189 / 267
【第六章】新生・魔王軍
【第四十一話】最狂の死神 ⑦
しおりを挟む
「やり方は分かるな…………?何でもいいから、ディーグレアの首を掻っ切ってやれば良いんだ。少し硬いかもしれないが、お前ならチョロいもんさ。単純だろう…………?」
「い、嫌…………」
「断ってもいいが、その場合は"全員"、そこの『卑怯者』と同じ末路だ…………。決闘を汚した『卑怯者』への手助けなど、"魔族として"は言語道断────。もちろん…………"元幹部"であり、この場で"最も強い"『竜種』であるお前が言うなら、他の魔族たちだって反対はしないさ」
「そ、そんな、『全員』なん……」
「だから…………ッ!!今ッ!!ここで"選択"しろ、ニーニャッ!!全員揃って俺と共にヒューマンを滅ぼすか…………ッ!!全員ここでこの『卑怯者』と共に死ぬかだッ!!さァ、決めろッ!!さァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァ…………ッ!!」
「ひ………………ッ!!」
竜種であるニーニャすらもが慄く、狂気の恫喝────。
ドライダスやナターシャもニーニャと同じ『竜種』であり、"元幹部"であるものの…………有無を言う間も無く勝手に巻き込まれてしまった。
今のこの瞬間に限り、ニーニャが彼らの"代表"としての扱いになったのだ。
まぁ、それについては、ドライダスもナターシャも特に反論はない。
この場ではニーニャだけがディーグレアを庇い、ここ最近のディーグレアを知っているからだ。
ニーニャとの付き合いも長いし、『弱肉強食』の論理で言えば、ここではニーニャが一番強い。
それに…………
"万が一"の時は本当に一緒に死んでやれるくらいには、彼らの絆は相当に強かった。
他の魔族はとばっちりだ。
理不尽で全く納得できなかったとしても、この狂気の暴君に逆らえるほどの度胸はない。
兎にも角にも…………ニーニャの『選択』一つで、ここにいる魔族たちの命運が左右されるような状況になった…………ということだった。
ニーニャの意思一つで、魔族の『本意』が決まる。
ディーグレアを殺すか、『全員』死ぬか────。
改めて考えても最悪の選択肢だ。
ニーニャの頬から、大粒の冷や汗が何度も何度も滴り落ちていく。
(コレが…………『新しき王』…………か……)
ドライダスはこの光景を見て…………改めて息を呑んだ。
この場の空気は異常だ。
背中が寒々しく凍りつく中、汗だけが一向に止まる気配がない。
恭司の醸し出す不気味なオーラに誰しもが圧倒され、心臓の鼓動を急ピッチで跳ね上げていた。
ドライダスやナターシャまでもが大人しくなってしまうくらいだ。
チリチリと全身に痛みを感じるほどの絶大な緊張感が場を包み、空気がピリピリと冷たく苦しくなっていく。
選択肢なんて…………もはやあってないようなものだった。
一応『選択』なんて銘打ってはいるが、ほとんど"恐喝"のようなものだ。
まるで心を鎖で束縛されているかのように…………抗おうにも、身体がそう動いてはくれない。
「ディーグレア様…………」
「がああああああああああああああああああああああッ!!グアアァガ…………ッ!!ぐぅああああああああああああああああ…………ッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
(やめろ、ニーニャッ!!そんなことをする必要はないッ!!ソイツはお前たちに消えない傷を負わせようとしているんだッ!!やれば二度と後戻りできなくされるぞ…………ッ!!)
ディーグレアによる必死の制止も…………この場にいる魔族たちには誰にも届きはしなかった。
既に彼らのディーグレアに対する信頼はなくなっており、それどころか命の危機にまで追いやられているほど緊迫した状況になっているからだ。
勇者などよりよっぽどタチが悪い。
ニーニャはとりあえず大きく息を呑むと、慎重に一歩ずつ…………ディーグレアの元へゆっくりと歩み寄っていった。
そのユラユラと小刻みに左右へとブレる様は、見方によってはゾンビのようだ。
覚悟を決めたわけじゃない。
決断したわけでもない。
ニーニャはただ…………"諦めた"だけだ。
その行動に心や意思はなく…………恭司の恐喝に仕方なく流されるまま、思考を停止して動いている。
恭司はそんなニーニャの様子を見て…………満足そうに、ニヤリと口元を緩めた。
"上出来"だ。
ニーニャが…………魔族たちが"自ら"動いた事実さえあれば、あとはどうとでもできる。
だから────。
「さァ、やれ────。ニーニャ」
「ニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!ガァァァァァァァァァァ…………ッ!!グァァァ…………ッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
響き渡る絶叫に、延々と高まっていく狂気性────。
瀕死でも尚硬いディーグレアの身体を、ニーニャは自らの爪で力一杯斬り裂いていった。
もう一心不乱だ。
何も考えず────。
何も感じず────。
まるで人形の如く、ただただ無心で心を殺し、ひたすら作業を続け続ける。
「ひ…………ッ!!ひ…………ッ!!」
ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャ…………ッ!!
