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【第六章】新生・魔王軍

【第四十二話】偵察隊 ③

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「放てえええええええええええええええええええええええええええッ!!」

「「「な…………ッ!?」」」


スキル『ファイアースラッシュ』────。

スキル『インパクトブロウ』────。

スキル『トリプルサンダーアロー』────。


『回復魔法師』であるムーアを除いて、3人は同時に攻撃を仕掛けた。

遠距離だが、全て"上位"スキルだ。

次々と森から出てくる30体ものエルフたちに向けて、3つの上位スキルは容赦なくエルフたちを襲う。


「な…………ッ!?」
「え、ち、ちょっと……ッ!!」
「う、嘘だろ…………ッ!?」


エルフたちは突然の反撃に反応が遅れた。

追うことに必死になり過ぎたのだ。

真正面から攻撃を受けて、エルフたちから盛大に悲鳴が上がる。


「あ、ああああああああああああああああああああああああああああ…………ッ!!痛ぇッ!!痛えええええええええええええええええええええええええッ!!」
「お、おのれえええええええええええええええええええええええええええええッ!!ヒューマン風情がァ…………ッ!!」
「舐めた真似しやがって…………ッ!!地獄を見せてやるぞッ!!」


エルフたちの声には怒りが込められていると共に、途轍もなく酷い"焦燥"も含まれていた。

臆病さは未だ少し垣間見えているものの、やはり元々の評価とは違和感のある荒々しさだ。

そもそも…………あのエルフたちが必死の形相でヒューマンを追いかけている辺りでおかしい。

元々、エルフたちはヒューマンから徹底的に逃げていたがために、皆から『臆病者』などというレッテルを張られていたのだ。

それが今や…………エルフたちは自ら全力でヒューマンであるテオドールたちを追いかけ、凄まじい殺意と闘争心を見せている。

それに…………


(力を…………上手くコントロール出来ていない…………?)


あのディーグレアの時の助力を見ていたテオドールたちからすれば、今のエルフの惨状には少しばかり拍子抜けする思いだった。

あのディーグレアにダメージを与えていた者たちと同一とはとても思えない体たらくだ。

まるで…………"最近"力を手にしたばかりのよう────。

あれだけ強い攻撃を放てる割には戦い慣れていない様子な上、こんな見え見えのカウンターにも引っかかっている。

だがしかし…………

兎にも角にも…………


「チャンスだッ!!今のうちに一気に畳みかけるぞッ!!」

「「「おお…………ッ!!」」」


テオドールの号令と共に、4人は再び"上位"スキルを何度も連発した。

敵が戦い慣れていないのなら好都合だ。

回避も防御も不得手なようだし、とにかく目一杯ひたすら撃ち放ち続ければいい。

このままエルフたちを押し切ることができれば、より安全にこの場から離れることが出来るだろう。

『好機逸すべからず』だ。

今のうちに逃げることもできるが、ここで中途半端にするよりは、しっかりと最後までやりきる方がいい。

すると…………


「クソ…………ッ!!図に乗るなよ、ヒューマンがァ…………ッ!!」


周りが悲鳴を上げて、凄惨で散々な状況になっている中────。

一人怒声を上げて、"嫌な動き"をしている者がいた。

エルドラだ。

今になって、さっき余裕をかまして先制しなかったことに責任を感じているのかもしれない。

そのエルドラの周りには小さい光がフワフワと漂っており、何かを準備していることは間違いなかった。

おそらくはアレが『精霊』なのだろう。

さっきディーグレアの戦いの時にも見た光景だ。

そして、

テオドールはそれを見てすぐに反応すると、間髪入れずに速攻でスキル『ウォータースラッシュ』を繰り出す。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

「くらえええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


エルドラが放ってきたのは、ついさっきディーグレアの時にも見たばかりの爆撃だった。

あの漂っていた『精霊』の力によるものだろう。

"予想通り"だ。

エルドラの爆撃と『ウォータースラッシュ』は真正面から激突し合うと、拮抗する間も無く互いに弾け飛ぶ。


「なぁ…………ッ!?」


エルドラの驚いた声が聞こえてきた。

勢いや威力はエルドラの方が上だっただろうが、水が相手では効果は半減だ。

テオドールは叫ぶ。


「今だッ!!いけええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」

「応…………ッ!!」
「任せてッ!!」


スキル『インパクトブロウ』────。

スキル『トリプルウィンドアロー』────。


ケルビンとアシェリーによる、再びの連撃────。

ダメ押しの総追撃だった。

テオドールの意図を察して、2人ともあらかじめ用意していたのだ。

2人の上位スキルはエルドラ共々エルフたちを悉く吹き飛ばしていくと、その場は再び阿鼻叫喚の地獄へと様変わりする。


「う、うわああああああああああああああああああああああああああッ!!血がッ!!血がこんなにィィイイイイイイイイイイイイイイイイ…………ッ!!」
「ひィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!助けてぇ…………ッ!!助けてくれぇ…………ッ!!」
「こ、これ以上はやめてくれェッ!!もう痛いのは嫌なんだァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


最初の時と打って変わったような、情けなくも惨めな叫び声────。

30体近くいたであろうエルフたちは既に壊滅近く、さらには元の臆病さまでもが完全に戻ってきてしまっているようだった。

所詮は他人の力で底上げしてもらった仮初の力なのだ。

使いこなすことも出来ず…………攻撃したところでそれが通じないとなれば、あとは本来の『臆病者』に戻るしかない。

テオドールたちはその光景を見て、訝しげに顔を顰めた。
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