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2章
金欠
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朝が来た。
結局あの後日が昇ってすぐ辺りまではずっと、空を見上げて考えていた。
だが、一夜で決められるほど、その問題は軽くはなかった。
正直、今までの俺ならリスクを取らないためにも、聖女様の願いを断っていただろう。
だが、数日間過ごして、聖女様に――――きっと、惹かれているんだろうと、そう思ってしまった。
確証はない。だが、心がそうだと、言っているような気がしただけだ。
ほんのひと時の感情で、これからの決断を間違えないことを祈るばかりだ。
「ロードさん。昼に出発しますので、それまで治療をお願いします」
「あぁ、はい、わかりました」
俺は手に持っていた荷物を下ろし、部屋を出た。
受付にいるフィアさんに会釈をする
そして怪我人が集められた部屋に入った。だが、そこにいたのは既に怪我が完治した人だけ。
俺の出番はなさそうだ。
「フィアさん、いつもってこんな感じなんですか?」
俺は部屋から出て、暇そうにしていたフィアさんに声をかけた。
「そうですね。ロードさんが来たころはもうすでに多かったので少なく感じるかもしれませんけど、これが普通ですね」
確かに、俺は今少ないと感じていた。
これも女の勘というやつなのだろうか。
「少ないに越したことはないですよ、ロードさん」
フィアさんに軽く肩を叩かれた。「そうですね、平和で何より」と笑いながら返して――――平和、という単語でだろう、聖女様への返事を考えてしまった。
「どうしたんですか? 元気なさそうですけれど」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
女の勘は侮れない。
聖女様の一件は、ほかの誰にも話せない。もちろん大きく広がってしまうリスク、そして話される側まで危険に巻き込まれるリスク。面倒ごとが、多すぎる。
「そうですか。何かあったら、すぐ相談するんですよ?」
「えぇ、分かってますよ」
まだ何も起こっていないからな。と自分の中に言い訳をする。
部屋に戻る。と、聖女様は「やっぱり、少なかったですか」と苦笑いをした。
どうやら、先日までの大変さが染みついていたのか、怪我人が大量にいるから人員補充を、という考えが抜けきっていなかったようだ。
と、そうだ。旅行――――ではないけれど、他国に行くなら聞かないといけないことがある。
「給料って、どうなってるんですか?」
「えぇっと......そうですね」
聖女様は口を濁らした。
俺の今の手持ちを考えると、延滞されてる総額とか、少しでも手持ちが欲しいものだ。
そう思ったが、思わぬ一言――――場合によっては、夜の一件よりも驚く事実を告げられた。
「実は、今の治療院にはお金がほとんどありません」
「えっ?」
俺は思わず素が出てしまった。
が、それほどに衝撃を受けてしまった。
「あのギルドのクエストも、宗教的効果が大きかったのでこっちで払いたかったのは山々なんですけど......」
「......ちなみに、今全財産は?」
「金貨......一枚」
そう言って聖女様はポケットから、金貨一枚を取り出した。
どうやらそれが――――全財産。
「治療費、結構もらってましたよね? 怪我人も多かったし、儲け時だったんじゃ」
「肯定したくない言い方をやめてください......事実である当たり、胸が苦しくなります」
どんどんと聖女様は下を向く。
事実なら、金はたんまり......とは言わないが、十分にあるだろう。
ならば何故。
「えー、実は重傷者には金貨五枚、軽症者は銀貨三枚を定額としてたんですけれど、最近は後払いで先に治療しないといけないほどに重傷者が多くて......」
「あぁ......」
もうそこからは想像できた。
つまり、先に治療した結果、お金が払えない事態が発生している、ということだろう。
まぁあの荒くれものの集まった集団に、いきなり金貨五枚を出せと言ったところで無理だろう。おそらくその日のうちに酒に消えているだろう。
そしてすっぽかされた結果、治療院の持つ金が無くなってしまったと。
「転移魔法陣は大量の魔力を消費するんで、出費もかさんで......教皇様に申請すればすぐにもらえると思うので、もう少し、もう少し待ってください」
「あぁ、分かりました、なんかすみません」
つい謝ってしまった。
が、それくらい急にげっそりとしてしまった聖女様を見ると、もう可哀そうでという気持ちでいっぱいになってしまった。
「ギルドに行ってきます、治療した人の名簿とか、あります?」
「......受付に置いてあると思いますよ」
苦しそうに、絞り出されたような言葉を聞いて、すぐに俺は部屋から退室した。
「フィアさん」
「あ、ロードさん。どうされましたか?」
「治療した人の名簿ってありますか? ......治療費を払えてない人がたくさん載ってるやつ」
するとフィアさんがそんな顔をするのか、というほどの苦い顔を浮かべた。
「これですね......どうするつもりなんですか?」
