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第3章 春日部由奈に救いの手を
49 閑話~その頃のガルタイト国内④~
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「な、なんだと!? 我が討伐部隊が惨敗しただと!?」
「はい。 魔族領最南端を守る防衛部隊にわが軍はなすすべもなく惨敗しました。 兵士は全滅、勇者も二人死亡したとのことです」
「お、おのれ……、魔族め……!」
ガルタイト国の王城、そこにある応接室にて宰相が国王のヘイト・ゾア・ガルタイトに惨敗の報告をしていた。
凶報を受けて、国王は怒りに震えていた。
自分の血を使い、強力なホムンクルスの兵士を量産し、さらにその力で自国の周辺にある国々を武力支配できる力を得て、ざぁ魔族ということで息巻いていたが亜人の集まりである魔族の力の前には無力を証明させる形となった。
「それだけではありません。 第三の追手部隊も一人の裏切りもあり、全滅しました」
「な、何ぃ!? 裏切りだと!? あの一件からそうさせないように対勇者の呪いを掛けてたはずだ!」
「それが、我々が無能と罵った男によってあっさり解呪されたようでして……」
「あ、あの無能が!?」
「第三の追手部隊の兵士や勇者の全滅もその男が関わっています」
「な、なんたることだ……!!」
ガルタイト国にとっては勇者でないために無能と罵った暁斗によって追手部隊の第二陣が全滅に追い込まれた事実に国王は顔色を悪くした。
宰相も報告の際に、顔面蒼白だったのは言うまでもない。
それほどまでに、信じられない結果だったからだ。
「それで、アンは無事なのか?」
「ええ、拠点代わりの『アキレス』の街におられます」
「そうか……」
アンの無事を知り、安堵する国王。
そしてすぐに、宰相に向き直り、こう言った。
「しばらく新たなホムンクルス兵士を作る。 それまでの国政は任せたい」
「はっ、了解しました」
「ついでに、もう一度、あの術式の用意もしておいてくれ」
「新たな勇者召喚を行うのですね。 こちらも承りました。 占拠したエリアから生贄を連れてまいります」
「頼むぞ」
国王が応接室から出て、宰相一人になる。
「あの一件から……、彼を無能扱いした時から我が国は追い詰められたかも知れんな」
宰相はそう独り言ちながら、あらゆる準備をし始めた。
◇◇◇◇◇◇◇
「だ、第三の追手部隊も……ですって!?」
「はい。 例の無能と罵った男に、一人の勇者を解呪して裏切りの要因を作っただけでなく、多くの兵士と勇者を圧倒的に切り伏せたとの事」
「あ、あの男が……、くぅっ!!」
第三の追手部隊の全滅の報を受けたザナ王女は、今まで以上に怒りを滲ませた。
第二の追手部隊以上に彼によって屈辱的な痛手を負わせられたのだ。
「あの無能が……、なんでここまで……」
「どうも、勇者じゃない代わりにこの世界の存在する全てのジョブの素質を授けられたみたいですね。 ほぼ半分のジョブを極めただけでなく、Sランクの魔物のメイジフォックスウルフとの契約までしていたそうです」
「な、あ、あのSランクの魔物を!?」
「ええ」
Sランクの魔物をテイム契約したと知って顔を青ざめるザナ王女。
プライドが高いSランクの魔物は、基本的にテイムできないが、きっかけによって契約を願った場合のみ特例で契約できることを知らないのだ。
「第四の追手部隊の編成は?」
「現在、人選を選んでいる最中ですので時間がかかるかと」
「それで構わないわ。今は時間を掛けて取り組んで頂戴」
「畏まりました」
ザナ王女の命を受けて、メイドが部屋を出る。
一人になったザナ王女、そこには前回と違い恐怖に彩られていた。
「あの男がここまで強くなってたなんて……。 どうすれば……」
頭を抱えながら呪詛のようにザナ王女は嘆いていた。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、ガルタイト国王城近辺にある安置室。
これは、逆らった者を処刑した際の死体を冷凍保存して安置する部屋。
だが、今まで利用したことはなくずっと放置されたままだ。
幾ら冷凍保存した場所とはいえ、魔法の力なのでそれが弱まれば腐敗する。
そんな中、一人の少女が目を覚ました。
「ん……、ぐ……、死体の臭いで目を覚ますとか……、いくら何でもタイミングが……。 しかし、愚父も愚姉妹も困ったものです。 考え方が違うからって私を勇者召喚の生贄にするなんて」
異臭に鼻をつまみながら少女は、悪態をついた。
「私は一度死んだはずなのにこうして生き返ることはある意味奇跡かもしれませんね」
彼女がホムンクルスである事は自覚しており、それでも一度死んだ身としては複雑な思いだろう。
「ですが、これはチャンスかも知れませんね。 早くここを出ましょうか……」
少女は安置室から裸のまま脱出し、王城に忍び込んだ。
「ステルス魔法がなければ、皆に裸を見られるわけですから…服を盗んで着替えましょうか」
ステルス魔法を掛けたまま、彼女は王城のとある部屋にある予備のメイド服と下着を盗み、すぐに着替えて王城から脱出しようとした。
その時……。
(話し声……? あれは愚父と宰相?)
聞き耳を立てているととんでもない事を知った。
改めて勇者召喚を行おうとしている事に……。
(これはまずいです……! 早くこの事を他国に知らせないと……!)
