193 / 267
【第六章】新生・魔王軍
【第四十二話】偵察隊 ③
しおりを挟む
「放てえええええええええええええええええええええええええええッ!!」
「「「な…………ッ!?」」」
スキル『ファイアースラッシュ』────。
スキル『インパクトブロウ』────。
スキル『トリプルサンダーアロー』────。
『回復魔法師』であるムーアを除いて、3人は同時に攻撃を仕掛けた。
遠距離だが、全て"上位"スキルだ。
次々と森から出てくる30体ものエルフたちに向けて、3つの上位スキルは容赦なくエルフたちを襲う。
「な…………ッ!?」
「え、ち、ちょっと……ッ!!」
「う、嘘だろ…………ッ!?」
エルフたちは突然の反撃に反応が遅れた。
追うことに必死になり過ぎたのだ。
真正面から攻撃を受けて、エルフたちから盛大に悲鳴が上がる。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!痛ぇッ!!痛えええええええええええええええええええええええええッ!!」
「お、おのれえええええええええええええええええええええええええええええッ!!ヒューマン風情がァ…………ッ!!」
「舐めた真似しやがって…………ッ!!地獄を見せてやるぞッ!!」
エルフたちの声には怒りが込められていると共に、途轍もなく酷い"焦燥"も含まれていた。
臆病さは未だ少し垣間見えているものの、やはり元々の評価とは違和感のある荒々しさだ。
そもそも…………あのエルフたちが必死の形相でヒューマンを追いかけている辺りでおかしい。
元々、エルフたちはヒューマンから徹底的に逃げていたがために、皆から『臆病者』などというレッテルを張られていたのだ。
それが今や…………エルフたちは自ら全力でヒューマンであるテオドールたちを追いかけ、凄まじい殺意と闘争心を見せている。
それに…………
(力を…………上手くコントロール出来ていない…………?)
あのディーグレアの時の助力を見ていたテオドールたちからすれば、今のエルフの惨状には少しばかり拍子抜けする思いだった。
あのディーグレアにダメージを与えていた者たちと同一とはとても思えない体たらくだ。
まるで…………"最近"力を手にしたばかりのよう────。
あれだけ強い攻撃を放てる割には戦い慣れていない様子な上、こんな見え見えのカウンターにも引っかかっている。
だがしかし…………
兎にも角にも…………
「チャンスだッ!!今のうちに一気に畳みかけるぞッ!!」
「「「おお…………ッ!!」」」
テオドールの号令と共に、4人は再び"上位"スキルを何度も連発した。
敵が戦い慣れていないのなら好都合だ。
回避も防御も不得手なようだし、とにかく目一杯ひたすら撃ち放ち続ければいい。
このままエルフたちを押し切ることができれば、より安全にこの場から離れることが出来るだろう。
『好機逸すべからず』だ。
今のうちに逃げることもできるが、ここで中途半端にするよりは、しっかりと最後までやりきる方がいい。
すると…………
「クソ…………ッ!!図に乗るなよ、ヒューマンがァ…………ッ!!」
周りが悲鳴を上げて、凄惨で散々な状況になっている中────。
一人怒声を上げて、"嫌な動き"をしている者がいた。
エルドラだ。
今になって、さっき余裕をかまして先制しなかったことに責任を感じているのかもしれない。
そのエルドラの周りには小さい光がフワフワと漂っており、何かを準備していることは間違いなかった。
おそらくはアレが『精霊』なのだろう。
さっきディーグレアの戦いの時にも見た光景だ。
そして、
テオドールはそれを見てすぐに反応すると、間髪入れずに速攻でスキル『ウォータースラッシュ』を繰り出す。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
「くらえええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
エルドラが放ってきたのは、ついさっきディーグレアの時にも見たばかりの爆撃だった。
あの漂っていた『精霊』の力によるものだろう。
"予想通り"だ。
エルドラの爆撃と『ウォータースラッシュ』は真正面から激突し合うと、拮抗する間も無く互いに弾け飛ぶ。
「なぁ…………ッ!?」
エルドラの驚いた声が聞こえてきた。
勢いや威力はエルドラの方が上だっただろうが、水が相手では効果は半減だ。
テオドールは叫ぶ。
「今だッ!!いけええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」
「応…………ッ!!」
「任せてッ!!」
スキル『インパクトブロウ』────。
スキル『トリプルウィンドアロー』────。
ケルビンとアシェリーによる、再びの連撃────。
ダメ押しの総追撃だった。
テオドールの意図を察して、2人ともあらかじめ用意していたのだ。
2人の上位スキルはエルドラ共々エルフたちを悉く吹き飛ばしていくと、その場は再び阿鼻叫喚の地獄へと様変わりする。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああッ!!血がッ!!血がこんなにィィイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
「ひィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!助けてぇ…………ッ!!助けてくれぇ…………ッ!!」
「こ、これ以上はやめてくれェッ!!もう痛いのは嫌なんだァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
最初の時と打って変わったような、情けなくも惨めな叫び声────。
30体近くいたであろうエルフたちは既に壊滅近く、さらには元の臆病さまでもが完全に戻ってきてしまっているようだった。
所詮は他人の力で底上げしてもらった仮初の力なのだ。
使いこなすことも出来ず…………攻撃したところでそれが通じないとなれば、あとは本来の『臆病者』に戻るしかない。
テオドールたちはその光景を見て、訝しげに顔を顰めた。
