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第三話

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ツキヤサイド

笑顔だった彼の顔は一瞬にして真顔になり、俺の背筋が凍る。

K「なんで吸血鬼は血を吸ったりするか…知ってる?」

T「生きて行くためだろ?」

K「確かに無差別に人間の血を吸って感染を拡げ空腹を満たす吸血鬼もいる。でもそれはBlue吸血鬼で俺は種族の違うPurple吸血鬼なんだ。同じ吸血鬼であり…全くの真逆…」

T「どういう事?」

K「俺たちはBlue吸血鬼と人間の間に生まれた特殊変異の吸血鬼なんだ…」

T「じゃ…半分人間ってこと…?」

K「ふふふwそうだね?だから俺たちは普通のご飯も食べるよ…だけど…」

そう言って彼はゆっくりと俺の所に近づいてきて俺のベッドに腰掛けてそっと頬を撫でた。

T「だけどなに?やっぱり…俺の血を吸うってこと……?」

俺がそう問いかけるとそっと俺の手を握って下を向いて笑った。

K「いいえ…」

T「え…?」

K「今ここで俺があなたのここに噛み付いて血を吸えばあなたは吸血鬼になってしまう…俺たちPurple吸血鬼は吸血鬼同士では婚姻関係を結べませんし、子孫も残せません…人間としかそういう関係になれないんです…だから、どんなにあなたの血が欲しくても…俺はあなたの血は吸わない…あなたと番(つがい)となり婚姻を結びたいから。俺たちの種族は今…人間と結ばれる事がなくなり絶滅の危機ですしね。」

そっか…人間と吸血鬼が結ばれてpurple吸血鬼は存在するのか…

そして、こいつが今、俺の血を吸ったら俺が吸血鬼になって番という婚姻関係も結べないし、子孫も残せない?

ん?

こいつは俺と番となり婚姻を結びたいがために血液を吸わない?

そっか…

そっか?

え?

なにがそっかなんだ?

はぁ!?

なに言ってんのこいつ!!!?

T「はぁ!?なに言ってんの俺、男だけど!?」

K「着替えさせる時に全部、隅々まで見たんで知ってる。」

あ…そうなんだ…俺の身体を隅々まで見たんだ…

俺のこと男だって知ってて口説いてんのか…

なーんだびっくりした…ホッ…

って言ってる場合かっ!!!?

T「いやいや、違う!!知ってるじゃなくて!!俺たち男同士なの!!残念ながら俺は子供産めません!!婚姻関係も結べませーん!!」

俺が大きな声を張り上げてそう叫ぶと彼は慌てた顔をして俺の口を手で塞いだ。

T「ん!!!!!?」

K「シッ!!他の奴らに人間がいる事バレた…今すぐ逃げよう…」

そう言って彼は俺の口を塞いだまま立ち上がり、連れて行こうとするので俺はその大きな手を力付くで剥がした。

T「逃げるってどこに!?」

K「この森の出口まで走って逃げるんです…じゃなきゃあなたは吸血鬼になって人の血を吸わないと生きていけないようになってしまうんですよ!?それでもいいんですか!?」

俺は今、何に怯えているのだろう…

さっきまで何も怖くはなかったのに膝がガクガクと震えて体が冷たくなる。

T「そんなのいやだよ…吸血鬼になんてなりたくない…」

K「だから行こう…」

彼はフードを深くまで俺にかぶせて肩を抱きながら部屋を出て森の中を走り出した。

T「…怖い…」

K「大丈夫…」

森の中からは自然達が発する音とは別に俺たちの周りを何度もクルクルと囲むように唸り声が聞こえている。

カケルは俺の耳を塞ぎ足の速度を落とす事なく走っている。

俺もそれに必死について行くが目には見えない何かが俺の足を掴んでは離し…服を引っ張っては離し…

まるで怯える俺をみて楽しんでいるかのようだった。

K「もう少しだから…」

T「うん…」

そうカケルと言葉を交わした瞬間…カケルは目に見えない何かに吹き飛ばされた。

K「ゔっ…!!」

俺は何が起きたのか分からず振り返るとそこには腕から紫色の血を流すカケルが倒れていた。

T「カケル!!!!」

慌てて駆け寄り俺はその傷口を押さえる。

K「大丈夫…大丈夫だから逃げて…あともう少しで…ここから出れるから…」

T「無理だよ…怪我してるのにカケルを置いて行くなんて出来ないだろ…!!カケルは俺を助けてくれただろ!?」

俺がそう言ってもカケルは自分の腕から俺の手を離させようとして首を横に振る。

K「頼むから…行けよ……」

T「でも…!!!!」

K「行けって!!今もし、あんたがBlue吸血鬼に襲われたら…俺たちは一生…敵同士になるんだぞ!?頼むから…吸血鬼にならないでくれ…逃げろ…俺を置いて逃げろ!!!!」

苦しい…

なんでこんなに俺の胸は今苦しいんだろ…

自分が分からない…

俺は涙が溢れるのを袖で拭いてカケルの紫色の瞳を見た。

T「カケル…ごめん……」

俺がそう呟くとカケルはニコッと微笑み、俺の顎を導くようにそっと俺の唇に口づけた。

男とキスなんてしたこともなく考えたことすらないのに、何故かカケルとのキスを素直に受け入れている自分に驚いた。

K「また…会えるよ…ほら…見て?月が綺麗だね……。」

俺はその言葉を聞いて走り出した。

つづく
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