愛及屋烏

ゆる

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仲直り:葵side

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バクバクと心臓がうるさく鳴っている。一華は先に帰っており久々に1人で帰る帰路はあまりにも静かで自分の心臓の音がすごく五月蝿かった。
  耳の奥でさっきの一華の言葉が反芻する。
『好きって友達じゃなくてこういう事だから。』
 思い出す度顔が熱くなる。知らない感覚、感情だった。ムカついてイライラして、けど怒れない…。
「………いみ、わかんないし…。」
足が自然と速くなるのも、アイツの所為だ。

  次の日から何処か一華を避けるようになった。帰りは足早に帰るようになったし授業のペアも別の奴と組むようにした。モヤモヤした感情が一華を見れないようにしている。苦しい、辛い、─熱い。今一華と目を合わせたらどうなってしまうんだろう。なぁ一華、好きってなんなんだろうな。俺馬鹿だからわかんねぇよ…。本当に、この感情が、感覚が合ってるのかな。
  そんな歪な関係は2週間続いた。終止符を打ったのはこの関係を作ってしまった俺だった。
  震える手で一華のトーク欄を開く。最後の連絡は2週間前。ずきりと胸が痛む感覚がした。もうこんなの感じたくないんだよ。
『今から俺の家に来て』
やっと打ち込んだ一言は無愛想なもので絞り出した言葉にしては簡素なものだった。今日は親は仕事だし弟は他所に泊まりに行ってる。今日しかないと思った。
  送信ボタンを押すとすぐに既読が付いた。いちいちドキドキすんのも今日で終わることだろう。
『わかった』
4文字の返信があってすぐ家のチャイムがなる。いつもより音が大きく響いたようにも感じた。
  ドアを開け2週間ぶりに一華を直視する。小さく息を切らしているのがわかった。こんな短距離を走って来るとか…。一華は息を落ち着かせつつあの日のように俺をまっすぐ見てくる。
「部屋に行ってて…」
  小さく頷き二階へ向かう一華の後ろ姿を見届け深呼吸をする。チャンスは1回きり。意を決した筈なのにまた心臓がバクバクと五月蝿くなる。五月蝿い五月蝿い!今から言うって!それでも階段を上る足は重く一段一段踏みしめて上る。自室のドアの前でもう一度深呼吸。大丈夫、きっと大丈夫。だって一華は優しいから。
  あまり音を立てぬようドアを開ける。ドアの音で一華が振り向いた。子供の頃からずっと見てきたその顔は今はモヤモヤして見れない。思わず顔を伏せてしまう。今から言う言葉によって一華の表情がどうなるのか分からないし怖いから。だから自然と言葉は解れた糸みたいにか細く紡がれる。

「いちげ、のことが、す………たい…。」
後半なんて自分でも聞こえない位の声だった。怖さと恥ずかしさと申し訳なさで声の震えが止まらない。

「ん?」
  メレンゲで焼いたパンケーキみたいにふわふわで毛布みたいに優しく暖かい一華の声が俺の言葉を諭す。一華の精一杯の優しい声だって何より俺が知ってる。だから俺の勇気が大きく声を出した。

「一華の事がッ…!…すき…みた…ぃ…。」
  やっと、言えたよ。一華。そんでもって俺は用意してた言葉と思いついた言葉を単語単語に繋いで伝える。
「2週間ずっと一華のこと考えてて...その」
伝われ
「...そういう意味で好き...だって気づいた……から...」
伝われ…!

「付き合ってください...?で合ってるのかな...あはは…」
と、ここまで言ってふと正気に戻る。いやいやいや待て俺今ちゃんとした日本語話してたか?なんだ合ってるのかなって恥ずかしいわこんなんじゃ伝わるも何も笑われて終わるってば…。怖いもの見たさで恐る恐る一華の顔を見ると色んな感情が喜怒哀楽が混ざったような顔をしていた。頬と耳が少し赤く見えるのはきっと夕日の所為であろう。色んな感情を経て目を潤ませた顔に行き着くと真っ直ぐ俺の目を見て言った。

「……もちろん、お願いします...」

  その真っ直ぐな目は凄く綺麗で、やっぱり俺こいつの事好きだなって思ったんだ。

  
  その後はと言うと親友、もとい幼馴染から昇格し晴れて恋人となった。
といってもいつもどおりというかいつも以上に仲が良くなったくらいで他はあまり変わりない。
ただいちいち『あぁやっぱ好きだな』って呟く
一華が俺たちの日常に追加されたくらい。
志望校も第1志望で通り春からは新しい生活が始まる。
どんな生活かって、そりゃあ俺と一華の最高の高校生活だろ!!な!一華!!!!

呆然と立ち尽くす一華の顔が面白かったのは秘密にしておくよ。
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