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四章 空は夜に、少女は黒に
もちろん
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「それで、私たち、圏内だと思うんだけど」
「そうですね、圏内です。冬休みの地獄――強化合宿も、予定通り。ただ、あなた方の求めている英雄――――ジェイドは、おそらくこないでしょう」
「どうして」
ガイアは静かに、しかし少し怒りを込めながら聞いた。
ソフィア先生はやれやれ、といった様子だった。
「もとより、私は最善を尽くしました。これ以上は私の権力外です」
「どうしてと、そう聞いているの」
ガイアは棒を取り出した。右手で、即座にガイアはソフィア先生ののど元に添える。
「う......これからは他言厳禁ですよ」
「わかっている。もとよりこの件自体が他言できない」
理由から、目的まで何もかも。
「わかりました......。もうじき起きそうなんですよ」
「! そう言うこと」
ガイアは素直に棒を下した。
「え、どういうこと?」
エアリだけが困惑の意を示した。
「ライズ先生が言ってた、もうすぐ、この国は戦争を始めるかもしれない、と」
「なるほど......それに備えていないといけないってことなの」
「そうです。おそらく王城の中で、待機していると思われます」
ソフィア先生は苦い表情を浮かべた。
「体、なまらないのかなー」
エアリの率直な思いが漏れる。
「一応腐っても英雄だから、周りに側仕えがついてることはないだろうし、それに多分兵の訓練に出てる」
「なるほど」
エアリは納得する。と、すぐさま別の案を示してきた。
「それなら、兵士の訓練に紛れる?」
別に忍び込んで訓練する程度なら......怒られないよね、と付け加えたが、ガイアはやはり否定した。
「体格差が激しいから......いや、そうだ」
どうしたの、とエアリが問おうとしたが、嫌な予感が遮った。
それはソフィア先生も同様のようで、あからさまに嫌そうな表情を見せていた。
「ライズ先生は、実践で部ちぎれればできると言っていた」
嫌な予感は的中した、とソフィア先生は頭を抱える。
エアリは一応、最後まで効こうと思ったものの、ほぼ答えはわかっていた。
「もちろん、戦争に行くのが一番の実践」
「やっぱり!」
エアリとしては、友人が死ぬような真似はしてほしくないと、そう思っている。が、王城に忍び込んで、政を巻き込んで私情を挟むよりは、生存確率が高いと、そう単純に判断した。
私は、ついていけるのかな、なんてエアリが考えているところで、ついに壊れた。そう、ソフィア先生が。
ああああ、とうめき声を漏らした後、ソフィア先生は何かをつぶやきながら歩いて行く。
エアリが近づいて、うつろな目をしたソフィア先生の近くによると、何をつぶやいているのかを聞いてみる。
「残業が.......教頭が......校長が......給料が......」
どうやら先生も大変なようだ、今度は優しくしないと、とエアリは心に誓うのだった。
「そうですね、圏内です。冬休みの地獄――強化合宿も、予定通り。ただ、あなた方の求めている英雄――――ジェイドは、おそらくこないでしょう」
「どうして」
ガイアは静かに、しかし少し怒りを込めながら聞いた。
ソフィア先生はやれやれ、といった様子だった。
「もとより、私は最善を尽くしました。これ以上は私の権力外です」
「どうしてと、そう聞いているの」
ガイアは棒を取り出した。右手で、即座にガイアはソフィア先生ののど元に添える。
「う......これからは他言厳禁ですよ」
「わかっている。もとよりこの件自体が他言できない」
理由から、目的まで何もかも。
「わかりました......。もうじき起きそうなんですよ」
「! そう言うこと」
ガイアは素直に棒を下した。
「え、どういうこと?」
エアリだけが困惑の意を示した。
「ライズ先生が言ってた、もうすぐ、この国は戦争を始めるかもしれない、と」
「なるほど......それに備えていないといけないってことなの」
「そうです。おそらく王城の中で、待機していると思われます」
ソフィア先生は苦い表情を浮かべた。
「体、なまらないのかなー」
エアリの率直な思いが漏れる。
「一応腐っても英雄だから、周りに側仕えがついてることはないだろうし、それに多分兵の訓練に出てる」
「なるほど」
エアリは納得する。と、すぐさま別の案を示してきた。
「それなら、兵士の訓練に紛れる?」
別に忍び込んで訓練する程度なら......怒られないよね、と付け加えたが、ガイアはやはり否定した。
「体格差が激しいから......いや、そうだ」
どうしたの、とエアリが問おうとしたが、嫌な予感が遮った。
それはソフィア先生も同様のようで、あからさまに嫌そうな表情を見せていた。
「ライズ先生は、実践で部ちぎれればできると言っていた」
嫌な予感は的中した、とソフィア先生は頭を抱える。
エアリは一応、最後まで効こうと思ったものの、ほぼ答えはわかっていた。
「もちろん、戦争に行くのが一番の実践」
「やっぱり!」
エアリとしては、友人が死ぬような真似はしてほしくないと、そう思っている。が、王城に忍び込んで、政を巻き込んで私情を挟むよりは、生存確率が高いと、そう単純に判断した。
私は、ついていけるのかな、なんてエアリが考えているところで、ついに壊れた。そう、ソフィア先生が。
ああああ、とうめき声を漏らした後、ソフィア先生は何かをつぶやきながら歩いて行く。
エアリが近づいて、うつろな目をしたソフィア先生の近くによると、何をつぶやいているのかを聞いてみる。
「残業が.......教頭が......校長が......給料が......」
どうやら先生も大変なようだ、今度は優しくしないと、とエアリは心に誓うのだった。
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