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【第一章】脱獄
【第一話】前世の記憶 ②
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「ん………………」
目を覚ますと、真っ暗な暗闇の中にいた。
明かりはなく、全てを黒の絵の具で塗り潰したかのような空間だ。
手も足も、自分の体から周りの景色に至るまで、その全てが黒色に覆い尽くされている。
本当に何もない…………ただただ黒いだけの空間だった。
「何だ…………ここは…………」
思わず呟いてみる。
感覚はあるし、足もあって、歩けていた。
とりあえず、歩くように足を動かしてみる。
感覚的には、一応動いているように思えた。
だが…………
視界があまりにも真っ黒すぎるせいで、本当に進めているのかは分からない。
足下からは何も感じず、無機質な感触しか感じられなかったのだ。
自分以外は、何も感じられない世界────。
まるで夢の中のようだと思った。
明らかに普段じゃ説明も付かないような、現実離れした摩訶不思議な現象に遭遇している。
もっと言えば、
夢は夢でも悪夢の方に違いなかった。
覚醒してからというもの最悪の気分だ。
不安と恐怖が心を締め付け、心なしか息苦しさすら感じる。
「夢なら早く覚めてほしいものだが……」
あまりに現実感が無さすぎて、何がどうなのかすら分からなくて、思考が追い付かなかった。
自分が何故ここにいるのかすら分からないのだ。
それどころか、その前の記憶すらろくに残っていない。
分かるのは『三谷恭司』────。
自分の名前だけだった。
混乱した。
途方に暮れた。
絶望的だった。
何も見えないくせに自分の存在だけはしっかり感じられるものだから、ただただ自分の無力さを痛感するばかりだった。
「誰か…………ッ!!誰かいるかッ!!いたら返事をしてくれッ!!」
思わず声を出してみる。
しかし…………
確かに声に出したはずなのに、その音は全く聞こえてはこなかった。
この暗闇の中に埋もれていくばかりで、何も反響しない。
ここまでくると、果たして本当に声が出ていたのかすら怪しい所だ。
感覚だけは相変わらずあるようだったが、目も耳も使えないこの状況では、周りがどうなっているのかすら理解することが出来ない。
恭司はとりあえず歩いてみることにした。
他にすることもやるべきことも分からないし、今はこの空虚な寂しさを埋めるためにも、ひとまず何かやってみようと思ったのだ。
相変わらず進んでるのかすら分からない上に、そもそも先があるのかどうかすら分からない状況ではあるが、ここで何もしない方が辛い。
もしかしたら餓死する可能性もあるし、この状況にずっといると気が狂ってしまいそうだったからだ。
恭司は慎重に歩を進め、首だけを左右に振って周りを見回す。
「何故だ…………。一体、何故…………こんな所に……」
何も分からないまま、ただ不安だけが胸の中を駆け巡っていた。
何から何まで意味不明の事態だ。
溢れ出す恐怖を何とか胸の中に押し込めつつ、恭司は暗闇の中をひたすらに彷徨い続ける。
すると…………
その前方に、ようやく何かを見つけることが出来た。
「アレは…………ッ!!」
光だ。
小さくて見落としそうだったが、確かに道標となるものを見つけた。
恭司は見つけるや否や、一目散にそこへと向かって走り出す。
ちゃんと進んでいるのか分からない状況だったが、光があったということは進めていたということなのだろう。
「ようやくか…………ッ!!」
恭司の表情にも笑顔が浮かぶ。
ここまでただただ暗闇で本当に何もなかったものだから、今はただ何かあっただけで嬉しかった。
恭司はその光までの道のりをまっすぐに走り続ける。
走っていると、それはどんどん大きくなっていった。
そこまで行き着くのにどれだけ掛かっていたのかは分からないが、大きくなってきている以上、確実に近づいているということだろう。
そして…………
その大きさがある程度になってくると、その光はやがて四角い姿を帯びてくる。
綺麗な形をした縦長の長方形だ。
おそらくは扉だろう。
