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161・ゲーセンダンジョン・十三・十四店目!

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「ふうっ。
 こんなものかな」

道路にして四車線くらいに広くした地下通路……
その中央で汗をぬぐう。

「お疲れ様、ヒロトお兄ちゃん」

「ヒロト、お疲れ」

リナとメルダが俺にねぎらいの声をかけてくる。

ここは、ダンジョン【魔境の森】から、
エンテの街まで延びている道。

その両側に、複製で休憩エリアを設置する作業を
行っていた。

「通路が3つに増えたからのう。

 しかしまあ、これだけあれば問題あるまい」

「通路が増えればその分、設置出来る
 休憩エリアも増えますからね」

妻たちが言う通り―――
以前は【魔境の森】から【エンテの街地下】に
繋がる一本だけだったのが、

【エリック家地下】
【冒険者ギルド支部地下】

までの二つの通路が追加されたのである。

「エリックさんはもう眷属になっていたから
 スムーズに話が通ったけど……」

「冒険者ギルドの方は面食らったでしょうね」

ここに来て、ダンジョンを二つ新規に
追加したのは理由がある。

王都にいる勇者たちから緊急連絡があり―――
何と聖教会が独断で魔族領へ侵攻。

侵入させないための手は打っていたものの、
急遽きゅうきょ、十万規模の人間の避難先を用意しなければ
ならなくなったのである。

「アンリとやら―――
 あの飲食物をいつでも用意出来るコンビニと、
 大浴場を提供すると言ったら飛び付いて
 来たのう」

「確かダンジョン本体は、『体感スポーツ系』に
 したんでしたっけ。

 まあ美味しい物を食べるとどうしても
 体重が……モゴモゴ……」

メルダとリナが【冒険者ギルド支部地下】の
作成経緯について語る。
あまりこちらには突っ込まないでおこう。

「おいおいやるつもりではあったけど、
 こうも早く暴走してくれるとは思わなかった。

 ……メルダ、聖教会が魔族とか君のお兄さんに
 勝つ可能性ってある?」

「無いな。

 勇者すらいないのでは話にもならん。
 アタシという歯止めもいないのでそりゃもう
 一方的になるであろう」

猛禽類のような瞳をした少女が、呆れるように
即答する。

「まあやるべき事はやった。
 後は魔族がいつ攻め返してくるかだな」

メルダのように大人しく防衛に徹してくれれば
いいけど―――
彼女の兄はかなり好戦的だと聞く。
希望的観測は捨てるべきだろう。

「でもヒロトお兄ちゃん。

 一直線の通路の両側にだけ作るんじゃ
 なくて……
 枝分かれさせるのはダメだったの?」

現状、それぞれのルートの両側に休憩エリアを
設置しただけ。
効率を考えれば、横にもいくつか通路を作り、
そこでさらに両側に作るのが最適なのだが、

「あくまでも避難用だし、それに行き止まりを
 作るのは精神衛生上良くない気がして。

 あといざという時、どっちに逃げればいいのか
 シンプルにわかるというのは重要だよ」

少なくとも一本道なら、どちらに向かえばいいか
知るだけで済むからな。

「まあ基本、永久ループは絶対に破られない
 前提で作られているけど……

 ずっと地上にいられると身動き取れないし、
 どこかのタイミングで打開策を講じる必要が
 あるけどね」

俺は大きく伸びをすると、

「じゃあちょっと【魔境の森】にも
 寄っていこうか。

 この前引き取った子供たちも気になるし」

そう言って俺はキックボードに片足を乗せる。

これはドラッグストアの景品交換用の品として
あったもので―――
ダンジョンとはいえ、ホテルの廊下と同様の
通路に、これは最適であった。

俺に続き、リナとメルダもそれぞれ乗り込み、

「そうですね。
 仲良くやっているとは聞いてますけど……

 お兄ちゃんの手料理でもあげれば、
 喜ぶと思いますよ」

「アタシは甘味がいいのう。
 ティータイムとしゃれこもうぞ」

こうして俺たちはいったん、本拠地である
ダンジョンへと向かった。

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