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三章 終わりと始まり
時計の針は止まらない
しおりを挟む「サンライズが死んだって!」
その一報は、名前とともに世界を駆け巡っていたため、彼が昔所属していた教団に伝わるのもそう遅くはなかった。
「そうか」
「そうか、ってなんでそんなに冷たくいられるのよ!」
周囲に怒りを散らすのは少女。艶やかな髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜて、地面に頭をつける。夢であればいいのに、こんなたちの悪い夢なら早く冷めてくれ、と。
しかし周囲はもちろん、当人でさえこれが現実だということを痛いほどわかっていた。
「あの日、教団を追放しなければ、王都に流れ着くことも、教壇で鞭を取ることも、こうして死ぬこともなかった、そう後悔しているか?」
「......していなかった、と言えば嘘になるわ」
別に責任転嫁をしようとしているわけではない、と前置きをしてから、その大男は話を続ける。
「もう、過去だ。時計の針はどうあがいても止められやしないし、戻せない。どれだけ後悔しようと、失ったものはもう二度と戻らない。そうしていたって、もう変わらない今なんだ」
「どうして、どうして......」
その言葉を聞いて、うずくまっていた体を上げて大声を上げた。
「どうしてそんなに簡単に割り切れるのよ! サンライズが、死んだのよ! あの研究馬鹿で、それでも私たちと志を共にした仲間が!」
その姿はまるで泣きじゃくる赤子、しかし赤子というには体は大きい。
そんな精神と肉体が不釣り合いな彼女を制したのは、金髪の女性だった。
「ほら、そこまでだ」
手を上げた瞬間、すべての音がかき消された。
なんでそれを、と大男が言おうとするも、声が出ない。
「ほう、やはりサンライズの研究結果は興味深い、音というのがこうやって出来ているとは」
何か一人でぶつぶつとつぶやいていた彼女だったが、やがて手を下ろし、二人に提案をした。
「彼の研究にあった蘇生魔法なんだけど、やってみない?」
まるで買い物に行くように、あるいは友だちの家に遊びに行くようにもたらされたその言葉に、二人が抵抗するはずもなかった。
「それじゃあ、行くよ。彼がいなくとも、この使命は全うする。天星教団の名に懸けて」
そう宣言した金髪の女性は、こつ、こつと靴をならしながら装備の準備に取り掛かった。
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