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【第六章】新生・魔王軍

【第三十七話】進化 ①

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「…………改めて見ると、本当にメチャクチャだな……」


一方、視点は移り変わり────。

四方八方全てを壊滅させられた『トラントスの街』を見て、恭司はウンザリしたようにため息を吐き出した。

ほとんどシャーキッドのせいだ。

レオナルドと"近隣の住民"をどうにか殺せとは命じたが、街まで一緒に壊し尽くせとは言っていない。

5位の女性を閉じ込めていた祭壇を避けたのはまぁ良いとしても、これでは即座に拠点として使うことは出来そうになかった。

いくつか無事な建物はあるから一旦の生活には困らないだろうが、復興は必須だろう。

なんせ、恭司はこれからここを使って、魔族の"軍"を作らなければならないのだ。

魔族たちなら野宿でも何一つ困ることはないにしても、統率や"監視"の意味では話が変わる。

一つどころに集約させた方が、"恭司にとって"都合が良いのだ。

魔族は基本的に知能が低いが、下手にバラけられれでもすれば、それだけ"逃亡"を許す可能性が上がることになる。


「それに…………軍を作るならやはり"指揮官"が必要だよなァ……」


ディーグレアやニーニャなど、将軍クラスなら既に何人か集まっているものの、恭司の考える数を考えると、それよりもさらに小分けした人数をまとめる"分隊長"が欲しい所だった。

将軍だけで全ての兵を統率し続けることなど不可能なのだ。

やはり、階級はピラミッド状になっているのが好ましい。


「グハハハッ!!今世の魔王…………カザルといったか?とりあえず戦いも落ち着いたようだからな、我が挨拶にきてやったぞッ!!光栄に思うが良いッ!!」


すると…………

恭司が色々と思案を巡らせている中、ディーグレアが快活な笑顔と共に話しかけてきた。

戦争が終わってヒューマンを全滅させたことで、取り急ぎ平穏がやってきたのだ。

改めて話すタイミングとして、ちょうどいいと判断したのだろう。

これから共に戦う以上、交流は深めておかなくてはならない。

だが…………


「…………魔族如きが、ずいぶんとデカい態度を取るじゃないか…………。復活して早々、向こうに送り返してやろうか?」


恭司はディーグレアの話し方が癪に触ったのか、初っ端から威圧するように言葉を返した。

元々、恭司はコミュニケーションについてあまり得意な方ではないのだ。

恐喝や拷問などは大の得意であるものの、仲を深めるための会話なんてほとんどやったことがない。

刀の方がよっぽど雄弁に物を語るくらいだ。

軍や指揮官よりも先に…………こっちの方を何とかするべきかもしれない。


「グハァーッハハハハハハハハッ!!初対面にも関わらず、"聞いていた通り"の不遜っぷりよッ!!まぁ良い…………。せっかくこうして、向こうに逝った我を復活させてくれたのだ。多少の無礼には目を瞑ろうじゃないか」


ディーグレアはそう言うと、ニンマリと笑みを浮かべた。

挑戦的な笑みだ。

復活させてもらった以上、一応は立場的に恭司より下となるはずのディーグレアだが、それで素直に納得するほど可愛い性格はしていない。

恭司は"こっち"の方が身に馴染んでいるのか、躊躇いなく殺気を迸らせた。

殺しはしないまでも、元々、魔族相手に上下関係をハッキリ教え込んでおくのは大事なことなのだ。

相手が魔王である以上、時間は相当にかかるだろうが、長期戦に持ち込めば勝てない相手ではない。


「いや、魔王様も先代様も…………2人揃って一体何をしているニャ……?これから仲間になるんニャから、もっとフランクに話した方が良いニャ」


すると、そんな中…………

恭司とディーグレアのもとに、エルフを連れたニーニャが歩いてきた。

ニーニャは普段通りを装いつつも、何とも言えない表情をしながら、ディーグレアを見つめる。

実に…………200年ぶりの再会だ。

本当なら今すぐにでも駆け寄って胸に顔を埋めたいくらいに、懐かしさが心の内に込み上がってくる。


「おおッ!!ニーニャかッ!!久しぶりだなッ!!あれから200年にもなるが、息災であったかッ!?」


ディーグレアはニーニャを見ると、戦闘体制を解いて普通に反応してきた。

どうやら、ニーニャほど強い思い入れはないようだ。

恭司もそれで白けたのか、同じように殺気を引っ込めて、戦闘体制を解く。


「…………昔と変わらず、健康そのものニャ。"先代"様こそ…………お変わりないようで何よりニャ」

「グハハハッ!!我は"あの時"からほとんどそのままここにいるようなものだからなァッ!!まさか、再びこの世に舞い戻ることになるとは思いもよらなかったわッ!!」


ディーグレアはそう言って、再びグハハハハハッ!!と笑った。

200年前────。

ディーグレアは当時の勇者に殺されてから、ほとんどそのままここに連れて来られているようなものなのだ。

あの世でどう過ごしていたのかは知らないが、見たところタイムラグはそれほど感じられないし、力が衰えている様子もない。

ニーニャと思いが異なるのもそのためだろう。

恭司は興味なさげにその様子を見ながら、そっちは一旦置いておくとして、ニーニャの後ろのエルフたちに声をかけた。
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