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2章
やっぱり立場故
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皿を返却した後、アミリアさんを探してうろうろと歩いていた。
すると、一人食堂の隅で食事をしているのを見つけた。
「アミリアさん、おひとりですか?」
「そうなんですよ、友達も教会内では少なくてですね......立場故、ですね」
聖女様は皆、立場上でいろいろ抱えているんだろうか。
さっきの聖女様も、出会いが少ない、って言っていたしな。
「そうだ、もう仕立てが終わっていそうな時間帯ですね。まだ試練の途中だと思ってさっきの部屋にいると思うんで、そっちに......道はわかりますか?」
「大丈夫です。それでは行ってきますね」
その手の技術、マッピングとかはあのパーティーで嫌と言うほど言われたから今なお染みつている。
もう癖というレベルで周囲を見ていた結果、今まで通った道は覚えている。
「はい。私も後で向かいますので」
そう言うと、アミリアさんは紅茶をすする。
よく見れば、食事はパンと紅茶という軽いもののようだった。
まぁすぐに来るだろう。と俺は結論を出すと「わかりました」とだけ言い残して部屋を移動した。
「あれ、あの人は――――」
俺が部屋の前に行くと、案内していた女性が手に何かをもって、部屋の中の何かを探していた。
どうやら、入ると試練が始まるから下手に立入できないらしい。
「どうかされましたか?」
「あぁ、すみません......って、試練、すでにクリアされていたんですか」
驚きの顔を隠せずにいるその人を見ながら、俺は少し考察をしていた。
さっきのアミリアさんやこの女性の言動を見るに、試練にかかる時間には個人差があるらしい。
「そうですね。ちなみに一番早くクリアした人って誰なんですか?」
興味本位の質問だった。
そしてその反応から、規格外ではないことが確定した。
「十分早いんですが......確か、今の大聖女様......教皇の次に偉い方が、二日と半分だったかと」
「そうですか」
大聖女様。
そんな存在までいたのか、と俺は驚きを隠せない。
恐らくその大聖女様が一人で、国の行事とかをやっているんだろう。
にしては、噂にならないのが不思議なものだが......その違和感は埋めておく。噂なんてそんなものだ。
「それで、その手に持っているものは......」
「あぁ、そうでした。式用の服です。結構早く終わるだろうと思われていたんですけど、その想定よりも早く終わってしまったので、今晩くらいまで待機になりそうです」
俺の今後の予定と共に、女性が手に持っていた神官服を受け取った。
結構な重量がある。まともに戦える気がしない。
「ちなみに有事の際は、上着を脱ぎ捨てるだけで軽量になる仕様付きです」
なるほど、まぁ儀礼用の服に機能性を求めている時点でダメなのはわかっていたが、もし襲撃されても大丈夫なように考えられていた、ということか。
「そうでしたか。これはご丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。実はこれ、ギルド所属の人だと落ち着かないだろう、って一昔前につけられたものだったりするんですよ」
「私以外にも、ギルド所属の人がいたんですか」
「そうですね。まぁ、近年どころか歴史で数人ぐらいの希少さですし、襲われることなんてほとんどないんで、半ば形骸化していたものだったりするんですけど......」
なるほど、そんなものなのか。
と感嘆していた時、足音が聞こえる。
「あら、ロードさん。服は貰ったんですね」
「あ、はい」
「これは聖女様。それでは私はこれで失礼しますね」
と、聖女様―――アミリアさんがが来たからだろう、一礼をして女性は立ち去った。
「どんな話をされてたんですか?」
「この服が、軽量化できる話ですかね?」
「なんですか、それっ」
クスリ、とアミリアさんは笑う。が、長い間、ずっと笑っている。
どうやらツボに入ってしまったようだ。
その機能を知らない、という意味ではなく、なんでそんな話をしているのか、という意味だろう。
ツボがわからないなぁ、と思いながら、結局その笑いが収まるまで部屋の前で立って待つのだった。
すると、一人食堂の隅で食事をしているのを見つけた。
「アミリアさん、おひとりですか?」
「そうなんですよ、友達も教会内では少なくてですね......立場故、ですね」
聖女様は皆、立場上でいろいろ抱えているんだろうか。
さっきの聖女様も、出会いが少ない、って言っていたしな。
「そうだ、もう仕立てが終わっていそうな時間帯ですね。まだ試練の途中だと思ってさっきの部屋にいると思うんで、そっちに......道はわかりますか?」
「大丈夫です。それでは行ってきますね」
その手の技術、マッピングとかはあのパーティーで嫌と言うほど言われたから今なお染みつている。
もう癖というレベルで周囲を見ていた結果、今まで通った道は覚えている。
「はい。私も後で向かいますので」
そう言うと、アミリアさんは紅茶をすする。
よく見れば、食事はパンと紅茶という軽いもののようだった。
まぁすぐに来るだろう。と俺は結論を出すと「わかりました」とだけ言い残して部屋を移動した。
「あれ、あの人は――――」
俺が部屋の前に行くと、案内していた女性が手に何かをもって、部屋の中の何かを探していた。
どうやら、入ると試練が始まるから下手に立入できないらしい。
「どうかされましたか?」
「あぁ、すみません......って、試練、すでにクリアされていたんですか」
驚きの顔を隠せずにいるその人を見ながら、俺は少し考察をしていた。
さっきのアミリアさんやこの女性の言動を見るに、試練にかかる時間には個人差があるらしい。
「そうですね。ちなみに一番早くクリアした人って誰なんですか?」
興味本位の質問だった。
そしてその反応から、規格外ではないことが確定した。
「十分早いんですが......確か、今の大聖女様......教皇の次に偉い方が、二日と半分だったかと」
「そうですか」
大聖女様。
そんな存在までいたのか、と俺は驚きを隠せない。
恐らくその大聖女様が一人で、国の行事とかをやっているんだろう。
にしては、噂にならないのが不思議なものだが......その違和感は埋めておく。噂なんてそんなものだ。
「それで、その手に持っているものは......」
「あぁ、そうでした。式用の服です。結構早く終わるだろうと思われていたんですけど、その想定よりも早く終わってしまったので、今晩くらいまで待機になりそうです」
俺の今後の予定と共に、女性が手に持っていた神官服を受け取った。
結構な重量がある。まともに戦える気がしない。
「ちなみに有事の際は、上着を脱ぎ捨てるだけで軽量になる仕様付きです」
なるほど、まぁ儀礼用の服に機能性を求めている時点でダメなのはわかっていたが、もし襲撃されても大丈夫なように考えられていた、ということか。
「そうでしたか。これはご丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。実はこれ、ギルド所属の人だと落ち着かないだろう、って一昔前につけられたものだったりするんですよ」
「私以外にも、ギルド所属の人がいたんですか」
「そうですね。まぁ、近年どころか歴史で数人ぐらいの希少さですし、襲われることなんてほとんどないんで、半ば形骸化していたものだったりするんですけど......」
なるほど、そんなものなのか。
と感嘆していた時、足音が聞こえる。
「あら、ロードさん。服は貰ったんですね」
「あ、はい」
「これは聖女様。それでは私はこれで失礼しますね」
と、聖女様―――アミリアさんがが来たからだろう、一礼をして女性は立ち去った。
「どんな話をされてたんですか?」
「この服が、軽量化できる話ですかね?」
「なんですか、それっ」
クスリ、とアミリアさんは笑う。が、長い間、ずっと笑っている。
どうやらツボに入ってしまったようだ。
その機能を知らない、という意味ではなく、なんでそんな話をしているのか、という意味だろう。
ツボがわからないなぁ、と思いながら、結局その笑いが収まるまで部屋の前で立って待つのだった。
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