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2章
お披露目会
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結局何の説明もないまま待機所のようなところに座らされて数十分。
お披露目会、とだけ言われたが、結局何をさせられるんだろうか。
場合によっては、俺も何か話さないといけないだろう。
一応、話すことを考えておくか......。
「ロードさん、もうすぐ行きますよ」
大聖女様が部屋に入るなりそう言った。
大聖女様が一度席を外せると考えたら、俺の聖者になるときの式に比べれば少し緩いということだろう。
「ちなみに、何か話したり、パフォーマンスだったりしたりとかは......?」
「あぁ、それは大丈夫ですよ。......だからそんなにお腹を押さえていたんですか」
「えぇ、ちょっと腹痛が。おそらく緊張なんですが......」
これまでそんな大衆の前に立つことなんて数えるほどしかなかった。
記憶にあるのもほぼ激情に駆られて動いたさっきの戦闘前ぐらいだろう。
経験不足が如実に出ている。
「そうですね。聖女アミリアも最初はそんなことを言っていましたね」
「そうなんですか」
てっきり、俺は最初からああいった教育を受けていて、前に立つことに対しての緊張なんて感じていないものだと思っていた。
「あの子の最初は十歳でしたから」
「なんと......」
今の年齢は知らないが、未成年の時にこの緊張を感じていたなんて。
そして、同じような状況だというのに同じように胃を痛めている俺はなんと情けないことか。
「さて、行きましょう」
大聖女様の声がかかる。
俺は椅子から立ち上がって、覚悟を決める。
「わかりました」
俺は大聖女様と一緒に、待機所から会場へと向かうのだった。
「さて、今日新たに誕生した聖者ロードが到着した」
俺が会場に到着したとき、丁度教皇様の話で紹介が入った。
どうやら裏から様子を見る時間はないらしい。
「ほら、覚悟を決めたんでしょう。行きますよ」
「はい」
俺はまぶしい世界へと、一歩を踏み出した。
「彼が聖者、ロードだ」
その瞬間、大歓声が沸き上がった。
俺が想像していたのは重役だけとか、お偉いさんのお食事会、みたいな感じだったが、どうやらそう言った政とは無関係の人々も流れ混んできているようだ。
机の上とかも良く見てみると、見栄え重視ではなく味重視のものや、屋台から買いあさってきたのか、というものもいくつかあった。
確かに、これなら話さなくても良いかもしれない。歓声多いし、ノリと雰囲気みたいな感じがある。
「さて、それでは準備は良いか」
と、教皇様が手に持っていたグラスを上にあげ、乾杯をしようとしたところだった。
シュン!!
と音を立て、何かが飛んできた。
教皇様の胸目掛け一直線に。
それは矢だった。
俺はすぐさま魔法を使用する。
身体強化バフだ。
とりあえず万能なそれは、矢に対して実に多数の対処法を持っている。
例えば、その強化された胸筋で矢を弾く。
教皇様の服が俺と同じような構造をしているなら、もし仮に貫通してもそこで勢いが殺されて、死に至ることはないだろう。
例えば、強化された反射神経で避ける。
身体強化という名ではあるが、それを十分使えるようにするために様々な機能を強化するため、その強化対象は筋力にとどまらない。
ので、その力をフルに使って回避することが可能だ。
これで大丈夫だと、思いたい。
国のトップに対しての守りは、沢山あって困ることなどないから。
だが、その心配は結論を言えば杞憂だった。
飛んでくる矢は、教皇様の元にたどり着く前に跳ね飛ばされた。
「これが、聖者ロードの力だ」
俺は口を広げるしかなかった。
隣をちらり、とみると、大聖女様が他からは見えないところで何かを伝えようとしていた。
正直何を言おうとしているのかはわからないが、きっと今のは大聖女様がやったということを伝えたかったんだろう。タイミング的に。
これは仕組まれたことなのか、それとも――――創造神教の仕業なのか。俺にはわからないけども、とりあえず教皇様が安全だったことを喜ぼう。
そして周囲はその力を見て更なる歓声に包まれた。
そして次こそ、教皇様が慣れた手つきでグラスを上にあげた。