この暗闇にも終わりがあったということだ。
恭司はそこに向かって全力で疾走し、期待に胸を膨らませる。
暗闇の終わり────。
思わず、口角が吊り上がる。
そして…………
恭司はとうとう────扉の向こう側に辿り着いた。
【よく来たな…………。『鬼の子』よ】
「………………は?」
光の扉らしきものを抜けると、辿り着いて早々そんなことを言われた。
こっちは久しぶりの光で視界すら定まっていないというのに、突然話しかけられても反応出来ない。
眩しい光にようやく慣れてくると、改めて周りを見た。
────白い部屋だ。
他には何も無い。
一面真っ黒な空間から移動した先は、一面真っ白な空間だった。
ただ、さっきと違って自分の姿も見えるし、耳も聞こえる。
それだけでも十分ありがたかった。
【ここに特定の人間を招いたのは初めてのことだ。だが…………貴様がここに来ることを、我はずっと待ち続けていたぞ。ずいぶん…………長生きしたものだな】
さっきの声にまた話しかけられた。
だが、
その姿は見えない。
自分の姿が見えているのだから目が見えないということもないと思うのだが、その声の主はどこにも見当たらなかった。
それに、
「ずいぶん長生き」と言われたが、自分の手足や体を見ても、それほど歳をとっていそうには思えない。
皮膚にはハリがあって、体のどこにも異常は見られず、完全に健康そのものだったのだ。
恭司はとりあえず、その姿の見えない声に対して返答してみることにする。
「突然お邪魔する形になってしまい、誠に申し訳ありません。ですが、ここは一体どこなのでしょうか…………?実は、この状況になる前の記憶が一切無く、気が付けばこの状況だったのです。何か分かるようであれば、お教えいただきたいのですが……」
【……………………】
何も見えないし聞こえないが、声の主は沈黙しているように思えた。
恭司からすれば訳が分からない状況だが、とりあえず自分は今、経緯も分からずこの謎の空間に放り出された状態で、何も出来る事がない。
さらには、
声の主の目的も意図も何もかもが不明なため、この状況がどういうものなのかは以前として分からない状態なのだ。
今は、とりあえず次の言葉を待つしかない。
目を覚ますと、真っ暗な暗闇の中にいた。
明かりはなく、全てを黒の絵の具で塗り潰したかのような空間だ。
手も足も、自分の体から周りの景色に至るまで、その全てが黒色に覆い尽くされている。
本当に何もない…………ただただ黒いだけの空間だった。
「何だ…………ここは…………」
思わず呟いてみる。
感覚はあるし、足もあって、歩けていた。
とりあえず、歩くように足を動かしてみる。
感覚的には、一応動いているように思えた。
だが…………
視界があまりにも真っ黒すぎるせいで、本当に進めているのかは分からない。
足下からは何も感じず、無機質な感触しか感じられなかったのだ。
自分以外は、何も感じられない世界────。
まるで夢の中のようだと思った。
明らかに普段じゃ説明も付かないような、現実離れした摩訶不思議な現象に遭遇している。
もっと言えば、
夢は夢でも悪夢の方に違いなかった。
覚醒してからというもの最悪の気分だ。
不安と恐怖が心を締め付け、心なしか息苦しさすら感じる。
「夢なら早く覚めてほしいものだが……」
あまりに現実感が無さすぎて、何がどうなのかすら分からなくて、思考が追い付かなかった。
自分が何故ここにいるのかすら分からないのだ。
それどころか、その前の記憶すらろくに残っていない。
分かるのは『三谷恭司』────。
自分の名前だけだった。
混乱した。
途方に暮れた。
絶望的だった。
何も見えないくせに自分の存在だけはしっかり感じられるものだから、ただただ自分の無力さを痛感するばかりだった。
「誰か…………ッ!!誰かいるかッ!!いたら返事をしてくれッ!!」
思わず声を出してみる。
しかし…………
確かに声に出したはずなのに、その音は全く聞こえてはこなかった。
この暗闇の中に埋もれていくばかりで、何も反響しない。
ここまでくると、果たして本当に声が出ていたのかすら怪しい所だ。
感覚だけは相変わらずあるようだったが、目も耳も使えないこの状況では、周りがどうなっているのかすら理解することが出来ない。
