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39・カミュ王女Side04
しおりを挟む「なるほど。
まずはその魔王メルダってヤツの勢力を
削りゃいいのか」
「はい……!
今のところ、我がクレイオス王国へ領土的野心を
露にしている魔族は、そこが最有力―――
どうか勇者レオ様の恩恵、
軽減と強化上昇を持って、
我が国の脅威を退けてくださいませ」
わらわは二人きりとなった執務室で、
勇者レオ・シマムラに『お願い』をしていた。
あの濃いめのブロンドはどうやら染めて
いただけのようで……
外見は他の勇者と何ら代わり映えは無く、
むしろ一緒にいたルキア様の方が良い男に見える。
「王女様の頼みであればどこへでも―――
だけど、他の勇者たちはどうするんだ?」
そこでわらわはうつむき加減になって語る。
困り果てた弱々しい女を演じて……
「その、レオ様と他の勇者様は、近頃―――
関係が上手くいっていないと聞いております。
不慣れな世界で、わらわたちの不手際もあり、
何かご不興を買ってしまい、
それが影響しているのではないかと。
何とお詫びしたら良いのか……!」
目に涙をため、上目づかいで勇者を見上げる。
「いや、王女様が責任感じる事じゃねーよ。
俺が調子に乗り過ぎたっていうのもあるし。
それにアイツらも微妙な恩恵で、不安になって
いたのかも知れねーしさ」
「それは……
確かに、男性の勇者様方の恩恵は目を見張る
ものでした。
ですが、女性の方々は―――
正直、数さえいれば我が国の方でも揃えられる
能力でしたので。
こちらとしても、召喚しておきながら……
扱いに困っているというのが現状なのです。
本当に、申し訳ございません……」
困惑した顔を装い、軽く頭を下げる。
「いいっていいって!
王女様が謝るような事じゃねーんだから!
だがよ、それなら―――
いっそ女だけでも元の世界へ帰してしまった方が
いいんじゃねーのか?
俺たちと一緒に来ていたガキはもう、
帰してやったんだろ?」
「それも、聖教会や王族との会合で何度も、
わらわは申し上げました。
ですが、一度くらいは何かの役に立ってから
せよと―――
そう言われたらわらわが中心となって召喚した
手前、何も言い返せず……
今度の魔王メルダ軍との戦いは、男性の方々とは
別途で、後方地域を回って頂きたいと思って
おります」
そこでわらわは大仰に一息ついて、
「レオ様を始めとして、男性の勇者様には最前線の
一端で戦ってもらう事になります。
全てこちらの都合ですが、なにとぞ……!」
「あー、いいって事よ。
むしろ女を最前線に連れて行くのは、俺としても
抵抗があるからな。
それに後方なら、彼女たちもギャーギャー
言わねえと思うし」
レオ様の言葉を聞いたわらわは、ホッとした
表情を作り―――
「そう言って頂けるとわらわも助かります。
でも、レオ様」
体を彼に密着させ、胸を押し付けるようにして、
「あ、あん?」
「これは、わらわたちの身勝手な都合であり
お願いです。
レオ様が体を張って、命まで賭ける事では
ありません。
今はただ、王女としてではなく―――
1人の女として言わせてくださいませ。
どうか、ご武運を……
いえ、決してケガなどしないように」
それを聞いた彼は顔を赤くさせ、視線を逸らす。
思ったより初々しい反応だのう。
そういえばこの者どもの世界では、成人は
ニ十才……
つい最近十八才になったそうだが―――
そういう意味ではまだまだ子供なのか。
これは思ったより懐柔しやすそうだが、
勘違いされても厄介だし、この辺にしておくと
しよう。
わらわは体を離すと、恭しく礼をして、
「それではこれで―――
どうか戦いの時まで、英気を養って
くださいませ」
「……ああ」
レオ・シマムラも返礼し、そこで勇者様は
退室して―――
わらわと別れた。
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