上 下
48 / 57
第2部 激戦編

第47話 内乱介入

しおりを挟む
『ブリッジより各位へ。 間もなくフィーアクロイツ共和国の首都に近づく。 首都付近は戦闘が行われているので、準備が完了した機体からすぐに出撃を』

 リーゼと再会してからここまで、幸い帝国軍の足止めを食らうことなくフィーアクロイツ共和国の首都付近まで来ることが出来た。
 だが、既に首都付近で辺境の部隊とフィーアクロイツに滞在している連合軍が政府側として戦闘を行っているらしい。
 なので、準備が完了したアルム小隊から先に出撃する事に。

『ルキア、そっちは大丈夫か?』

「ええ、アパタイトは問題ないわ。 いつでも出れる」

『魔法少女部隊やブリューナク、リュート小隊は少し時間が掛かるみたいなので、私達が先に出撃ですかね』

『ああ。 だが、三番艦からも部隊が出撃するから、そっちとも連携して戦っていこう』

「了解。 アパタイト、出ます!」

 格納庫のデッキから私が先に出撃する。
 続いてアルムやフェリア軍曹、ミュリア軍曹、カロン軍曹という順番で出撃した。
 一方、三番艦からも部隊が出撃しており、その中に見たことのないMGTがあった。
 リーゼが設計したというMGTなのだろうか?

『いやー、それがルキアが乗ってるアパタイトか。 青みがかかった色に華奢なフォルムがイカすね』

「そういうリーゼこそ、それが貴方の機体?」

『そうさ。 ボク用に自分で作り、細かい部分では整備員さん達に手伝って貰ってようやく完成したやつさ。 名前は【フォカロル】だよ』

『名前がやや物騒ですね』

『悪魔っぽい名前ですしねぇ』

 リーゼの機体名にフェリア軍曹とミュリア軍曹が突っ込みを入れた。
 確かに【フォカロル】って異界の悪魔の名前の一つだった気がするしね。
 確か、ソロモンっていうやつの……。

『マスター! こっちに攻撃を仕掛けて来る機体が!』

「早速!?」

『多分、俺達も政府側の援軍だと思われているだろうな』

 色々考えていたら、辺境の部隊の一部がこっちに攻撃を仕掛けて来た。
 多分、政府側の援軍だと思われたのだろうとアルムは予想する。

『帝国の第一皇子を匿う政府の味方をする者は死ねぇ!』

「帝国と常に激戦続きだからって!」

『ぐぉあっ!』

 私は、襲いかかってきた機体に蹴りを入れて地面に叩き落とした。
 帝国との境界線に近い為に、常に帝国軍との激戦を繰り広げているっていう気持ちは分かるけど、こっちにまで明確な敵意は向けられたくはなかったな。

『貴様……、このグレスコ辺境伯に対して! 何故、帝国の第一皇子を匿う政府に味方する!』

「なるほど、貴方が辺境伯ね。 キスクに追放されて行き場を失ってるその人を匿うのは悪なのかしら?」

『当然だ! こっちは帝国と厳しい戦いをしているのに、政府は第一皇子を匿うと判断したんだ! だから、我々が鉄槌を下すんだ!』

『それが、世界の管理を目論むキスクに与する行為だって、分からないのか!』

『うるさい! 第一皇子を処刑したら、キスクを討てばいいだけの話だ!』

 攻撃を凌ぎながら仕掛けた話は平行線。
 今のやり方が帝国による世界の管理を目論むキスクに与する行為だとアルムは言ったが、グレスコ辺境伯は第一皇子を処刑したら、キスクを討てばいいと返す。
 ここまで過激だとはね。

「予想はしてたけど……」

『本当に分からず屋ですね』

 私達とフェリア軍曹が分からず屋のグレスコ辺境伯に嫌気が指していた時、リーゼからの通信が入ってきた。

『ルキア、やはりその辺境伯からおかしな魔力を感じる。 別れ際にボクが渡したアレを使おう』

「分かったわ、リーゼ。 アパ子、装填は?」

『大丈夫です。 いつでも撃てます』

 どうやら、やはりあの辺境伯からおかしな魔力を感じていたようで、渡して貰った【アンチマギバレット】を使う事に。
 アパ子に確認して貰い、いつでも撃てると言ってきたので、私はファイアバレットライフルを構える。
 リーゼも同様に辺境伯を狙いすますようにライフルを構える。

『いいかい? 狙うは奴の足元だ。 上手くやってくれよ』

「分かったわ。ファイアっ!」

 リーゼとのやり取りの後、ファイアバレットライフルを二人同時にグレスコ辺境伯の機体の足元を狙って撃った。
 炎に包まれた【アンチマギバレット】は、狙い通りに辺境伯の足元に着弾、そのまま小爆発し、紫色の霧が包み込む。

『ぐ、ぐわあぁぁぁぁ!』

 機体の中に入り込んだ霧は、コクピット内のグレスコ辺境伯にも包み込んでいるのかも知れない。
 苦しみによる絶叫が響き渡り……。

『ぐぅ、まさかこのような形で変身魔法を破られるとは……』

(一気に異質な魔力が‥‥!?)

『マスター! グレスコ辺境伯の機体が爆発します!』

 急に異質な魔力を感じたかと思えば、突如MGTが爆発した。
 そして、その爆発の中から現れたのは……二つの角と背中に紫色の羽を持ったロングヘアのイケメン風味の異質な人型だった。

『あれは……、魔族!』

『という事は、魔王軍!?』

 それを見たアルムとミュリア軍曹が驚きの声を上げる。
 私もあの容姿を初めて見るので、開いた口が塞がらずにいる。
 
「仕方ない。 変身魔法が解除された以上、名乗ろうか。 私は魔王軍七大幹部の一人、【変化】のモーシャスだ」

「本当に魔王軍がこの内乱を裏で……!」

『しかも七大幹部とやらがいきなりお目見えとか、これは予想外だねぇ』

 いきなりの魔王軍、そして七大幹部のお目見えとなった事で私もリーゼも予想外だった。
 他の辺境の部隊の兵士達がどんな状態なのかも知らずに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

ファンタジー
妻に先立たれ、酒を浴びる毎日を送り余生を楽しんでいた岡村鉄次郎70歳は、愛刀の鉄佳を月に照らした瞬間異世界に転移してしまう。 偶然ゴブリンキングから助けた皇女シルアに国を立て直すよう頼まれ、第二の人生を異世界で送ることに。 肝臓が悲鳴を上げ寿命が尽きると思っていたのに、愛刀を持てば若返り、自衛隊上がりの肉体はちょっとやそっとの魔物くらい素手でワンパン。あくまで余生を楽しむスローライフを希望するじじいの元にばばあが現れて……? 俺TUEEE改めじじいTUEEE物語が今始まる。 強いじじいと強いばばあ好きな方は是非宜しくお願いします!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...