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【第五章】魔王
【第三十五話】強欲の化身 ⑤
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「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!!!」
ローリーは障壁を展開するさながら、同時に攻撃魔法に取り掛かった。
反撃だ。
使い慣れていない魔法だが、ファイアーボールが通じない以上、それも仕方がない。
『初級』ではなく、『上級』魔法だ。
ローリーは障壁を維持しながら、炎の熱風の影響を受けつつも、気合いと根性と才覚を駆使しながら、呪文を唱える。
その魔法の名は、『ファイアージャベリン』────。
「な、何ィ…………ッ!?」
ディーグレアもこれには予想外だったのか、初めて体をのけぞらせた。
ローリーはすぐにその隙をついて、魔法を完成させる。
火の玉よりも凶悪な、1つ1つが巨大な炎の槍────。
相も変わらず、膨大な数だ。
ローリーは撃ち出す。
「死ねェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッ!!
着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾────…………ッ!!!!
いくつも放った。
何度もやった。
息が荒れるくらい、何十何百と上級魔法を叩き込み続けた。
『ファイアーボール』とは違う。
上級魔法である『ファイアージャベリン』は、その威力も火力も桁違いだ。
普通は一発でも喰らえば死ぬ。
二発も当たれば骨すら残らない。
だが…………
ローリーには分かっていた。
それでも尚…………
ディーグレアはまだ…………生きている。
「女ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
煙の中から聞こえた声────。
こうなることは知っていた。
分かっていた。
もはや驚くこともないのだ。
ディーグレアが規格外の化け物であることくらい、さっきのファイアーボールの時の反応を見れば誰にでも分かる。
"だから"────ッ!!
「まだ…………ッ!!終わらないッ!!」
ローリーは全弾を撃ち終わった後、流れるように杖を空に掲げた。
『ファイアージャベリン』を用意すると同時に、並行して"次"の魔法も構築していたのだ。
とっておきの大本命────。
もう既に魔力消費は死ぬ一歩手前の所まできているが、関係ない。
今ここでコイツを殺しておかないと、これから先、どんな災厄がもたらされるのか分かったものではないのだ。
ローリーは決死の思いで、"それ"を解き放つ。
それは、『上級』をも超えた、『古代級』魔法だ。
ドランゼットはもちろん、かつての魔術師たちですら、使いこなせた者はほとんどいない。
魔術師ギルド1位であるローリーの、最大最強の切り札────。
百年に一人の天才にしか扱えない、天変地異をも操る伝説の秘技────。
その名も…………
「『メテオ』ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
途端─────。
空からゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオッと強い音が聞こえてきたかと思うと、この都市全体を覆い尽くすかのように、巨大な影が落ちてきた。
いきなり夜がやってきたかのようだ。
ディーグレアは思わず、空を見上げる。
「チ…………ッ!!少々遊びすぎたか…………ッ!!」
そこには、視界に入りきらないほどに巨大な、"隕石"の姿があった。
真っ赤な炎に包まれたそれは、ローリーの真上から、最短距離を進んでここへと向かっているようだ。
自分ごとやるつもりなのだろう。
ローリーはディーグレアのみならず、ここにいる"全員"を道連れにしようとしている。
そして…………
「う、うわあああああああああああああああああああああああああああッ!!」
「な、何だ、アレェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」
「隕石だぁぁあああああああああああああああッ!!隕石が降ってきたぞォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
その隕石に一番反応していたのは、城壁の上で待機していたエルフたちだった。
命の危機が迫ったおかげで、元々の臆病さが戻ってきたようだ。
隣にいたニーニャは、そんなエルフたちを見て、ハァーッとため息を吐く。
「やれやれ…………。大丈夫ニャよ。ディーグレア"様"なら────」
ニーニャは何とも言えないくらいに複雑な表情を浮かべながら、エルフたちと同様にその隕石を見つめた。
"彼"の力は、ニーニャも昔からとてもよく知っているのだ。
"この程度"の危機に怖気付くような、可愛い存在ではない。
ニーニャにとっては"元"上司にあたる、"先代"魔王────。
"元"であるが故に、今はもう「魔王」と呼べないのが、少し寂しかった。
ニーニャは瞳に涙を浮かべ、その復活を改めて喜ぶ。
実に…………200年ぶりの再会だ。
もう二度と会うことはないと思っていただけに、いつまでも視界がぼやけて仕方がない。
「本当に…………おかえりなさいニャ…………。ディーグレア様…………」
その瞬間────。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
街中全てに行き渡るほどに強大な熱風が吹き荒れたかと思うと、ディーグレアのいた所から、巨大なマグマが放射された。
真上へ円柱を描くように噴射されたそれは、まるで火山が噴火したかのようだ。
轟音と衝撃と熱風が身体を打ち、気温がどこまでも上昇を続け、体中の水分が蒸発するような錯覚に襲われる。
そして…………
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
円柱のようになったマグマは、地表からまっすぐに上へ噴き上がると、上空で隕石とぶつかり合った。
隕石 vs 噴火────。
見ているだけでも恐ろしい、天災と天災のぶつかり合いだ。
伝説や御伽噺でしかあり得ないであろう異常事態が、このトラントスの街で、盛大に惨禍を広げている。
しかし…………
その均衡は、意外にも早々に崩れ始めた。
ローリーは障壁を展開するさながら、同時に攻撃魔法に取り掛かった。
反撃だ。
使い慣れていない魔法だが、ファイアーボールが通じない以上、それも仕方がない。
『初級』ではなく、『上級』魔法だ。
ローリーは障壁を維持しながら、炎の熱風の影響を受けつつも、気合いと根性と才覚を駆使しながら、呪文を唱える。
その魔法の名は、『ファイアージャベリン』────。
「な、何ィ…………ッ!?」
ディーグレアもこれには予想外だったのか、初めて体をのけぞらせた。
ローリーはすぐにその隙をついて、魔法を完成させる。
火の玉よりも凶悪な、1つ1つが巨大な炎の槍────。
相も変わらず、膨大な数だ。
ローリーは撃ち出す。
「死ねェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ…………ッ!!
