は完成したようです。確認なさいますか?」
「へぇ、もう出来たのか…………。流石の仕事ぶりだな。もちろん確認しよう」
そう言って、恭司はその場を後にした。
魔族たちと違い、特に疲労も感じていないようだ。
何万もの魔族を相手にした後とは思えない、相変わらずの化け物ぶりだが、ドライダスもそこには突っ込まない。
今さらだ。
恭司はドワーフたちのもとへ向かうと、"それ"を見て感心に息を漏らす。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる