上 下
23 / 140
第2章 異世界邂逅編

23 指名依頼

しおりを挟む
 一昨日に討伐依頼を遂行中に盗賊集団【漆黒】に襲撃された事を報告した。
 そして今日、ギルドでさらなる依頼をするために訪れた所、サラトガさんから声を掛けられた。

「指名依頼?」

「はい、クリストフ国王様からです」

「お父さんから?  どんな内容?」

 クリストフ国王からの指名依頼だと聞いて、首を傾げつつ訪ねるアイリス。
 俺もひなたもその内容について気になった。

「アイリスちゃん達が報告してくれた例の盗賊集団が3日前から、ガイアブルク西側とヘキサ公国の境界線付近にいるみたいでして……」

「まさか、【漆黒】?」

 ひなたは嫌な予感がしたのか、サラトガさんに聞き返した。

「はい。 その【漆黒】という名前の盗賊集団です」

 外れて欲しかった予感が的中した。
 あいつらだったとは……。

「構成員が元冒険者らしいんですが、なぜ冒険者が盗賊に堕ちたんです?」

 アイリスは後で言うと言ったが、昨日と一昨日は聞きそびれたので、サラトガさんに聞いてみる。

「まず、構成員から話しますが、リーダーも元Bランクの実力持っており、手下の中には【魔術師】も混じっているとのことです」

 手下に【魔術師】までいるのか……。
 これは厄介だな。

「そして、リーダーである元Bランク冒険者は、実力は高いものの素行に問題がありまして、気にくわない内容があると喚き散らし、正論を言った人に対して首を絞め殺したりしていました」

 そこまでヤバい奴だったのか、その元冒険者は。
 ひなたは真っ青になり、アイリスも知っているらしいが、何度聞いてもいい気分じゃないのか表情を歪ませている。

「冒険者のモラルが問われますね、今の話を聞く限りは」

「当然、これには国王様も黙っていませんでした。 ギルドに憲兵を派遣し、殺害で捕らえました。 ライセンスも剥奪し、処刑を待つばかりでしたが、脱走したようでして……」

「手引きがあったんですか?」

「はい、ヘキサ公国の元冒険者による手引きでした。その冒険者は【シーフ】と【錬金術師】の素質持ちで、鉄格子等を解体して、脱走させたと言う事でした。 今回の盗賊集団は、その二人を中心に作られたとされてます」

 俺が尋ねた内容に、サラトガさんは苦笑しながら答えた。
 双方の元冒険者が手を組んで盗賊となって活動してるのか。

「実際、双方の国の商人や護衛の兵士や冒険者が被害に遭っており、女性に限ってはさらに性的暴行を受けたりしています。 クリストフ国王様は重く見ており、ランク以上の実力を持ったあなた達に指名依頼する形になりました。 まぁ、最もパーティーランクがCなので、指名依頼される条件を満たしてますし」

 ああ、そうだった。
 ソロランクかパーティランクのいずれかがC以上ならば指名依頼をされる可能性があるわけか。
 となると今回の指名依頼はパーティでの依頼だろうな。

「で、どうするんだ、アイリス?」

 いくらなんでも独断では決められないのと、今現在のパーティーリーダーがアイリスなので彼女に判断してもらうことにした。

「一昨日の手下は、お兄ちゃんの呪術で事なきを得たけど、それでも厄介な相手だからね。 でも、お父さんからの指名依頼だし何より今のアキトお兄ちゃんならやってくれそうだしね。 この依頼は受けるよ」

「私もアイリスちゃんの判断に従うよ。 今までの話を聞いて許せない部分もあったしね」

 アイリスはもとより、ひなたも依頼受諾に同意したようだ。
 というかアイリス……何気に俺にプレッシャー掛けてない?

「というわけで、この依頼引き受けます」

 こっちの心境をスルーしてアイリスはサラトガさんに依頼を受けることを伝えた。

「ありがとうございます。 では準備が完了次第、西地区の門の前に行ってください」

 そして、俺たちは買い物やらトイレやらを済ませて、待ち合わせ場所の西地区の門の前に行くことにした。


◇◇◇◇◇◇


「お父さん?」

「いやー、アイリスに暁斗くんとひなたくん。 悪いね、指名依頼をさせて」

 西地区の門の前にはクリストフ国王と何人かの付き添いの兵士たちが待っていた。

「クリストフ国王様自身が行かれるのですか?」

「ああ、今回の事件は我々の落ち度でもあるからね。 我々に恥をかかせた連中に地獄に送ってもらうつもりさ」

 クリストフ国王は力強く決意していた。
 その様子を見ていたアイリスは若干呆れ顔だ。

「これから転移アイテムを使って、ヘキサ公国側の冒険者たちと合流する。 奴の拠点は掴んでるからな。 実際にはあそこには王都から馬車で行くには4日は掛かるからね。 転移アイテムを使って行った方がいいのさ」

「なるほど、わかりました」

「では、出発しよう」

 そう言って、クリストフ国王が転移アイテムを使う。
 すると景色が変わり、そこは俺たちの目の前に冒険者らしき人たちと国のお偉いさんが待っている森の中だった。
 もしかして、拠点は森の奥なのだろうか?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

未来人の予言を信じて最強国家インドに投資してみた🇮🇳

ゆっち
経済・企業
2062年から来た未来人を信じて新NISA枠でインド投資信託を始めてみた。 インド経済についてのレポートと日々の投資に関する運用結果をメモ替わりに報告していく。 インド株は3種類のファンドを積立・成長投資で所有しているが、ここでは「楽天・インド株Nifty50インデックス・ファンド」の運用結果のみを記録する。

親友に婚約者を取られたはずだったのに!でもなぜか男になった親友に溺愛され囚われそうなのですが…

Karamimi
恋愛
貴族学院1年生、14歳の伯爵令嬢アリスには悩みがある。それは、婚約者で侯爵令息のアーロが物凄くモテる事だ。 親同士が決めた婚約ではあるが、それでもアリスはアーロを慕っていた。そんなある日、アリスと婚約破棄をし、別の女性と婚約を結び直したいと言って来たのだ!その決意は強く、アリスは泣く泣く婚約破棄する事に。 さらに相手の女性は第3王女でもあるアリスの親友、エドリーンだったのだ。アーロに婚約破棄された事よりも、絶大な信頼を寄せていたエドリーンに裏切られたショックで落ち込むアリス。 そんなアリスの元にやって来たのは、なんと男性の姿をしたエドリーンだったのだ! 一体どういう事?動揺するアリスにエドリーンは 「アリス、俺は初めて会ったあの日から君を愛してきた。どうか俺と婚約して欲しい!」 そう詰め寄って来たのだ。ちょっと待って!エドリーンが男!そして私を愛しているですって! そもそもアーロ様はどうなったの?完全にパニック状態のアリスは、あろう事かエドリーンから逃げようとするが… ずっと親友で女性だと思っていた人に詰め寄られ、逃げ腰のアリスと、今まで抑えていた感情を爆発させ、何が何でもアリスを手に入れようとする王子のお話です。

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

アルファポリスで投稿するにあたって。と、各投稿サイトやsns等に関して

ヘロヘロデス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの投稿に関して思った事を書き連ねています。 また今までやっている各サイトへの投稿や各sns、自身のHPなどの広報活動や収益化に関しても述べていきます。 どの様にフォロワーを増やしたり、増えていったりしていったのか。 また、どうやって審査を通過していったのかなどを述べていきます。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール
ファンタジー
俺は魔王を倒し世界を救った最強の勇者。 誰もが俺に憧れ崇拝し、金はもちろん女にも困らない。これぞ最高の余生! まだまだ30代、人生これから。謳歌しなくて何が人生か! ──なんて思っていたのも今は昔。 40代とスッカリ年食ってオッサンになった俺は、すっかり田舎の農民になっていた。 このまま平穏に田畑を耕して生きていこうと思っていたのに……そんな俺の目論見を崩すかのように、いきなりやって来た女の子。 その子が俺のことを「パパ」と呼んで!? ちょっと待ってくれ、俺はまだ父親になるつもりはない。 頼むから付きまとうな、パパと呼ぶな、俺の人生を邪魔するな! これは魔王を倒した後、悠々自適にお気楽ライフを送っている勇者の人生が一変するお話。 その子供は、はたして勇者にとって救世主となるのか? そして本当に勇者の子供なのだろうか?

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

処理中です...