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2章

気付いたころには

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 暗い、暗い道を通る。
 アミリアさんの魔力は探知魔法で探せるが、道は反応しないために正規ルートがどれかわからない。
 だから時間もないが、あてずっぽうをするしかなかった。

 目をならす。
 これはバフに頼らずともできる。
 暗闇の中で十秒ほど、目を閉じる。
 そして目を開けるだけであら不思議。ある程度見えるのだ。

「これで――――」

 流石に、あの人たちが光源なしに行けるような場所だろう。松明の燃えカスも、魔法を使える様子もなかった。

 俺は魔力の指す方へどんどんと突き進む。
 まっすぐに、道なりに。
 そしてようやく。

「見つけた!」

「――――ロードさん!? どうしてここに!」

 あぁ、やっと聞けた、と心が一気に落ち着きを見せた。
 どうやら乱暴されることなく、無事に牢につながれていた――――という表現もおかしいか。だが、怪我をした様子もなかった。まぁ怪我をしても自分で治癒するだろうけど。

「アミリアさん。ずっと俺の側にいてください」

「......えっ?」

 心からの言葉をかける。




 ――――試練の時から、もう気付いていた。


 アミリアさんが好きなのだと。


 この数日で惚れるなんて、我ながらちょろい、とも思った。だが数日にしては、俺の中では密度が濃すぎた。十分すぎる経験をした。
 俺はもう、アミリアさんがどこかに行くことが考えられないくらいに、日常にいてほしいと、そう願っている。



 ――――だから、もう危険な目には合わせない。絶対に、離れたりはしない。

 すぐに俺は身体能力をバフで一気に増加。

「うらあああぁぁぁぁああ!!!」

 俺は牢を握ると、そのまま左右に無理やり力を籠める。
 鍵をあの盗賊たちからとることを失念していた。凡ミスもいいところだ。

「うらあああぁぁぁぁあああ!!!」

 しかし、貧弱な肉体に貧弱なバフをかけたところで、その牢はびくともしなかった。
 だが、俺はその程度で、諦められるわけがなかった。
 すぐそこに、手が届く所にいるというのに、俺が助けなくてどうするんだ。

「うるああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

 さらに力が強くなる。
 筋肉が千切れ、再生する。
 いつの間にか、体のリミッターは壊れているようだ。

 バシュ、バチンと血が噴き出し肉が弾ける音が洞窟内に響く。が、すぐに肉体は修復される。
 そしてようやく、牢の鉄棒が歪んだ。

「うらああああああああ!!!!」

 最後の雄たけびだというように声を上げ、俺は無理やり腕を開いた。
 するとバキッ、と軽い音を立てて鉄の棒は折れた。
 やった、と息を吐いた俺のもとに、牢から出たアミリアさんが。

 俺は肉体を治癒する。
 痛みが引き、激痛が走っていた肉体も元通りだ。

「ロードさん」

 アミリアさんは、小さな声を漏らす。

「アミリアさん。愛しています」

 静寂――――

 そして、どちらからともなく、動いた。

「んっ――――」



 唇と唇を接触させる――――キス。



 それはわずか数秒のことだっただろう。
 だが、それは二人にとって、とても重要な数秒間だった。

 唇が離れる。
 二人は見つめあいながら――――その余韻に心を震わせた。



「この責任、取ってもらいますからね?」



「――――取れる責任なら、いくらでも」



 俺はすぐにアミリアさんを抱え上げる。
 そしてバフをかけると、いつもの、貧弱な体で来た道を戻り、洞窟を脱出するのだった。
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