着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾着弾────…………ッ!!!!
いくつも放った。
何度もやった。
息が荒れるくらい、何十何百と上級魔法を叩き込み続けた。
『ファイアーボール』とは違う。
上級魔法である『ファイアージャベリン』は、その威力も火力も桁違いだ。
普通は一発でも喰らえば死ぬ。
二発も当たれば骨すら残らない。
だが…………
ローリーには分かっていた。
それでも尚…………
ディーグレアはまだ…………生きている。
「女ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
煙の中から聞こえた声────。
こうなることは知っていた。
分かっていた。
もはや驚くこともないのだ。
ディーグレアが規格外の化け物であることくらい、さっきのファイアーボールの時の反応を見れば誰にでも分かる。
"だから"────ッ!!
「まだ…………ッ!!終わらないッ!!」
ローリーは全弾を撃ち終わった後、流れるように杖を空に掲げた。
『ファイアージャベリン』を用意すると同時に、並行して"次"の魔法も構築していたのだ。
とっておきの大本命────。
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ローリーは決死の思いで、"それ"を解き放つ。
それは、『上級』をも超えた、『古代級』魔法だ。
ドランゼットはもちろん、かつての魔術師たちですら、使いこなせた者はほとんどいない。
魔術師ギルド1位であるローリーの、最大最強の切り札────。
百年に一人の天才にしか扱えない、天変地異をも操る伝説の秘技────。
その名も…………
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「隕石だぁぁあああああああああああああああッ!!隕石が降ってきたぞォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
その隕石に一番反応していたのは、城壁の上で待機していたエルフたちだった。
命の危機が迫ったおかげで、元々の臆病さが戻ってきたようだ。
隣にいたニーニャは、そんなエルフたちを見て、ハァーッとため息を吐く。
「やれやれ…………。大丈夫ニャよ。ディーグレア"様"なら────」
ニーニャは何とも言えないくらいに複雑な表情を浮かべながら、エルフたちと同様にその隕石を見つめた。
"彼"の力は、ニーニャも昔からとてもよく知っているのだ。
"この程度"の危機に怖気付くような、可愛い存在ではない。
ニーニャにとっては"元"上司にあたる、"先代"魔王────。
"元"であるが故に、今はもう「魔王」と呼べないのが、少し寂しかった。
ニーニャは瞳に涙を浮かべ、その復活を改めて喜ぶ。
実に…………200年ぶりの再会だ。
もう二度と会うことはないと思っていただけに、いつまでも視界がぼやけて仕方がない。
「本当に…………おかえりなさいニャ…………。ディーグレア様…………」
その瞬間────。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
街中全てに行き渡るほどに強大な熱風が吹き荒れたかと思うと、ディーグレアのいた所から、巨大なマグマが放射された。
真上へ円柱を描くように噴射されたそれは、まるで火山が噴火したかのようだ。
轟音と衝撃と熱風が身体を打ち、気温がどこまでも上昇を続け、体中の水分が蒸発するような錯覚に襲われる。
そして…………
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
円柱のようになったマグマは、地表からまっすぐに上へ噴き上がると、上空で隕石とぶつかり合った。
隕石 vs 噴火────。
見ているだけでも恐ろしい、天災と天災のぶつかり合いだ。
伝説や御伽噺でしかあり得ないであろう異常事態が、このトラントスの街で、盛大に惨禍を広げている。
しかし…………
その均衡は、意外にも早々に崩れ始めた。
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