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2章

選択の時

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 馬は駆ける。見慣れない街の道をまっすぐに。

「どうやら、この道なりにずっとまっすぐですね」

「それにしては場所が遠い......」

 俺は光を確認する。
 確かに少しずつ明るくなっているが、このペースだと......

「もう街を出たかもしれない、ですか」

「そうですね。その可能性も十分にあります」

 と、そんな話をしていた時だった。

 爆発音が鳴り響く。
 その場所と思われる場所は――――街の外。

「当たりですね」

「騎兵隊が聖女様を救えるに越したことはないんですが......」

 少しの不安を抱いていた。
 何か、何かが引っ掛かっている。この程度で終わらないと、本能が言っているような気がするのだ。

 そしてその本能を裏付けるように、理性が違和感の正体を突き止めた。

「建物の中に気付かれずに侵入して、聖女様を連れて見つからずに逃げるって、外部の人間......いや、内部の人間でもできるか怪しい......」

「つまり――――聖女様と話しかけても違和感を持たれないくらいの親しい人......だと?」

「その可能性も視野に入れたほうが良さそうだ」

 もしかしたら、俺が今まで出会った人の中に――――

「――――考え事は後だ、すぐに現場に行くぞ!」

「――――はい!」

 動機を考え始めたらキリがないし見落としも出る。直接確かめた方が速い。
 そう思い指示を出すと、馬は一気に速度を上げ、爆発音の聞こえた場所に急行する。




「各員、状況を」

「総隊長殿......現在、洞窟の内部に盗賊を確認」

 そう、冷静に部隊長だろう男が報告を入れる。
 周囲には爆発の跡が。
 どうやら何か爆発物を使われた後のようだ。

「要求は」

「それが......」

 と、そこで大声が奥の方――――洞窟から聞こえる。
 どうやらその盗賊の声のようだ。
 俺は耳を澄まして声を聞いた。

「――――の罪を――――」

「――たなかったの」

「許――、――――」

 さて、反響こそしているが、大体はつかめた。
 ずっと叫んでいる分訳が分からなくなりそうだったが、何度も言ってくれるおかげで確認はできた。

 盗賊というのだから、魔法に対する知識は少ないだろう。という判断の元、俺は探知魔法を使用。

 周囲の魔力を探ると、人数と聖女様の位置がはっきりとわかった。

「何かの罪を許せ、と言っているようだが、何かわかるか」

「いえ、さっぱり......」

 やっぱりか。
 というか、むしろ覚えているほうがおかしいまである。
 というか、向こうもそれがメインで、聖女様は交渉材料以上の価値は無いように見える。


 今が、選択の時。



 聖女様が危険にさらされるというリスクを犯してでも、賊を討伐するか、それとも聖女様の身を一番に、罪を許すか。
 正直、聖女様をすぐにでも救えるなら後者にしていたいという気持ちでいっぱいだ。
 だが、聖者という立場が、それを許さない。

 さて、どうしたものか。


 ――――いや、そうだった。

 選ばないのが、一番だめなんだ。
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