「ぁう…………ッ!!がぁ…………ッ!!」
物理的に肉体を奪い取られていって、ディーグレアも既に叫ぶ気力すら残ってはいなかった。
もはや…………最期に残った力ですら底を尽きたのだ。
静寂に包まれたこの空間の中────。
ディーグレアの血が肉がニーニャの手によって幾度となく宙を舞い、地面が真っ赤に染め上げられていく。
「い、嫌…………」
「断ってもいいが、その場合は"全員"、そこの『卑怯者』と同じ末路だ…………。決闘を汚した『卑怯者』への手助けなど、"魔族として"は言語道断────。もちろん…………"元幹部"であり、この場で"最も強い"『竜種』であるお前が言うなら、他の魔族たちだって反対はしないさ」
「そ、そんな、『全員』なん……」
「だから…………ッ!!今ッ!!ここで"選択"しろ、ニーニャッ!!全員揃って俺と共にヒューマンを滅ぼすか…………ッ!!全員ここでこの『卑怯者』と共に死ぬかだッ!!さァ、決めろッ!!さァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァさァ…………ッ!!」
「ひ………………ッ!!」
竜種であるニーニャすらもが慄く、狂気の恫喝────。
ドライダスやナターシャもニーニャと同じ『竜種』であり、"元幹部"であるものの…………有無を言う間も無く勝手に巻き込まれてしまった。
今のこの瞬間に限り、ニーニャが彼らの"代表"としての扱いになったのだ。
まぁ、それについては、ドライダスもナターシャも特に反論はない。
この場ではニーニャだけがディーグレアを庇い、ここ最近のディーグレアを知っているからだ。
ニーニャとの付き合いも長いし、『弱肉強食』の論理で言えば、ここではニーニャが一番強い。
それに…………
"万が一"の時は本当に一緒に死んでやれるくらいには、彼らの絆は相当に強かった。
他の魔族はとばっちりだ。
理不尽で全く納得できなかったとしても、この狂気の暴君に逆らえるほどの度胸はない。
兎にも角にも…………ニーニャの『選択』一つで、ここにいる魔族たちの命運が左右されるような状況になった…………ということだった。
ニーニャの意思一つで、魔族の『本意』が決まる。
ディーグレアを殺すか、『全員』死ぬか────。
改めて考えても最悪の選択肢だ。
ニーニャの頬から、大粒の冷や汗が何度も何度も滴り落ちていく。
(コレが…………『新しき王』…………か……)
ドライダスはこの光景を見て…………改めて息を呑んだ。
この場の空気は異常だ。
背中が寒々しく凍りつく中、汗だけが一向に止まる気配がない。
恭司の醸し出す不気味なオーラに誰しもが圧倒され、心臓の鼓動を急ピッチで跳ね上げていた。
ドライダスやナターシャまでもが大人しくなってしまうくらいだ。
チリチリと全身に痛みを感じるほどの絶大な緊張感が場を包み、空気がピリピリと冷たく苦しくなっていく。
選択肢なんて…………もはやあってないようなものだった。
一応『選択』なんて銘打ってはいるが、ほとんど"恐喝"のようなものだ。
まるで心を鎖で束縛されているかのように…………抗おうにも、身体がそう動いてはくれない。
「ディーグレア様…………」
「がああああああああああああああああああああああッ!!グアアァガ…………ッ!!ぐぅああああああああああああああああ…………ッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
(やめろ、ニーニャッ!!そんなことをする必要はないッ!!ソイツはお前たちに消えない傷を負わせようとしているんだッ!!やれば二度と後戻りできなくされるぞ…………ッ!!)
ディーグレアによる必死の制止も…………この場にいる魔族たちには誰にも届きはしなかった。
既に彼らのディーグレアに対する信頼はなくなっており、それどころか命の危機にまで追いやられているほど緊迫した状況になっているからだ。
勇者などよりよっぽどタチが悪い。
ニーニャはとりあえず大きく息を呑むと、慎重に一歩ずつ…………ディーグレアの元へゆっくりと歩み寄っていった。
そのユラユラと小刻みに左右へとブレる様は、見方によってはゾンビのようだ。
覚悟を決めたわけじゃない。
決断したわけでもない。
ニーニャはただ…………"諦めた"だけだ。
その行動に心や意思はなく…………恭司の恐喝に仕方なく流されるまま、思考を停止して動いている。
恭司はそんなニーニャの様子を見て…………満足そうに、ニヤリと口元を緩めた。
"上出来"だ。
ニーニャが…………魔族たちが"自ら"動いた事実さえあれば、あとはどうとでもできる。
だから────。
「さァ、やれ────。ニーニャ」
「ニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!ザク…………ッ!!
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!ガァァァァァァァァァァ…………ッ!!グァァァ…………ッ!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」
響き渡る絶叫に、延々と高まっていく狂気性────。
瀕死でも尚硬いディーグレアの身体を、ニーニャは自らの爪で力一杯斬り裂いていった。
もう一心不乱だ。
何も考えず────。
何も感じず────。
まるで人形の如く、ただただ無心で心を殺し、ひたすら作業を続け続ける。
「ひ…………ッ!!ひ…………ッ!!」
ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャッ!!ズシャ…………ッ!!
「ぁう…………ッ!!がぁ…………ッ!!」
物理的に肉体を奪い取られていって、ディーグレアも既に叫ぶ気力すら残ってはいなかった。
もはや…………最期に残った力ですら底を尽きたのだ。
静寂に包まれたこの空間の中────。
ディーグレアの血が肉がニーニャの手によって幾度となく宙を舞い、地面が真っ赤に染め上げられていく。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる