上 下
106 / 140
第6章 脱走勇者は悪魔になる

106 ヘキサ公国へ(前編)

しおりを挟む
「本当なんですか!? 確かヘキサ公国もあのポスターを貼ってたはず……!」

『本当だ。 そして脱走勇者は自分たちが指名手配になってることに怒りを感じたのか、力を解放して多くの町や村を滅ぼし、最後にヘキサ公国の首都を破壊して立てこもった』

「くっ、あいつら……!!」

 やはり自分の都合のいいように進まないと気が済まない如月と来栖が関わってたか!
 しかも予想以上に悪い方向でやらかしやがった!

「でも待ってよ。 いくらあいつらでもヘキサ公国を破壊するなんてできるわけが……」

「ひなたちゃん、さっきの悪魔族の女性の発言思い出して……」

「発言……? あっ!! そういえば、殺しただけでなく食べたって……! まさか……!?」

「そうだよ。 あの二人、どういう理屈でそうなったかは知らないけど、悪魔族を食べて力を取り込んだんだよ」

 由奈に突っ込まれた形で改めて亡くなった悪魔族の女性が言った言葉を思い出したひなた。
 それを肯定し、結論を出す由奈。

「あの二人、ある意味悪魔に魂を売ったってことか」

「そういう事になるね……」

 アイリスも嫌悪感を交えながら肯定ともいえる反応を示した。
 如月と来栖が悪魔に魂を売り、その力で自分の世界を築こうとしているのならそれをここで止めないといけない。

『逃げ延びたヘキサ公国首都に住んでいた住民の話によれば、二人は力を解放した瞬間、悪魔のような容姿に変化したそうだ』

「そんな……!」

 マジで悪魔に変化したのか…!
 本当に余計な事をやらかしてくれる……!!
 そして今になって俺は、ヘキサ公国の冒険者達の行く末が気になった。

「国王様! クレアやカイゼルさんやリックさん達は!?」

『彼らは果敢に立ち向かったが、悪魔化した二人に成すすべなく敗北した。 幸い、死者は出なかったがクレア君が囚われたようだ』

「そんな……、クレアが……」

「くそっ……! あいつら……!!」

 エミリーがクレアやカイゼルさん達がどうなったかを聞いたが、どうも悪魔となった如月や来栖に歯が立たず、クレアが囚われたようだ。
 その顛末を聞き、ショックを受けるエミリー。

『下手したら最悪な展開にもなりえる。 ゼイドラムの者や魔族からの応援は来るはずだから、合流してすぐにヘキサ公国に向かってくれ』

「分かりました」

 クリストフ国王からのさらなる任務を受ける意思を伝えたひなたは、怒りを隠し切れなくなっていた。

『前後してしまったが、隠れ里はやはり……?』

「はい。 例の二人によって壊滅させられてました」

『そうか……。 では、改めて早急にヘキサ公国に向かってくれ』

 そう俺達に伝えた後、クリストフ国王からの通信を終えた。

「急ごう……。 あいつら倒してクレアを助けないと……」

「うん、そうだね。 早く行こう!」

「ん……!」

「エミリー様、クレア様を救う為にも、急ぎましょう!!」

「うん! 行くよ!」

 アイリスも胡桃もクリスタもエミリーも、みんなあいつらを倒し、クレアを救いたいという決意を持っていた。
 俺の言葉に同意したみんなと共に、ヘキサ公国へと急いだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「暁斗さん!! 皆さん!!」

 森を出て、その足でヘキサ公国に急ぐ途中で声を掛けられた。

「シンシアさん!」

「もしかして、魔族領からの援軍はあなたですか?」

 足を止め、声が聞こえた方向に向くとそこには魔族領の第7防衛部隊副隊長のシンシアさんがいたのだ。
 ひなたもびっくりしたみたいで、シンシアに聞いていた。

「はい。 イリアゲート様からヘキサ公国の件を頼む言われまして、私の仲間と一緒に駆けつけました。 あと、ゼイドラムからも援軍が来ています。 少し先行した後、中間拠点を作ってるみたいなので、まずはそちらへ合流しましょう」

「分かりました!」

 すでにゼイドラムからも援軍が派遣されていたか。
 先行して拠点を作ってる

「それでも急がないといけないのには変わりませんが」

「それでも助かります! 今回の件は、あの脱走勇者が……、あいつらが絡んでます! 力を貸してください!!」

「ええ、指名手配もされてるという事ですし。 ですが、クリストフ国王様から悪魔族を食べて力を得たと聞きました。 何があるか分かりません。 油断しないようにしましょう」

「うん、そうだね。 あの二人をこれ以上のさばらせるわけにはいかないからね」

「ん……、ゆるせない。 急ぐ……」

 こうして、俺達は途中でシンシアさんその仲間たちと合流をし、ヘキサ公国解放のための中間拠点を作っているゼイドラムの陣営の元へ急いで向かった。

(無事でいてくれ……! クレア……!!)

 あの二人に囚われたクレアの事を案じつつ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

転移無法の育成者 〜勇者パーティーを追放された転移能力者、異世界人を元の世界に戻すことで力を奪い、魔王軍を育てながら最強に至る〜

時計指すU
ファンタジー
『指定召喚』スキルによって、好みのスキルを持つ異世界人の呼び出しが可能な時代。 おかげで魔王軍に属する無害な者ですら、人間側からの一方的な蹂躙をされるようになっていた。 しかし、ある時を境に異世界人を消して回る存在が現れる。 その者は転移を駆使し、圧倒的な力で冒険者をねじ伏せていく事で転移無法と呼ばれ、恐れられるようになった。 事は、その人物であるリアが勇者パーティーを追い出された時から始まる。 その後リアは魔王の娘と出会い、所持している『転移』スキルの特殊効果を教えられる。 それは異世界人を元の世界に送り返すことで、その人物がこれまでに累積した経験値と所持スキルを獲得できるというものだった。 そこでリアは『転移』と新たに得た『育成』スキルを合わせ、虐げられている各地の魔王軍の者たちを自衛ができるように育てると共に、その原因である異世界人を排除していく事を決める。 ーーこれはリアが自分の心に従い、弱き者たちに力を与えていく事で、ねじまげられた真実を暴いていく物語。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

処理中です...