「ちょっと催促に」
俺はその名簿を受け取ると、ギルドに足を運んだ。
結局あの後日が昇ってすぐ辺りまではずっと、空を見上げて考えていた。
だが、一夜で決められるほど、その問題は軽くはなかった。
正直、今までの俺ならリスクを取らないためにも、聖女様の願いを断っていただろう。
だが、数日間過ごして、聖女様に――――きっと、惹かれているんだろうと、そう思ってしまった。
確証はない。だが、心がそうだと、言っているような気がしただけだ。
ほんのひと時の感情で、これからの決断を間違えないことを祈るばかりだ。
「ロードさん。昼に出発しますので、それまで治療をお願いします」
「あぁ、はい、わかりました」
俺は手に持っていた荷物を下ろし、部屋を出た。
受付にいるフィアさんに会釈をする
そして怪我人が集められた部屋に入った。だが、そこにいたのは既に怪我が完治した人だけ。
俺の出番はなさそうだ。
「フィアさん、いつもってこんな感じなんですか?」
俺は部屋から出て、暇そうにしていたフィアさんに声をかけた。
「そうですね。ロードさんが来たころはもうすでに多かったので少なく感じるかもしれませんけど、これが普通ですね」
確かに、俺は今少ないと感じていた。
これも女の勘というやつなのだろうか。
「少ないに越したことはないですよ、ロードさん」
フィアさんに軽く肩を叩かれた。「そうですね、平和で何より」と笑いながら返して――――平和、という単語でだろう、聖女様への返事を考えてしまった。
「どうしたんですか? 元気なさそうですけれど」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
女の勘は侮れない。
聖女様の一件は、ほかの誰にも話せない。もちろん大きく広がってしまうリスク、そして話される側まで危険に巻き込まれるリスク。面倒ごとが、多すぎる。
「そうですか。何かあったら、すぐ相談するんですよ?」
「えぇ、分かってますよ」
まだ何も起こっていないからな。と自分の中に言い訳をする。
部屋に戻る。と、聖女様は「やっぱり、少なかったですか」と苦笑いをした。
どうやら、先日までの大変さが染みついていたのか、怪我人が大量にいるから人員補充を、という考えが抜けきっていなかったようだ。
と、そうだ。旅行――――ではないけれど、他国に行くなら聞かないといけないことがある。
「給料って、どうなってるんですか?」
「えぇっと......そうですね」
聖女様は口を濁らした。
俺の今の手持ちを考えると、延滞されてる総額とか、少しでも手持ちが欲しいものだ。
そう思ったが、思わぬ一言――――場合によっては、夜の一件よりも驚く事実を告げられた。
「実は、今の治療院にはお金がほとんどありません」
「えっ?」
俺は思わず素が出てしまった。
が、それほどに衝撃を受けてしまった。
「あのギルドのクエストも、宗教的効果が大きかったのでこっちで払いたかったのは山々なんですけど......」
「......ちなみに、今全財産は?」
「金貨......一枚」
そう言って聖女様はポケットから、金貨一枚を取り出した。
どうやらそれが――――全財産。
「治療費、結構もらってましたよね? 怪我人も多かったし、儲け時だったんじゃ」
「肯定したくない言い方をやめてください......事実である当たり、胸が苦しくなります」
どんどんと聖女様は下を向く。
事実なら、金はたんまり......とは言わないが、十分にあるだろう。
ならば何故。
「えー、実は重傷者には金貨五枚、軽症者は銀貨三枚を定額としてたんですけれど、最近は後払いで先に治療しないといけないほどに重傷者が多くて......」
「あぁ......」
もうそこからは想像できた。
つまり、先に治療した結果、お金が払えない事態が発生している、ということだろう。
まぁあの荒くれものの集まった集団に、いきなり金貨五枚を出せと言ったところで無理だろう。おそらくその日のうちに酒に消えているだろう。
そしてすっぽかされた結果、治療院の持つ金が無くなってしまったと。
「転移魔法陣は大量の魔力を消費するんで、出費もかさんで......教皇様に申請すればすぐにもらえると思うので、もう少し、もう少し待ってください」
「あぁ、分かりました、なんかすみません」
つい謝ってしまった。
が、それくらい急にげっそりとしてしまった聖女様を見ると、もう可哀そうでという気持ちでいっぱいになってしまった。
「ギルドに行ってきます、治療した人の名簿とか、あります?」
「......受付に置いてあると思いますよ」
苦しそうに、絞り出されたような言葉を聞いて、すぐに俺は部屋から退室した。
「フィアさん」
「あ、ロードさん。どうされましたか?」
「治療した人の名簿ってありますか? ......治療費を払えてない人がたくさん載ってるやつ」
するとフィアさんがそんな顔をするのか、というほどの苦い顔を浮かべた。
「これですね......どうするつもりなんですか?」
「ちょっと催促に」
俺はその名簿を受け取ると、ギルドに足を運んだ。
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