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139・カミュ王女Side14
しおりを挟む「エンテの街での手掛かりも無し……か。
しかもハーレイドッグ子爵家、冒険者ギルド
相手にいざこざを起こしたと。
理由は何だ?」
クレイオス王国王都・ネーヴェ―――
その王宮で、
王女であるわらわは面白くない報告を
受けていた。
「そ、それが……
エンテの街の冒険者ギルド支部に、
黒髪黒目の女の冒険者がいたとの事で。
か、関連性を調べるためではないかと」
わらわは大きく息を吐くと、跪いている兵士は
肩を一度ビクンと震わせる。
「まあそなたの責任ではない。
ハーレイドッグ子爵家、
それに冒険者ギルド支部には―――
後で詫びの書面と品を届けよう。
下がってよい」
「ハハッ!
で、ではこれにて……!」
兵士が退室した後、一人部屋に残ったわらわは
大きくため息をつく。
探していたジンム・ヒロトは黒髪黒目の少年。
そして報告書にあった冒険者とは、
当然成人の―――
それも女性。
何をどうすれば間違えるのだ?
黒髪黒目であれば、年齢も性別もお構いなし
なのか?
「打つ手打つ手が裏目に出る……
これも天罰というところか」
唯一の希望は、子供のものと思われる遺体や
遺品が見つかっていない事だ。
グロンソンという奴隷商についても、
彼らの遺品は確認されたというが、
そやつらが連れていた商品である子供たちの
遺留品は、全く無かったとの事。
「いくら何でも、誰一人として子供の痕跡が
無い、という事があり得るのだろうか」
自問自答のように、そして自分に言い訳
するかのようにつぶやく。
ハーレイドッグ子爵家が子息の遊び相手として、
身寄りの無い子供たちを雇ったというが、
ただその中にも黒髪黒目の少年はおらず、
これで八方ふさがりになってしまった。
「しかし、言い方を変えれば死んだ証拠が
無いとも言えるし……
まだどこかで生き延びている可能性も」
と、そこにノックの音がして、わらわは思わず
身構える。
「誰だ?」
「勇者レオ様の担当の者です。
言伝がございまして―――」
「は、入れ!」
慌てて中に入るよう促すと、すぐに
報告させる。
「彼が?
何か言ってきたのか?」
その女性を目の前にすると、努めて冷静を装う。
「はい。
何でも、女性騎士団に呼ばれたとかで……
それでカミュ王女様に行ってもいいのかどうか
聞いてきてくれと頼まれまして」
女性騎士団が?
確かに彼は戦闘向けの恩恵を持っているけど、
手合わせでもするつもりなのだろうか。
「彼一人でか?」
「いえ、他の勇者の方々も同行するそうです。
女性陣も含めて」
うーむ……
男の騎士団が訓練がてら呼ぶ事はあったが、
女性騎士団の方でも興味を引いたのか?
それに、彼一人で行くので無ければ―――
色目を使われる事も無いだろうし。
「……っ!」
わらわはブンブンと首を左右に振って、
余計な念を振り払い、改めて問う。
「女性騎士団は、どんな理由で彼らを
呼んだのだ?」
「魔族領へ攻め込んで戦果を挙げた時の様子を
知りたいと―――
出来れば模擬戦も踏まえて教えて欲しいとの
事でした」
なるほど。
それならレオ様だけではなく、他の勇者も
呼んだというのは理解出来る。
それに女性陣も付き合うのであれば、聖女である
ユウコも参加するはず。
彼女がいれば、多少のケガは問題あるまい。
「勇者たちに取っても、気晴らしになるかも
知れぬしな。
許可する、と伝えよ」
「はっ!」
そして彼女が退室すると、わらわは精神的な
疲れを休めるよう、両目を閉じた。
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