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◆chapter1◆幼少時代編

パパの親友の子供④

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(いや、そんな困った奴だなって顔してるけど、パパも相当だからね!?)

 自覚が無いのかな。……恐ろしい。

 とはいえ、子供を愛していないような親よりも、親馬鹿と言われても子供を愛している親の方が何百倍も良いけどね。

 もちろん、余所様に何かをやらかしてしまうモンペに進化させないように気を付ける必要はあるんだけど。でも、何だかんだって、うちのパパはその辺りの加減は絶妙なんだと思うんだよね。俺にデレデレしすぎていると、さすがに配下の魔族たちから呆れたような目で見つめられてることもあるけれど、かといって尊敬のまなざしがなくなる訳じゃない。

 贔屓目に見ても、パパは結構人気がある魔王だと思う。

「……無礼な」

「!?」

 吐き捨てるような重低音の声が響いて、俺はパパの膝の上で飛び上がりそうになった。決して大きな声ではなかったけれど、威圧感が半端ない。パパが抱きしめてくれていなければ、泣いていたかもしれない。

 声の主は、パパの親友三人目――不死族の有力貴族の一人であるフェルナンド様だった。冷たい凍えるような鋭い目で、忌々しそうに●●様を見ている。尖った耳、銀色の長い髪と一見すると人間やエルフに近い特徴の容姿だが、フェルナンド様はあの吸血鬼だ。

 しかも、普通の吸血鬼ではない。真祖――つまり、吸血鬼の中でも頂点に位置する特別な存在として知られている。パパや兄上たちの話題に何度かあがっていたので、以前から名前やどういう魔族なのかふんわりとは知っていたけれど……。うん。怖いくらいの凄まじい美形だった。

 パパたちも綺麗だけど、何だろうな。闇の帝王感はフェルナンド様の方がある気がする。その横には、フェルナンド様をそのまま小さくしたような美少年が立っている。彼の名前は、ロートレックくん。フェルナンド様の一人息子だ。

 ロートレックくんのことも、パパから少し話を聞いていたので、他の二人よりはちょっとだけ詳しいんだよね。俺。上位種と呼ばれる魔族の中でも素晴らしい才能を持っている天才で、周りから期待されているんだって。

「お招きいただき、感謝いたします。フェルナンドが嫡子、ロートレックと申します」

 そう言って流麗な仕草で一礼する様は、子供とは思えないほどに決まっていた。他の二人が子供らしい可愛さがあったのに対して、ロートレックくんの場合は雰囲気だけなら既に本当の大人に見える。体格も一番良いんじゃないかな。

(ロートレックくんだけ、パパを前にしても全く緊張してなさそうなんだよなぁ。こう、大物って感じがする……)

「フェルナンド。公の場ならともかく、今この場には私たちしかいないのだ。細かいことは気にする必要は無い」
「……そうは言っても、品性は必要だ。周囲に示しがつかない。お前が甘やかすと、むしろそいつの為にならないぞ。人との戦とは縁遠くなったとはいえ、魔族同士での足の引っ張り合いは未だにあるのだから」

 フェルナンド様は、眉間に深い皺を寄せるとパパの言葉に深いため息を吐いた。もしかして、皆パパとは親友だけど、それ以外の相手とは仲が悪いのかなって思ったけど、場の空気は別段変わらなかった。言われた当人も「すまん。すまん」と豪快に笑っている。

 どうやら、仲が悪い訳ではなさそうだ。根本的な性格は合わないんだろうけど、一応は心配してるっぽいし。

「パパ……!」

 俺は、パパの服の胸元をくいっと引っ張った。もちろん、俺からも皆にご挨拶をしたいという意思表示である。
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