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51・地下道を作ろう

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「とゆーわけで……
 ゆくゆくは人間・魔族問わず商売をしていく
 事になると思います。

 ですので、君たちは―――
 この施設の設備は元より、商品を知って
 詳しく説明できるようになってください」

いつもの朝食を済ませた後、団体部屋で……
俺は子供たちを前に今後の方針を説明した。

「「「はーいっ」」」

元気よく返事が却ってくる。
次いで魔狐マジカルフォックス銀猫シルバーキャット
姿になっているパトラさん・コマチさんが
前足を上げて、

ぬしよ、具体的にはどういたします?」

「それにまだ小さい子もいるし、このダンジョンに
 ある物全部を説明って、厳しくないですかー?」

まあ言われてみればその通りだ。
ただその辺りはおいおい覚えていけば……
と話そうとすると、隣りにいたリナが先に
口を開き、

「まだ先の話だと思いますし、その辺は
 慣れていけばいいかと。

 毎日している食事すら、まだまだ未経験の
 物が多いんですから」

言いたい事を全て言われてしまった。
よく考えがわかるなーと思っていると、薄黄色の
セミロングの髪をした彼女は微笑んで返してくる。

まるで、『妻ですもの』とでも言いたげに―――

「そうだね。
 それに、まだ向こうでの施設を全部再現した
 わけじゃない。

 ドラッグストアや喫茶店もあるし―――
 とにかく今は、何でも経験してみてくれ」

「「「はーい!」」」

こうして説明はいったん終わり……
子供たちはパトラ組・コマチ組に別れ―――

一方は日光浴のために散歩へ、もう一方は
ダンジョンの地下、各階のゲームセンターへと
潜っていった。



「う~ん」

「どうしたの? ヒロトお兄ちゃん」

そして俺とリナは管理者部屋に移動し……
正式に妻となった彼女は常に俺のそばに付き従い、
いろいろとサポートしてくれていた。

「ちょっと自分の管理ptポイントとにらめっこしてた。

 あの冒険者さんたちを一時眷属にしていた事で、
 またレベルも上がったみたいなんだけど」



――――――――――――――――――――――

ダンジョン管理者:ヒロト
レベル:11

称号:『異世界からの来訪者』『召喚されし者』
『弱き者の庇護者』『帝国を目指す者』

スキル『再現/07』『勇者/06』

ダンジョン:
・地下一階『メダルコーナー』
・地下二階『体感スポーツ系』
・地下三階『体感レーシング・シューティング系』
・地下四階『各ビデオゲームフロア』
・地下五階『コアルーム』

維持管理pt:1日/180
眷属pt:17名
(眷属1人当たり1日15pt×17
=255pt加算)

現在管理pt:28,900

――――――――――――――――――――――



つまり今は、何もしなくても255―180=
75ptが1日でプラスされる。

ここ最近は魔物生成に加え、ダンジョン拡張、
それにコンビニ再現などで使いまくっていたけど、
何とか落ち着いてきていて……

そこに来て今度の『拠点』計画だ。

エンテの街でクラークさん・ミントさんに、
拠点となる店なり宿屋なり買い取ってもらい、

そこと地下道をつなげる事で―――
ダンジョンこことのビジネスをスムーズにいかせる
事が目的。

それが地下帝国建設への第一歩となるのだ。

「それに、いくら魔物けの匂い袋を複製
 出来たって……
 あの2人にいつも魔境の森を突っ切って来て
 もらうのはちょっと」

「そうだね。
 ここにいると忘れちゃいそうだけど、
 一応危険なんだよね、この辺り」

子供たちを外に出すのだって、あの二人が
いなければ、決断はしていなかっただろう。

「でもヒロトお兄ちゃん。
 地下道なんて……
 本当に出来るの? そんな事が。

 パトラさんやコマチさんからも話は聞いて
 ましたけど」

今一つ実感がわかない、というところか。
俺の世界だと地下街やトンネルは普通に
あったが、こちらには無いものだしなあ。

「あの2人も言ってただろ?
 確かに、ダンジョンの階層を新しく作ったり、
 拡張するのは管理ptを大量に消費するけど……

 例えば部屋と部屋をつなげる通路や、別の階に
 行くための階段とかは―――
 ほとんど管理ptを使わないんだ」

もちろん、罠や魔導具を設置する場合は別だが、
基本的にただの通路や階段は、『ダンジョン』の
機能に入らないらしい。

この『抜け穴』を利用して、今回の計画を
思いついたのだ。

何でこんな事になっているのかと、俺も疑問に
思ったのだが、

パトラさんやコマチさんの話によると、
ダンジョンというのはそもそも、侵入者をいかに
効率よく取り込むか、そのために作られるもので
あって―――

俺のように、単に地下道や通路として使う方法は、
想定されていなかったのでは、という事だった。

ちなみに、今地上階のホテルになっている部分は、
管理者権限で出入りを制限出来るが……
本来、こういう本拠地というのはコアルームの
手前か同じ階に作るべきもの、という事。

おかげで今のダンジョンは―――
入り口が地上階にあるため、防御に徹するので
あれば、ほぼ完ぺきなのだという。

「もちろん、地下道の方は手前に小さな部屋を
 作って、入って来る人間を選別させるくらいは
 するよ。

 またあの2人が帰ってくれば、あとどれくらいで
 拠点が買えるかわかるだろうし」

まさか一回の売買で、拠点が準備出来るとは
思わないが―――
おおよその計算はつくだろう。

話が一段落すると、リナは体を密着させてきて……

「ねーねー、ヒロトお兄ちゃん。
 次、これなんかどう?
 パトラさんっぽくない?」

見るとリナは、魔法使いのような衣装を
手にしていて―――

もともと家族連れも想定していた施設だったので、
浴場やカウンター奥の倉庫スペースにも、子供用の
コスプレ衣装が保管されており……
最近彼女はそういう『プレイ』にはまっていた。

「それかあ。
 でもパトラさんのは着た時に胸を強調するような
 感じで、リナは……」

素直に感想を述べている途中で、地雷を思いっきり
踏み抜いた事に気付き口を止めるが、

「……今……何つった……?」

あれ、おかしいなあ。
室内なのに夜空が……

ん? 北斗七星の横に星なんてあったっけ?

その後俺は、いろいろな意味で―――
リナに『絞られる』事になった。


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