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09 幕間~その頃の魔法学校では

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 場所は変わり、ネディネが卒業した王都にある『フェデリック魔法学校』。
 そこの校長室にてある二人が話をしている所であった。

「オルクス兄上、ようやく彼女は三年の枷を解き放たれましたね」

「校長と呼べ、ファル教頭……と言いたいが、今はプライベートだしな。 しかし、入学後とはいえよく彼女の違和感に気付いたな?」

「あの子は顔に現れやすいんですよ。 嫌な事があると特に。 だからすぐに気づいたんです」

「それでまずカタリナ殿に報告を入れたわけか」

「ええ、彼女は私の友人ですしね。 そこから国王である私達の父にも報告することができましたし」

 フェデリック魔法学校の校長のオルクスを兄と呼ぶのは、彼の妹であり教頭のファルという女性。
 彼らは兄妹であり、現国王を父に持つ……いわば彼らは王族でもあるのだ。
 ファルはネディネの叔母であるカタリナの友人であり、ネディネの異変を真っ先にカタリナに報告したのも彼女だ。

「証拠を集めた上で……だな。 しかし、父も彼女にとっては毒親に思い切った事をしたな。 深淵アビスに近いとされる秘境……『ナトラホテプの谷』に追いやるとは」

「あそこは危険な魔物もいますからね。 あの毒親レベルではまず生きて帰れないでしょう」

 カタリナと共にファルが証拠を集めて父である国王にも報告した結果、ネディネの実の両親はフェデリック王国とは敵対関係にある貴族主義のカバール王国との癒着があったことが発覚。
 すぐに彼女の実の両親を捕まえて、暫く地下牢に入れた後でオルクスが言う深淵アビスに近いとされる秘境とされる『ナトラホテプの谷』への追放刑となったのだ。

「しかし、まさか彼女の実の両親が敵対国とのパイプを持ってたとはなぁ」

「我がフェデリック王国の考えに不満があったのだとか。 だから魔力最強のネディネちゃんを使って敵対国に取り入って、そこから我が国を崩そうと」

「カタリナ殿と違い、あの親は差別志向が強かったからな。 領民も不満を抱えてたと聞く。 それで彼女は冒険者になったんだな?」

「そうですね。 帰郷した時に目的の人であった幼馴染の男の子が保護されたらしく、快方に向かったら一緒に冒険者活動をするってカタリナが言ってました」

「ほぉ……。 これは奇跡と言うべきか」

 差別志向が強く、出世欲も強かったネディネの実の両親がフェデリック王国のルールに不満を抱いていたようで、貴族主義の国家とは何度も連絡をしていたらしい。
 そこでネディネを敵対国であるカバール王国の王族の嫁として差し出し、向こうの最終兵器としてフェデリック王国を崩し、貴族主義を浸透させようと目論んでいた。
 結局、それは叶わぬ野望となったが。

「さて、私も王女としての仕事があるのでひとまず帰りますね」

「ああ、そっちも頑張ってくれ、ファル」

「兄上もこの後は王子として『世界冒険者連盟』の会議に出席するんですから、無理はしないでくださいね」

「善処しよう」

 お互い、この後は王族としての仕事をこなすため、ファルは一旦王城に帰り、オルクスは『世界冒険者連盟』の会議に出席する。
 無理をしないようにとお互い釘を刺し、フェルは校長室から出て行き、オルクスは残りの書類を片付ける。

「さて、これから忙しくなりそうだ」

 オルクスは天井を見上げながらそう呟いた。

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