「七神様のご加護があらんことを。乾杯」
沸き立つ声は、止まらない。
お披露目会、とだけ言われたが、結局何をさせられるんだろうか。
場合によっては、俺も何か話さないといけないだろう。
一応、話すことを考えておくか......。
「ロードさん、もうすぐ行きますよ」
大聖女様が部屋に入るなりそう言った。
大聖女様が一度席を外せると考えたら、俺の聖者になるときの式に比べれば少し緩いということだろう。
「ちなみに、何か話したり、パフォーマンスだったりしたりとかは......?」
「あぁ、それは大丈夫ですよ。......だからそんなにお腹を押さえていたんですか」
「えぇ、ちょっと腹痛が。おそらく緊張なんですが......」
これまでそんな大衆の前に立つことなんて数えるほどしかなかった。
記憶にあるのもほぼ激情に駆られて動いたさっきの戦闘前ぐらいだろう。
経験不足が如実に出ている。
「そうですね。聖女アミリアも最初はそんなことを言っていましたね」
「そうなんですか」
てっきり、俺は最初からああいった教育を受けていて、前に立つことに対しての緊張なんて感じていないものだと思っていた。
「あの子の最初は十歳でしたから」
「なんと......」
今の年齢は知らないが、未成年の時にこの緊張を感じていたなんて。
そして、同じような状況だというのに同じように胃を痛めている俺はなんと情けないことか。
「さて、行きましょう」
大聖女様の声がかかる。
俺は椅子から立ち上がって、覚悟を決める。
「わかりました」
俺は大聖女様と一緒に、待機所から会場へと向かうのだった。
「さて、今日新たに誕生した聖者ロードが到着した」
俺が会場に到着したとき、丁度教皇様の話で紹介が入った。
どうやら裏から様子を見る時間はないらしい。
「ほら、覚悟を決めたんでしょう。行きますよ」
「はい」
俺はまぶしい世界へと、一歩を踏み出した。
「彼が聖者、ロードだ」
その瞬間、大歓声が沸き上がった。
俺が想像していたのは重役だけとか、お偉いさんのお食事会、みたいな感じだったが、どうやらそう言った政とは無関係の人々も流れ混んできているようだ。
机の上とかも良く見てみると、見栄え重視ではなく味重視のものや、屋台から買いあさってきたのか、というものもいくつかあった。
確かに、これなら話さなくても良いかもしれない。歓声多いし、ノリと雰囲気みたいな感じがある。
「さて、それでは準備は良いか」
と、教皇様が手に持っていたグラスを上にあげ、乾杯をしようとしたところだった。
シュン!!
と音を立て、何かが飛んできた。
教皇様の胸目掛け一直線に。
それは矢だった。
俺はすぐさま魔法を使用する。
身体強化バフだ。
とりあえず万能なそれは、矢に対して実に多数の対処法を持っている。
例えば、その強化された胸筋で矢を弾く。
教皇様の服が俺と同じような構造をしているなら、もし仮に貫通してもそこで勢いが殺されて、死に至ることはないだろう。
例えば、強化された反射神経で避ける。
身体強化という名ではあるが、それを十分使えるようにするために様々な機能を強化するため、その強化対象は筋力にとどまらない。
ので、その力をフルに使って回避することが可能だ。
これで大丈夫だと、思いたい。
国のトップに対しての守りは、沢山あって困ることなどないから。
だが、その心配は結論を言えば杞憂だった。
飛んでくる矢は、教皇様の元にたどり着く前に跳ね飛ばされた。
「これが、聖者ロードの力だ」
俺は口を広げるしかなかった。
隣をちらり、とみると、大聖女様が他からは見えないところで何かを伝えようとしていた。
正直何を言おうとしているのかはわからないが、きっと今のは大聖女様がやったということを伝えたかったんだろう。タイミング的に。
これは仕組まれたことなのか、それとも――――創造神教の仕業なのか。俺にはわからないけども、とりあえず教皇様が安全だったことを喜ぼう。
そして周囲はその力を見て更なる歓声に包まれた。
そして次こそ、教皇様が慣れた手つきでグラスを上にあげた。
「七神様のご加護があらんことを。乾杯」
沸き立つ声は、止まらない。
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