少女は脚力強化の魔法を使い、すぐさま城を出て、ガイアブルクへ向けて走っていった。
「はい。 魔族領最南端を守る防衛部隊にわが軍はなすすべもなく惨敗しました。 兵士は全滅、勇者も二人死亡したとのことです」
「お、おのれ……、魔族め……!」
ガルタイト国の王城、そこにある応接室にて宰相が国王のヘイト・ゾア・ガルタイトに惨敗の報告をしていた。
凶報を受けて、国王は怒りに震えていた。
自分の血を使い、強力なホムンクルスの兵士を量産し、さらにその力で自国の周辺にある国々を武力支配できる力を得て、ざぁ魔族ということで息巻いていたが亜人の集まりである魔族の力の前には無力を証明させる形となった。
「それだけではありません。 第三の追手部隊も一人の裏切りもあり、全滅しました」
「な、何ぃ!? 裏切りだと!? あの一件からそうさせないように対勇者の呪いを掛けてたはずだ!」
「それが、我々が無能と罵った男によってあっさり解呪されたようでして……」
「あ、あの無能が!?」
「第三の追手部隊の兵士や勇者の全滅もその男が関わっています」
「な、なんたることだ……!!」
ガルタイト国にとっては勇者でないために無能と罵った暁斗によって追手部隊の第二陣が全滅に追い込まれた事実に国王は顔色を悪くした。
宰相も報告の際に、顔面蒼白だったのは言うまでもない。
それほどまでに、信じられない結果だったからだ。
「それで、アンは無事なのか?」
「ええ、拠点代わりの『アキレス』の街におられます」
「そうか……」
アンの無事を知り、安堵する国王。
そしてすぐに、宰相に向き直り、こう言った。
「しばらく新たなホムンクルス兵士を作る。 それまでの国政は任せたい」
「はっ、了解しました」
「ついでに、もう一度、あの術式の用意もしておいてくれ」
「新たな勇者召喚を行うのですね。 こちらも承りました。 占拠したエリアから生贄を連れてまいります」
「頼むぞ」
国王が応接室から出て、宰相一人になる。
「あの一件から……、彼を無能扱いした時から我が国は追い詰められたかも知れんな」
宰相はそう独り言ちながら、あらゆる準備をし始めた。
◇◇◇◇◇◇◇
「だ、第三の追手部隊も……ですって!?」
「はい。 例の無能と罵った男に、一人の勇者を解呪して裏切りの要因を作っただけでなく、多くの兵士と勇者を圧倒的に切り伏せたとの事」
「あ、あの男が……、くぅっ!!」
第三の追手部隊の全滅の報を受けたザナ王女は、今まで以上に怒りを滲ませた。
第二の追手部隊以上に彼によって屈辱的な痛手を負わせられたのだ。
「あの無能が……、なんでここまで……」
「どうも、勇者じゃない代わりにこの世界の存在する全てのジョブの素質を授けられたみたいですね。 ほぼ半分のジョブを極めただけでなく、Sランクの魔物のメイジフォックスウルフとの契約までしていたそうです」
「な、あ、あのSランクの魔物を!?」
「ええ」
Sランクの魔物をテイム契約したと知って顔を青ざめるザナ王女。
プライドが高いSランクの魔物は、基本的にテイムできないが、きっかけによって契約を願った場合のみ特例で契約できることを知らないのだ。
「第四の追手部隊の編成は?」
「現在、人選を選んでいる最中ですので時間がかかるかと」
「それで構わないわ。今は時間を掛けて取り組んで頂戴」
「畏まりました」
ザナ王女の命を受けて、メイドが部屋を出る。
一人になったザナ王女、そこには前回と違い恐怖に彩られていた。
「あの男がここまで強くなってたなんて……。 どうすれば……」
頭を抱えながら呪詛のようにザナ王女は嘆いていた。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、ガルタイト国王城近辺にある安置室。
これは、逆らった者を処刑した際の死体を冷凍保存して安置する部屋。
だが、今まで利用したことはなくずっと放置されたままだ。
幾ら冷凍保存した場所とはいえ、魔法の力なのでそれが弱まれば腐敗する。
そんな中、一人の少女が目を覚ました。
「ん……、ぐ……、死体の臭いで目を覚ますとか……、いくら何でもタイミングが……。 しかし、愚父も愚姉妹も困ったものです。 考え方が違うからって私を勇者召喚の生贄にするなんて」
異臭に鼻をつまみながら少女は、悪態をついた。
「私は一度死んだはずなのにこうして生き返ることはある意味奇跡かもしれませんね」
彼女がホムンクルスである事は自覚しており、それでも一度死んだ身としては複雑な思いだろう。
「ですが、これはチャンスかも知れませんね。 早くここを出ましょうか……」
少女は安置室から裸のまま脱出し、王城に忍び込んだ。
「ステルス魔法がなければ、皆に裸を見られるわけですから…服を盗んで着替えましょうか」
ステルス魔法を掛けたまま、彼女は王城のとある部屋にある予備のメイド服と下着を盗み、すぐに着替えて王城から脱出しようとした。
その時……。
(話し声……? あれは愚父と宰相?)
聞き耳を立てているととんでもない事を知った。
改めて勇者召喚を行おうとしている事に……。
(これはまずいです……! 早くこの事を他国に知らせないと……!)
少女は脚力強化の魔法を使い、すぐさま城を出て、ガイアブルクへ向けて走っていった。
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