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◆第1章 おまけの神子とラインハルト
受難の始まり⑦-1
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はっと気付いた時には、俺はテントの中で寝転がっていた。
どれくらいの間、気を失っていたのかは分からないが、隣にはラインハルトは居ない様だ。
「……う」
痛む節々を押しながらなんとか起き上がった俺は、ほんの少し不安に思い顔を顰めた。
俺の身体は綺麗に清められており、服も新しいものに着替えさせられていて、はたから見て何があったかは分からないが、絶対に真っすぐには歩けないだろう。
そっと、テントの入り口に手をかけて外を覗き見ようしたと同時、外からテントが開けられる。
テントを開けた主は勿論、ラインハルトだった。
「身体は大丈夫か? 少し、お前には辛かったのではと心配だった」
媚薬の効果はすっかり抜け落ちたようで、いつものややふてぶてしさの残る端正な顔には余裕が見えた。
ただ違うとすれば、こういった関係になってしまう前には感じなかった、ラインハルトからの気遣うような視線だろう。
テントの中に入ってきたラインハルトは、俺の肩をそっと抱き寄せながら俺の表情を窺った。
「顔色は悪くない様だが……痛みや違和感はあるか? 一応、回復の魔法はかけたのだが、私は回復魔法は本職ではないからな……」
今までよりも大分距離が近いと感じるのは気のせいではないだろう。
俺に触れる手はまるで壊れ物を扱う様に優しくて、居心地の悪さから俺は身体を捩らせた。
ラインハルトから距離と置こうと手を突っ張ってみるが、ラインハルトはそれをひらりをかわしながら俺の抵抗を封じてしまった。
「いや、ちょっと……っ!」
優しい手つきではあるが、主導権は完全にラインハルトに握られてしまっている。
どちらにせよ、元々の体格差がかなりある為に、どんなに暴れたとしてもラインハルトにとっては大差はないかもしれないが。
「ラインハルト! その、昨日の事は……その、正直気まずいけれど、仕方なかったと思うし、俺は気にしてないから!」
ラインハルトから、今後もこんな女性のように丁重に扱われるのは御免だった。
驚くべきことに、完全には同意では無かった行為をされたというのに、ラインハルトへの嫌悪感は全く湧かなかったが、30年以上生きてきてこんな風に接しられたのは初めてなので、恥ずかしいし気まずいのだ。
「その、出来れば今まで通り俺とは友達でいて欲しいって言うか……駄目か?」
俺は、恥ずかしいながらもはっきりとラインハルトの目を見て言った。
残りの日数も、ラインハルトとは良い関係を築きたいという思いからの俺の言葉に、当然ラインハルトも頷いてくれると思ったのだ。
しかし。
「……それはできない」
ラインハルトは俺の言葉を拒絶した。
俺は思わず固まって目を瞬かせた。
「……俺が、嫌になったって事か?」
「……いや……?」
俺の声は少し震えていただろう。
確かにラインハルトも望んでいた訳ではなかったというのは分かるけれど、正直俺よりは拒否反応は無かったと思っていた。
俺の問いに、ラインハルトは不思議そうに首を傾げているし、見たところそれほど思いつめた感じでもない様に見える。
(友達に手を出してしまったから……?)
確かにデリケートな男ならばそういう考えになってもおかしくはないだろうが、ヤラれた俺が大丈夫だと言っているのだから、頷いてくれても良いのではないかと、俺は正直むかついていた。
(そりゃ、俺も簡単に受け入れておいて勝手に何むかついてるんだって思わなくはないけど、突っ込まれたんだぞ!? いや、俺の方がダメージはでかいはずだ! 絶対!!)
