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◆chapter1◆幼少時代編

過保護すぎるのも困りものです①

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 最初は何かの呪いの類かと思われた俺のポメ化だが、どれだけ調べても呪いどころか、魔力の気配すら一切検知されなかった。魔界には獅子や鳥の顔をした魔族もいるし、俺がそういう魔族なだけなのでは? と俺の事を調べてくれたヒトは言っていたけど、そういうタイプの魔族は最初に獣の姿で生まれてきて、その後ある程度の年齢を経てから人型の姿になるので、当てはまらないんだよね。

 それに彼らが獣の姿になっても喋ることが出来るのと違って、俺の場合は一切喋れなくなる。何千年も生きている魔族ですら、俺みたいな事象は初めて見たと言っていたし、俺が赤ん坊の頃に魔の森で発見された時の状況を含めて、俺がどういった魔族なのかは謎に包まれている。

(どう見ても、ただのポメラニアンだもんなぁ……)

 ちなみに異世界にも犬……というか獣はいるけれど、狼に似ている比較的大型の種類ばかりだ。小型犬とか猫みたいな可愛らしいのは、前世でも見たことがない。そもそも前世は小型犬が暮らせるような恵まれた環境じゃなかったし。

 ペットと言えば鳥かでかい蜥蜴だったんだよね、前世。

 あとは馬、かな? ただ、愛玩動物としてじゃなくて、あくまで諜報活動とか騎乗するための相棒って感じだから、俺がゲームの世界に入る前の世界で見て来たような感じではない。

 魔族の目には、小さくてもこもこの毛玉のような俺の姿は庇護対象に映るようで、好意的に受け取られているが……自分の意志で戻れないので結構不便なんだよな。

 あと、呪いをかけられたわけでも、魔法をかけられたわけでもないからって、もしかしたら病気なんじゃないかって家族はむちゃくちゃ心配してくるのも困る。

 以前はパパとミスティック兄上だけが過保護だったのに、魔の森置き去り事件以降は双子も過保護になってしまったのだ。嫌というほどではないけれど、まるで風が吹いたら倒れるかのごとく構われていて、たまに息がつまることもあった。

 ちょっと噎せただけで「シオンが死んでしまう!」と騒がれ、友達がせっかく外に遊びに行こうと誘いに来てくれても「万が一があったらどうするんだ!」と、騒ぐ騒ぐ……。アズール兄上はまだ、渋々だけど「仕方ない。気を付けるんだぞ」とか言って許してくれるんだけど、あとの皆に関しては説得するのも一苦労なのだ。

 ダークパレスにやって来る魔界貴族の人たちにも、迷惑をかけているっぽいので本当そこは改善して欲しい。

 一歩間違えたらモンスターペアレントだもん。うちの家族。魔王とその家族だから許されてるだけで、その辺の平魔族なら許されないと思う。

 でも、病気を疑われても、現状ポメ化する以外には別段何の不調も無いし……むしろ、ポメの姿の方が身体的能力は高いみたいだから、皆の取り越し苦労なんだけどね。人型の時は年相応の小さな子供って感じの身体能力だけど、ポメになると短い手足に反して中々の脚力だし。

(とりあえず、朝食の時間だよな)

 壁時計の針を見て、俺は「ふー」とため息……いや、鼻息を吐いた。

 このまま此処にいても、ポメ化が解けない事は今までの経験から既に分かり切っている。

(……はぁ、今日も皆にもふもふされる宿命かぁ)

 ポメ化の解除の条件は、俺のストレスが解消されることなのだが、ポメの姿になった場合、誰かにボールで遊んで貰ったり、撫でて可愛がって貰うなどの甘やかしが必要なのだ。

 美味しい餌……じゃなくて、食事でも効果はあるんだけど、俺の場合はもふられるのが一番効果があるので、こうなったら最後、パパや兄上たちにお願いするしかないのだ。

 俺の最初の人生――ゲームに入る前の世界における、まさに【犬】みたいな状況だが、そうしないと元に戻れないのだから仕方ない。まぁ、ポメの時は可愛いって言われたりするのは楽しいし嬉しいし。

(うーん、人生ではなくもはや犬生と改めるべきなのかも……)

 俺は、ポメ化しても自分で部屋の外に出れるようにと、侍女たちが魔法で無理矢理くりぬいて作ってくれた扉――ペットドアを潜りながら、そんなことを考えていた。
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