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◆第2章 おまけの神子とにゃんこ(?)とワイルドエロ傭兵

にゃんこ(?)と俺③-1

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 シュナと向かい合いながら、俺は神妙な顔で話を聞いていた。

 ラインハルトとの事が、もはや隠しようもない状況であるというのは、すっぱりと諦め受け入れる事にした。
 否定してももう遅いし、余計に色々と言われそうだし。

「シュナは、伊藤の事はどう思ってるんだ?」

 俺は恐る恐る尋ねてみた。

 シュナからは、伊藤にはまだ会っていない事もあってか、伊藤への好意は特に感じられないけれど、嫌悪感を持っているって訳でもない様だ。

「んー。神子は確かに大切な存在ではあるし、戦いの中で魔物たちから神子を守る事に関しては僕も異を唱える気はないよ。そもそも、異世界から勝手に呼びつけておいて、犠牲になってほしいとはさすがに言う気はないしね」

 確かに、異世界から勝手に召喚しておいた挙句、何の旨味も無くこき使われるなんて、大体の人間が納得できないだろう。物語でよくある正義感の強い主人公なんて、そうそう居ない。特に命の危険があるならなおさら。

 だから伊藤が結構な我儘を言ったり、多少暴れても許されているんだろうな。

「でも、だからと言って神子の我儘を全部受け入れられるかって言ったら別の話なんだよねぇ。ものには限度があるでしょ? だって、せっかく魔王を浄化して魔物が沈静化しても、国の中がめちゃくちゃになったらまずいしぃ。それに、国がおかしくなると、他の国にも悪い影響があるんだよねぇ」

「うん、そりゃそうだろうね」

 いくら他国から攻め込まれないヨルムカトル王国とはいえ、じゃあ傍若無人に好きなように振舞っても何も言われないかとなるとそうじゃない。過去の書物で読んだけど、何度かやらかしたヨルムカトル王国の神子の関係者たちは、結構悲惨な目にあっているらしい。

 ヨルムカトル王国が攻め込まれないのって、この国の人しか神子を呼べないからなのと、もう一つ女神の盟約があるからなんだけど、あくまではそれは物理的な話であって、間接的な制裁を無かった事にできる訳じゃない。
 良くも悪くも他国からの援助を受けて生活が成り立っているこの国は、他国からの援助を打ち切られると、立ち行かなくなるんだよね。簡単に言うと、ヨルムカトル王国は輸入に頼っている国なんだ。

 困窮してしまえば不満は爆発する。
 貯えのある貴族たちは平気かもしれないが、国民は怒りまくるだろうし、貴族だって一枚岩じゃない。放蕩に耽るタイプもいれば真面目な人も居る。
 他国からの援助を受けて、もしその真面目な貴族側が台頭すれば、国内では政争が当然勃発し、結果的に苦しくなるのはヨルムカトル王国側の富裕層側なのだ。

 真っ当な政治を行わないと、追い落とされてしまう為、必死らしいと聞いて俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 制裁する側も全くダメージを受けない訳ではない。

「僕らとしても出来れば、ヨルムカトル王国に圧力はかけたくないんだよねぇ~。生かさず殺さず、地味に圧力をかける労力も辛いし、政を担う人が変わると輸出とかに影響も出てくるし、今は魔物たちが活性化してるから、領土争いなんて殆どないけど、神子が魔王を浄化した後は、多分また小競り合いは始まるから、出来ればヨルムカトル王国には大人しくして貰いたいんだよ~」

 ワンブレスで言い切ったな。
 けど、そういう事なら話が変わってくる。

「あのさ、でも、それなら、伊藤がやばそうなら止めてくれるってなるんじゃ? 俺はそんな警戒しなくても大丈夫なんじゃない?」

 貴族連中はイチモツ抱えているとはいえ、国益にならないような言動に関しては神子を諫めようとはするって事だろ。それなら、俺が暗殺されたり、悪役令嬢みたいに処刑はされたりする事はないんじゃないだろうか。正直、俺は下働きでも全然我慢できるし。身の安全が保障されてるならだけど。

「……トオルって、本当に頭の中、平和だよね」

 俺の言葉に、シュナが表情を大きく引きつらせると、どこか呆れた様に大きくため息を吐いた。

「あのさ、女神の盟約がどういうものかトオルは知ってる?」

「一応は?」

「ふーん。言ってみて?」

「えっと、女神の盟約は二つ。一つは、使命を終えた神子をヨルムカトル王国の王妃として迎え、平穏かつ幸福な人生を歩ませること。もう一つは、神子が選んだ人間を王として即位させること。この二つを守れば、ヨルムカトル王国は聖地として繁栄する、だよな?」

 ちなみに女神の盟約とは言うものの、実際にヨルムカトル王国の人が自分から望んで女神と盟約を結んだわけではなく、初代の神子が召喚された際、彼に不当な扱いをした当時のヨルムカトル王国の王が、当時覇権を握っていた怒り狂った竜族に、無理矢理結ばされたものなんだよな。

 実は、元々は神子を召喚する力は他の国にもあったんだけど、その盟約によってヨルムカトル王国だけがその資格を有するようになったんだ。

 なお、竜族と竜人は別の種族で、竜族はもう見かけなくなってかなりの年月が経過している上、当時の文献も殆ど失われてしまっていて、残っているのはほんの一部らしい。だから、本当はどこまでが真実かは分からないみたいだけど。

 現状、盟約を解除できる存在もいない上、解除する気がないので、深く考えても仕方がないんだろう。

「うん。まぁ、正解だねぇ。でもさ、この盟約、色々と抜け道があるんだよぉ、実は」

「抜け道?」

「そう。さっき、トオルも気づいた通り、不可侵の地であるヨルムカトル王国も、物理的な侵略は防げるけど、それ以外の物資の供給を絶つとか、政治的に圧力をかけるとかは普通にできちゃうでしょー?」

「ああ、うん。そうだな」

 俺の世界でのゲームの類とかでもそうだけど、禁止されていないのなら出来る事は多々ある場合は多い。さすがに盤上のゲームはルールが細かいから、出来ない事は出来ないけれど、TVゲームとかTRPGみたいなのは、割と突飛な事も出来たりするしな。

「元々盟約のきっかけになった事件はさ、竜族が神子に好意を持っていて、神子を害した当時の王様への報復と、同じような神子を今後生み出さないようにってものだったんだよねぇ。まぁ、愛の為にってやつ?」

「ああ、成程……」

 シュナの言葉に俺は納得した。
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