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28・その頃メルダは01

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「ぬあぁあああ!!
 まだヒロトは見つからないのー!?」

ゴシックロリータ風の黒いドレスに身を包み、
縦線の猫のような瞳をした―――
赤い長髪を持つ少女が、手足をジタバタさせる。

「お、落ち着いてくだされ、おさ

 クレイオス王国が勇者を召喚したという
 事もあり、捜索の手が限られておりまして」

城と思われる施設の中で……
いかにも長老といった年齢の者たちが、彼女を
なだめるように取り囲む。

「だからアイツらが横取りしたに違いないのー!!

 アタシの再構築が終わった瞬間、
 召喚術を使われて、そっちに……!」

「しかし、王国が召喚した勇者は―――
 少なくともメルダ様の言われる、少年は
 いなかったと」

現実にヒロトは、クレイオス王国に召喚されたの
だが……
その後追放、そして未遂だが処分された事までは、
彼女も知る由も無く―――

「とにかくヒロトを何が何でも探して!
 ダンジョン管理者ではあるけれど、肝心の
 ダンジョンを作るまでは、ただの子供くらいの
 戦闘力しか無いし」

「で、ですが―――
 今はそんな者より、召喚された勇者たちの
 対策が必要かと思われますが」

魔族としては、現時点で見つかってもいない、
戦力ゼロのヒロトより……
勇者たちの脅威が優先事項。
その正論にメルダは反論出来ず、

「んぐむむむ~……
 わ、わかってますよそんな事は!

 いったんそちらは後回しにするわ。
 ただ、人間の奴隷商をあたってもらえる?」

「奴隷商、ですか?」

長老らしき人物の一人が首を傾げる。

「もし王国が勇者としてヒロトを召喚して
 いないんだとしたら―――

 別の場所に召喚されたのかも知れない。
 そんで奴隷商に捕まっている可能性があるわ。

 顔はかなーり良く再構築したんで」

「メルダ様、メンクイですからなあ。
 それならばすぐに殺されている事も
 なさそうですが。

 わかりました、そのように手配を」

その話を聞いて、いそいそと連絡役の衛兵らしき
魔族が、広い謁見の場から退室する。

「して、勇者たちの事ですが」

「そっちも情報収集に努めて。
 いきなり攻め込んでくる事は無いと思うけど……

 特に『恩恵ギフト』は何が何でも
 調べてちょうだい。
 それがわかるまで、うかつに手を出すのは
 禁じるわ」

長老と思しき複数の魔族が頭を下げ―――
広間から退室した。

後には一人、メルダが残され……

「はぁ~あ、も~……
 どうしてあっちも同じような事考えんのよ。

 もしちゃんとダンジョン作っていれば、
 連絡来るはずなんだけど……
 それも無いって事は望み薄いし。

 まあ、ヒロトが人間どもの手に渡らなかった
 だけでもよしとするかぁ~」

大きなため息とともに魔族の長・メルダは、
自分が座っている背もたれに背中を押し付けた。


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