上 下
28 / 140
第2章 異世界邂逅編

28 新たな追手その1~兵士殲滅編~

しおりを挟む
 盗賊集団【漆黒】の殲滅から数日が経過した。
 その間、俺たちは少し依頼遂行のペースを落としていた。
 それでも、ランクはCに昇格したが。
【魔術師】、【格闘家】も極めることができたから、次は【回復術師】か【テイマー】か【槍術師】のいずれか一つを極めるつもりだ。
 パーティーバランスからして【回復術師】の方がいいかもしれないが…。
 西地区の門を出て、3人で散歩しようとした時、ある人と会った。

「みなさん、こんにちわ」

「あ、イリアさん。 ご無沙汰してます」

 イリアゲートさんだった。
 あの会談の終わり間際に、様呼ばわりは流石に恥ずかしいから普通に呼んで欲しいとお願いした。
 それを了承してくれた代わりにこちらもイリアさんと呼ぶことにした。

「暁斗くんもひなたさんも順調のようですね」

「ええ、ついこの間私も暁斗君もCランクに昇格しましたから」

「アキトお兄ちゃんもひなたお姉ちゃんも、順調に強くなってるよ。 特に、お兄ちゃんは一昨日に【魔術師】と【格闘家】を極めて4つのジョブの素質を極めたんだから」

「まぁ……、暁斗くんは本当に凄いですね」

「あはは……」

 そんな感じで4人でしばらく雑談に花を咲かせていた。
 しかし、それも『気配察知』である存在を感じた事で終わりを告げる。

「……暁斗君、追手が来たよ」

「ああ……。 今回は兵士が先に来てるようだな」

「私の方でも感じました。 兵士は10人、その後ろに勇者が4人……ですね」

 ひなたも察知し、臨戦態勢を整えていた。
 イリアさんも詳しい内容を察知してくれた。
 しかし、今回は勇者4人か。

「ガイアブルク王都に着く前の追手では2人の勇者があっさり死んだからね。 兵士や勇者の数を倍にして来たんだね」

「成る程な。 アイリス、念のため国王とギルドに報告を入れてくれないか?」

「うん、報告が終わったら手伝うね」

 アイリスが結界魔法を掛けた後、通信用の水晶を出して、通信を入れる。

「念のため私の使い魔にアイリスちゃんを守らせます。まず、兵士を殺らないと勇者は来ないようですね」

「何人かは俺がやります」

「いいの?」

「ああ、向こうは未だに俺を無能だと思っているだろうからな。 屈辱を与えたい」

 と、対兵士についてのやり取りをしたら、10人の兵士が姿を現す。

「見つけたぞ、無能と裏切り者が」

「わざわざ殺されに来たか」

 好き勝手に言ってるな。
 ひなたも怒りの表情一歩手前、イリアさんも不快感を露にしていた。
 そんな中、俺は剣を抜く準備をする。

「さあ、裏切り者と無能をしょ……」

「うるせぇよ」

 兵士が言い切る迄に、【漆黒】の副リーダーのガゼルに対して使った、葛野流の一閃の剣術【虚空】を放つ。
 4人の兵士の間を縫うようにしてすれ違った後、4人の上半身がずり落ちるように下半身から離れた。

「へ、な、あ、あああぁぁっ!?」

 目の前で仲間の兵士が真っ二つにされた為に、声にならない悲鳴を上げて錯乱した。

「ば、馬鹿な……、何かの間違いだ。 無能が我らを殺せる力があるなど……」

「残念だけど夢じゃなく現実だよ」

「な、があぁっ!?」

 現実を認めない兵士の背後に回ったひなたが、間髪入れずに兵士を二人斬り付けた。
 深く斬られた兵士は、出血多量で息絶えた。
 ホムンクルスでも、血は赤いのか。

「そちらが問答無用で仕掛けたのですから、特別に魔王としての力を見せましょうか」

「な、ま、魔王だと!?」

「なんで魔王がここに!?」

 一方、イリアさんは片手を変質させていた。
 竜人ならではだろう。 その手に鋭い爪が生えていた。
 その爪で二人の兵士を抉るように切り裂いた。
 当然、即死だ。

「ぐ、お、おのれぇ!」

 残り二人の兵士が俺に襲いかかる。

「【フレイムブラスト】!!」

 だが、アイリスの声と共に、強大な炎が兵士に向かって襲いかかって来た。

「ぐわああぁぁっ!!」

 その炎は二人の兵士を纏めて焼き付くし、そのまま灰化した。
 肉の焦げる匂いがかなりキツかったな。
 アイリスが報告を終わらせた後で、この魔法を放ったんだろう。

「とりあえず、これで兵士は殲滅だよね?」

「ああ、後は勇者だ。 報告は終わったんだな?」

「うん、ひとまず駆けつけるけど、存分にやっちゃっていいって。 ギルドも念のために緊急依頼として私達と他の冒険者が引き受ける形にしたみたい」

 成る程、イリアさんがいるとはいえ、相手が勇者4人だからな。
 味方が多いに越したことはないな。

「さて、そろそろ出てきたらどうだい?」

 アイリスとのやり取りの直後にひなたが勇者がいるであろう方向に向けて言い放つ。
 そして、その場所から歪みが発生した。
 隠行魔法か何かを使って、隠れてたのか。
 ただ、アイリス曰く隠行魔法は精度が低く、気配察知されれば意味がないらしいが。

「葛野さん……」

「まさか本当に佐々木と一緒だとはな……」

 その歪みから勇者で、かつてはクラスメイトだった4人が現れた。
 そう、ここからが本当の戦いとなる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...