たとえ、最終的に快感を感じてしまったとはいえ、だ。
やはり挿入される方が、色々と失うものは大きい筈だ。
内心の不満は表情に出ていたらしく、俺の表情に気づいたラインハルトは、はっとした様子で目を見開いていた。
俺はその様子に、きっとラインハルトも少し混乱していたのだろうと考えたのだが、それからじっと俺の目を見たラインハルトは、何故かおもむろにその場に跪くと、まるで姫君にするような仕草で俺の手の甲にキスをした。
「……は?」
俺はラインハルトのその行動に、思わず間抜けな声を上げていた。
どこぞの王子様の様に洗練された仕草は「さすが手馴れているだけあるな」と言わんばかりに自然だったが、何故この場面でそういう行動に出たのか謎すぎて、俺は一瞬固まっていた。
しかし、俺が何かを言い出す前に、ラインハルトが堂々とした口調で語りだした。
「まずは、お前に謝罪をしなければならない。初めてをこのような場所で行う結果となってしまった事、それについては本当に申し訳ないと思っている。そして、私を受け入れてくれたその優しさに惚れ直した。やはり、お前は他の奴らとは全く違う。私にとっての唯一はお前であり、今後はお前だけに愛を囁くことを誓おう」
「え?」
「私もまだ未熟だった。お前ははっきりと言ってほしいタイプだという事に、中々気づけなかったのだ。てっきり、お前は私にはそういった感情を抱いては居ないのだとばかり思っていた為、先ほどのような回答になってしまったが、お前は伴侶であると同時に友人の様な関係を築きたいという意味だったのだろう。気づくのが遅れてすまない。……勿論、お前の望む通りに私はしよう」
「い、いや、あのその」
「お前の事は必ず私が守るし、絶対に苦労はさせないと誓う。王城に帰り次第、早速婚約の準備を始めよう」
ラインハルトは、俺の戸惑いの声など全く意に介さず、淡々と、しかし切れ目なくすらすらと述べると嬉しそうな顔で俺をぎゅっと抱きしめた。
「ま、待って!」
力強い腕に抱きしめながら、俺は腕の中で精一杯もがいて見せた。
俺が友人でいたいと言ったのは言葉のままであり、変に駆け引きなどをしているわけではない。
関係を持ってもラインハルトに嫌悪感は持たなかったが、恋愛感情を持っていないと言うのも断言できる。
どれくらいの間、気を失っていたのかは分からないが、隣にはラインハルトは居ない様だ。
「……う」
痛む節々を押しながらなんとか起き上がった俺は、ほんの少し不安に思い顔を顰めた。
俺の身体は綺麗に清められており、服も新しいものに着替えさせられていて、はたから見て何があったかは分からないが、絶対に真っすぐには歩けないだろう。
そっと、テントの入り口に手をかけて外を覗き見ようしたと同時、外からテントが開けられる。
テントを開けた主は勿論、ラインハルトだった。
「身体は大丈夫か? 少し、お前には辛かったのではと心配だった」
媚薬の効果はすっかり抜け落ちたようで、いつものややふてぶてしさの残る端正な顔には余裕が見えた。
ただ違うとすれば、こういった関係になってしまう前には感じなかった、ラインハルトからの気遣うような視線だろう。
テントの中に入ってきたラインハルトは、俺の肩をそっと抱き寄せながら俺の表情を窺った。
「顔色は悪くない様だが……痛みや違和感はあるか? 一応、回復の魔法はかけたのだが、私は回復魔法は本職ではないからな……」
今までよりも大分距離が近いと感じるのは気のせいではないだろう。
俺に触れる手はまるで壊れ物を扱う様に優しくて、居心地の悪さから俺は身体を捩らせた。
ラインハルトから距離と置こうと手を突っ張ってみるが、ラインハルトはそれをひらりをかわしながら俺の抵抗を封じてしまった。
「いや、ちょっと……っ!」
優しい手つきではあるが、主導権は完全にラインハルトに握られてしまっている。
どちらにせよ、元々の体格差がかなりある為に、どんなに暴れたとしてもラインハルトにとっては大差はないかもしれないが。
「ラインハルト! その、昨日の事は……その、正直気まずいけれど、仕方なかったと思うし、俺は気にしてないから!」
ラインハルトから、今後もこんな女性のように丁重に扱われるのは御免だった。
驚くべきことに、完全には同意では無かった行為をされたというのに、ラインハルトへの嫌悪感は全く湧かなかったが、30年以上生きてきてこんな風に接しられたのは初めてなので、恥ずかしいし気まずいのだ。
「その、出来れば今まで通り俺とは友達でいて欲しいって言うか……駄目か?」
俺は、恥ずかしいながらもはっきりとラインハルトの目を見て言った。
残りの日数も、ラインハルトとは良い関係を築きたいという思いからの俺の言葉に、当然ラインハルトも頷いてくれると思ったのだ。
しかし。
「……それはできない」
ラインハルトは俺の言葉を拒絶した。
俺は思わず固まって目を瞬かせた。
「……俺が、嫌になったって事か?」
「……いや……?」
俺の声は少し震えていただろう。
確かにラインハルトも望んでいた訳ではなかったというのは分かるけれど、正直俺よりは拒否反応は無かったと思っていた。
俺の問いに、ラインハルトは不思議そうに首を傾げているし、見たところそれほど思いつめた感じでもない様に見える。
(友達に手を出してしまったから……?)
確かにデリケートな男ならばそういう考えになってもおかしくはないだろうが、ヤラれた俺が大丈夫だと言っているのだから、頷いてくれても良いのではないかと、俺は正直むかついていた。
(そりゃ、俺も簡単に受け入れておいて勝手に何むかついてるんだって思わなくはないけど、突っ込まれたんだぞ!? いや、俺の方がダメージはでかいはずだ! 絶対!!)
たとえ、最終的に快感を感じてしまったとはいえ、だ。
やはり挿入される方が、色々と失うものは大きい筈だ。
内心の不満は表情に出ていたらしく、俺の表情に気づいたラインハルトは、はっとした様子で目を見開いていた。
俺はその様子に、きっとラインハルトも少し混乱していたのだろうと考えたのだが、それからじっと俺の目を見たラインハルトは、何故かおもむろにその場に跪くと、まるで姫君にするような仕草で俺の手の甲にキスをした。
「……は?」
俺はラインハルトのその行動に、思わず間抜けな声を上げていた。
どこぞの王子様の様に洗練された仕草は「さすが手馴れているだけあるな」と言わんばかりに自然だったが、何故この場面でそういう行動に出たのか謎すぎて、俺は一瞬固まっていた。
しかし、俺が何かを言い出す前に、ラインハルトが堂々とした口調で語りだした。
「まずは、お前に謝罪をしなければならない。初めてをこのような場所で行う結果となってしまった事、それについては本当に申し訳ないと思っている。そして、私を受け入れてくれたその優しさに惚れ直した。やはり、お前は他の奴らとは全く違う。私にとっての唯一はお前であり、今後はお前だけに愛を囁くことを誓おう」
「え?」
「私もまだ未熟だった。お前ははっきりと言ってほしいタイプだという事に、中々気づけなかったのだ。てっきり、お前は私にはそういった感情を抱いては居ないのだとばかり思っていた為、先ほどのような回答になってしまったが、お前は伴侶であると同時に友人の様な関係を築きたいという意味だったのだろう。気づくのが遅れてすまない。……勿論、お前の望む通りに私はしよう」
「い、いや、あのその」
「お前の事は必ず私が守るし、絶対に苦労はさせないと誓う。王城に帰り次第、早速婚約の準備を始めよう」
ラインハルトは、俺の戸惑いの声など全く意に介さず、淡々と、しかし切れ目なくすらすらと述べると嬉しそうな顔で俺をぎゅっと抱きしめた。
「ま、待って!」
力強い腕に抱きしめながら、俺は腕の中で精一杯もがいて見せた。
俺が友人でいたいと言ったのは言葉のままであり、変に駆け引きなどをしているわけではない。
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