「「「な…………ッ!?」」」
スキル『ファイアースラッシュ』────。
スキル『インパクトブロウ』────。
スキル『トリプルサンダーアロー』────。
『回復魔法師』であるムーアを除いて、3人は同時に攻撃を仕掛けた。
遠距離だが、全て"上位"スキルだ。
次々と森から出てくる30体ものエルフたちに向けて、3つの上位スキルは容赦なくエルフたちを襲う。
「な…………ッ!?」
「え、ち、ちょっと……ッ!!」
「う、嘘だろ…………ッ!?」
エルフたちは突然の反撃に反応が遅れた。
追うことに必死になり過ぎたのだ。
真正面から攻撃を受けて、エルフたちから盛大に悲鳴が上がる。
「あ、ああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!痛ぇッ!!痛えええええええええええええええええええええええええッ!!」
「お、おのれえええええええええええええええええええええええええええええッ!!ヒューマン風情がァ…………ッ!!」
「舐めた真似しやがって…………ッ!!地獄を見せてやるぞッ!!」
エルフたちの声には怒りが込められていると共に、途轍もなく酷い"焦燥"も含まれていた。
臆病さは未だ少し垣間見えているものの、やはり元々の評価とは違和感のある荒々しさだ。
そもそも…………あのエルフたちが必死の形相でヒューマンを追いかけている辺りでおかしい。
元々、エルフたちはヒューマンから徹底的に逃げていたがために、皆から『臆病者』などというレッテルを張られていたのだ。
それが今や…………エルフたちは自ら全力でヒューマンであるテオドールたちを追いかけ、凄まじい殺意と闘争心を見せている。
それに…………
(力を…………上手くコントロール出来ていない…………?)
あのディーグレアの時の助力を見ていたテオドールたちからすれば、今のエルフの惨状には少しばかり拍子抜けする思いだった。
あのディーグレアにダメージを与えていた者たちと同一とはとても思えない体たらくだ。
まるで…………"最近"力を手にしたばかりのよう────。
あれだけ強い攻撃を放てる割には戦い慣れていない様子な上、こんな見え見えのカウンターにも引っかかっている。
だがしかし…………
兎にも角にも…………
「チャンスだッ!!今のうちに一気に畳みかけるぞッ!!」
「「「おお…………ッ!!」」」
テオドールの号令と共に、4人は再び"上位"スキルを何度も連発した。
敵が戦い慣れていないのなら好都合だ。
回避も防御も不得手なようだし、とにかく目一杯ひたすら撃ち放ち続ければいい。
このままエルフたちを押し切ることができれば、より安全にこの場から離れることが出来るだろう。
『好機逸すべからず』だ。
今のうちに逃げることもできるが、ここで中途半端にするよりは、しっかりと最後までやりきる方がいい。
すると…………
「クソ…………ッ!!図に乗るなよ、ヒューマンがァ…………ッ!!」
周りが悲鳴を上げて、凄惨で散々な状況になっている中────。
一人怒声を上げて、"嫌な動き"をしている者がいた。
エルドラだ。
今になって、さっき余裕をかまして先制しなかったことに責任を感じているのかもしれない。
そのエルドラの周りには小さい光がフワフワと漂っており、何かを準備していることは間違いなかった。
おそらくはアレが『精霊』なのだろう。
さっきディーグレアの戦いの時にも見た光景だ。
そして、
テオドールはそれを見てすぐに反応すると、間髪入れずに速攻でスキル『ウォータースラッシュ』を繰り出す。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
「くらえええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
エルドラが放ってきたのは、ついさっきディーグレアの時にも見たばかりの爆撃だった。
あの漂っていた『精霊』の力によるものだろう。
"予想通り"だ。
エルドラの爆撃と『ウォータースラッシュ』は真正面から激突し合うと、拮抗する間も無く互いに弾け飛ぶ。
「なぁ…………ッ!?」
エルドラの驚いた声が聞こえてきた。
勢いや威力はエルドラの方が上だっただろうが、水が相手では効果は半減だ。
テオドールは叫ぶ。
「今だッ!!いけええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」
「応…………ッ!!」
「任せてッ!!」
スキル『インパクトブロウ』────。
スキル『トリプルウィンドアロー』────。
ケルビンとアシェリーによる、再びの連撃────。
ダメ押しの総追撃だった。
テオドールの意図を察して、2人ともあらかじめ用意していたのだ。
2人の上位スキルはエルドラ共々エルフたちを悉く吹き飛ばしていくと、その場は再び阿鼻叫喚の地獄へと様変わりする。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああッ!!血がッ!!血がこんなにィィイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
「ひィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!助けてぇ…………ッ!!助けてくれぇ…………ッ!!」
「こ、これ以上はやめてくれェッ!!もう痛いのは嫌なんだァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
最初の時と打って変わったような、情けなくも惨めな叫び声────。
30体近くいたであろうエルフたちは既に壊滅近く、さらには元の臆病さまでもが完全に戻ってきてしまっているようだった。
所詮は他人の力で底上げしてもらった仮初の力なのだ。
使いこなすことも出来ず…………攻撃したところでそれが通じないとなれば、あとは本来の『臆病者』に戻るしかない。
テオドールたちはその光景を見て、訝しげに顔を顰めた。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる