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第1部 邂逅編

第8話 『アパタイト』、その力……

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 アルムの指示通りにシートの両隣にある丸いモノに魔力を注ぎ、上方に飛び立つ事をイメージして動かしたはいいが、そのスピードがやばすぎた。
 さらに、そのおかげで制御が効かず、機体に振り回される始末。

『ルキアさん! そのままだと帝国の機体とぶつかります!』

「えっ!?」

(不味い! ほぼ目の前に……!)

 フェリア軍曹の声に前を見ると、驚き戸惑っている帝国の機体とまさにぶつかろうとしていた。
 しかも、後方には迎撃準備までしてる……!?

(な、何か武器は……! このボタンは!?)

 このままではいけないので、藁にもすがる思いで目の前の赤いボタンを押した。

「ぐわあぁぁっ!」

「頭から小さな氷柱つららが!?」

『アイスニードルバルカンか!』

「うぐぐっ!」

 アルムが言うには、今のは『アイスニードルバルカン』という武器らしい。
 これで目の前の帝国の機体は倒したものの、その後の制御が効かずに結局倒れてしまう。
 私にもその衝動にダメージを受けてしまう。

『ルキア、大丈夫か!?』

「うぐ……、な、何とか……。 でも……」

『運動性からしてあんなスペックなのは予想してなかったな。 何とかやれそうか』

「やるしかないと思います」

 私は心配するアルムにそう言いながら、立ち上がる。
 立ち上がり方も頭の中に入っていたのは助かった。

『マスター、大丈夫ですか?』

「へ?」

 どこからか、声が聞こえた。
 マナフォンからではない?
 なら、どこから……?

『ここですよ、ここ』

「んん!?」

 私の目の前には羽の生えた小さな女の子が私の目の前を飛び回っていた。

「えっと……あなたは誰?」

『酷いですよマスター。 私はこの機体に搭載されてた子機ですよ』

「嘘!?」

『マスターの膨大な魔力によって人型妖精みたいになって普通に話せるようになりました』

(あ、言われてみれば……)

 私はコクピットの周囲を見回した。
 確か右肩付近にも銀色っぽい棒が付いた丸いモノがあったが、あれがなくなっていた。
 あれは、子機だったのか。
 そして、その子機は私が流した魔力の影響で人の形をした存在になったようだ。

『とにかく早く敵を倒しましょう。 まだ、敵の集団が残っていますよ』

「と言われても、全く制御できないんだけど」
 
『ああ、なるほど。 どうやら見た所まだ私の本体には名前がつけられていませんね。 マスターが名前を与えてください。 それなら私の本体もマスターの意のままに動かせますよ』

「名前、名前ねぇ……」

 しかし、まだ名前がなかったとはね。
 これを作った人は名前を与えなかったのかしら?
 とにかく今はこの名前にしておくか……。

「【アパタイト】。 これでいくわ」

『名前入力、完了しました。 これでマスターの思うように動くことができますよ』

「そういえば、なんだか身体が軽くなって……」

『今は仲間の方が対応していますが、再増援があったようです。 私達もやりましょう』

「知らぬ間に増援とはね……。 死ぬのは御免だし、やってやるわ。 行くわよ、【アパタイト】!!」

 さらに魔力を注ぎ、今私が名付けた機体の名前を言いながらアルムやフェリア軍曹が対応している帝国軍の方へと向かう。

「くっ、やっぱりスピードには振り回される!」

『マスター、ここはライフルを』

「ライフル!?」

『本体の腰に備えているものです。 ライフルをイメージしながら魔力を注げば反応してオーブからレバーが出てくるので、前方モニターに出てくるロックオンマーカーを敵の機体に定めてから上についているボタンを押せば発射できます』

「よし……」

『ルキア、やれるのか? 今、動きが鋭くなった感じがするが』

「少し取り込み中だったので、やってみます!」

 私は子機の言うようにライフルを構えるイメージをオーブ……シートの両隣の丸いモノに伝えると、右側にレバーが現れると同時に前方のモニターに赤いロックオンマーカーが表示される。
 これをレバーで動かして帝国の機体にロックオンさせてからボタンを押して発射するという事か。
 
(捉えた……!)

 マーカーが帝国の機体を捉えた瞬間、私はレバーを押した。
 するとライフルで撃つことができたが……。

「うが……ぁっ!」

「ううっ!?」

 ライフルから放たれたのは鋭く細い光の棒のようなもの。
 それは帝国の機体を貫通したと同時に相手の操縦者の悲鳴と共に機体が爆発した。

「な、何……今のは……?」

『る、ルキアさん、今のは……?』

『ビームライフル……じゃないか』

『う、失われし技術の……!?』

「ビームライフル……、今のが……!?」

(何これ、さっきのバルカンの威力といい……これ、強すぎる……!?)

 マナフォン越しに伝わるアルム達の畏怖感。
 だが、乗っている私にも恐怖を覚えたのだ。
 何故なら、さっきのライフルの威力によって、思いもよらない形で私は人を殺してしまったのだから。
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