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出発当日、電車内のアクシデント

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「おはようなのです、真人お兄ちゃん、静香ちゃん」

「ああ、おはよう柚希ちゃん」

「おじさんもおばさんもおはようございます」

「ええ、和人君のご両親には感謝してるわ。 こういう機会を設けられるなんてね」

 旅行当日の朝、柚希ちゃん達が俺の家に来た。
 キャリーケースが大きいのでどれだけ詰め込んでいるかは不明だが。

「和人、一応護衛達も来るんだろ?」

「一応な。 距離は少し離れつつ何かがありそうな時は対処するらしい」

「それとキャリーケースは別の護衛さんに米子の駅前まで運んでくれるのです。 私達が持っていく荷物は最低限の物なのです」

「なるほどな。 黒塗りの高級車の後ろのワゴンカーはそれ用の奴か」

「そういう事だな。 じゃあ、まずは車で東京に向かい、そこから新幹線で岡山に向かおう」

 和人や柚希ちゃんから、荷物の事とかを聞いてから、おじさん達が待つ黒塗りの高級車に乗って、まずは東京駅を目指した。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さて、東京から岡山までは新幹線なので快適で何とかなった。
 問題は岡山から米子までの電車だった。
 特急で指定席に乗るのはまぁ、いいとしよう。
 だが、その特急のルートが……乗ってる特急の特性も相まって今、俺は追い詰められていた。

「う、うぷぅ……」

「ま、真人お兄ちゃん、大丈夫なのです!?」

 俺は今乗っている特急電車の車体の揺れに酔っており、吐きそうになっていた。
 慌てて柚希ちゃんが背中をさすってくれているけど……揺れのせいで一向に改善しない。

「この特急電車……振り子だからなぁ。 車体が傾いたりで揺れるんだわ。 特にカーブではな」

「電車で酔うのって珍しいと思ったけど、この特急に限ってはそうではないんですね」

「エチケット袋が常にあるからな。 酔いやすい人には厳しい特急だと思うよ。 特にこの線区はカーブが多いから」

 振り子車両……。
 カーブの時に振り子のように車体を傾かせるようにする事で高速性と安全性を保つ仕組みなのだが、どうも俺はこれに弱いらしい。
 車や新幹線は大丈夫なのに、振り子式の特急ではこのザマとか……。

「おじさんから酔い止めの薬貰おうか?」

「今の真人お兄ちゃんの状態じゃ厳しいのです。 乗る前に飲んだ方がいいのですが……」

「真人君も意外だな。 振り子式限定で酔うとは……。 カーブが多いプラス振り子式特急だからなぁ」

 静香がおじさんから酔い止めの薬を貰ってこようかと言うが、既に酔っている状態なので意味がない。
 こういうのは乗る前に飲んでおかないと効果が望めないからな。

 おじさんも心配そうに見ているし……。
 頼む、もう少しだけ保ってくれ……!

 この後、何とか吐くことはなく無事に米子にたどり着いたのだが、俺は振り子式車両酔いの為に先に宿泊地で休む羽目になってしまった……。

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