恭司はとりあえず歩いてみることにした。
他にすることもやるべきことも分からないし、今はこの空虚な寂しさを埋めるためにも、ひとまず何かやってみようと思ったのだ。
相変わらず進んでるのかすら分からない上に、そもそも先があるのかどうかすら分からない状況ではあるが、ここで何もしない方が辛い。
もしかしたら餓死する可能性もあるし、この状況にずっといると気が狂ってしまいそうだったからだ。
恭司は慎重に歩を進め、首だけを左右に振って周りを見回す。
「何故だ…………。一体、何故…………こんな所に……」
何も分からないまま、ただ不安だけが胸の中を駆け巡っていた。
何から何まで意味不明の事態だ。
溢れ出す恐怖を何とか胸の中に押し込めつつ、恭司は暗闇の中をひたすらに彷徨い続ける。
すると…………
その前方に、ようやく何かを見つけることが出来た。
「アレは…………ッ!!」
光だ。
小さくて見落としそうだったが、確かに道標となるものを見つけた。
恭司は見つけるや否や、一目散にそこへと向かって走り出す。
ちゃんと進んでいるのか分からない状況だったが、光があったということは進めていたということなのだろう。
「ようやくか…………ッ!!」
恭司の表情にも笑顔が浮かぶ。
ここまでただただ暗闇で本当に何もなかったものだから、今はただ何かあっただけで嬉しかった。
恭司はその光までの道のりをまっすぐに走り続ける。
走っていると、それはどんどん大きくなっていった。
そこまで行き着くのにどれだけ掛かっていたのかは分からないが、大きくなってきている以上、確実に近づいているということだろう。
そして…………
その大きさがある程度になってくると、その光はやがて四角い姿を帯びてくる。
綺麗な形をした縦長の長方形だ。
おそらくは扉だろう。
この暗闇にも終わりがあったということだ。
恭司はそこに向かって全力で疾走し、期待に胸を膨らませる。
暗闇の終わり────。
思わず、口角が吊り上がる。
そして…………
恭司はとうとう────扉の向こう側に辿り着いた。
【よく来たな…………。『鬼の子』よ】
「………………は?」
光の扉らしきものを抜けると、辿り着いて早々そんなことを言われた。
こっちは久しぶりの光で視界すら定まっていないというのに、突然話しかけられても反応出来ない。
眩しい光にようやく慣れてくると、改めて周りを見た。
────白い部屋だ。
他には何も無い。
一面真っ黒な空間から移動した先は、一面真っ白な空間だった。
ただ、さっきと違って自分の姿も見えるし、耳も聞こえる。
それだけでも十分ありがたかった。
【ここに特定の人間を招いたのは初めてのことだ。だが…………貴様がここに来ることを、我はずっと待ち続けていたぞ。ずいぶん…………長生きしたものだな】
さっきの声にまた話しかけられた。
だが、
その姿は見えない。
自分の姿が見えているのだから目が見えないということもないと思うのだが、その声の主はどこにも見当たらなかった。
それに、
「ずいぶん長生き」と言われたが、自分の手足や体を見ても、それほど歳をとっていそうには思えない。
皮膚にはハリがあって、体のどこにも異常は見られず、完全に健康そのものだったのだ。
恭司はとりあえず、その姿の見えない声に対して返答してみることにする。
「突然お邪魔する形になってしまい、誠に申し訳ありません。ですが、ここは一体どこなのでしょうか…………?実は、この状況になる前の記憶が一切無く、気が付けばこの状況だったのです。何か分かるようであれば、お教えいただきたいのですが……」
【……………………】
何も見えないし聞こえないが、声の主は沈黙しているように思えた。
恭司からすれば訳が分からない状況だが、とりあえず自分は今、経緯も分からずこの謎の空間に放り出された状態で、何も出来る事がない。
さらには、
声の主の目的も意図も何もかもが不明なため、この状況がどういうものなのかは以前として分からない状態なのだ。
今は、とりあえず次の言葉を待つしかない。
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