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9話
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そこには正室であるホミラ様が立っていた。
H「トナおめでとう…お役人から聞いたよ?お子を授かったんだってね?」
その目は私への嫉妬心で溢れていて、思わず私はお腹に手を当てて授かったばかりの小さな命を守ろうとする。
T「あ…ありがとうございます…」
H「ここへ来て1年半も経つ私でさえ…あの人は抱いてくれないっていうのに…ここに来て1カ月でお子を授かるだなんて…本当にそれは王様の子?」
私はホミラ様のその言葉に返す言葉が見つからず目を泳がせる。
H「ここにいるお役人達はどの側室よりも正室である私との子を望んでいるのに…まさか側室であるトナに先を越されちゃうなんてね…正室である私の立場がないわ…」
T「す…すいません…」
H「謝らないでよ…おめでたい事でしょ…にしてもトナは想い人がいるんだってね?」
その言葉を聞いて私はドキッと心臓が返事をし、暴れだすのを顔に出ないよう必死で誤魔化す。
なのに、目の前にいるホミラ様は扇子で優雅に風を吹かせながら私のことを全て見透かしているような眼差しで見つめ…
私は恐怖のあまり喉をゴクリと鳴らした。
H「もしその子が王様の子ではなく…その想い人の子だったら…どうなるか…さすがに分かってるわよね?」
ホミラ様はニヤッと笑い私の様子を伺う…
しかし私もそんな事まで言われて黙っているわけにもいかない。
この王宮では自分の身は自分で守らないといけないのだ。
T「分かってますよ…しかしホミラ様もご存知ですよね?王様の正室というお立場でありながら…護衛のミズキさんと恋仲になるなんて…この王宮では重罪ではないのですか?」
それはたまたま、食事係の人間が噂として立ち話をしていたのを私は聞いてしまったのだ。
この王宮内に王様を純粋に愛してる人間はいない…それは私も含めてそうだろう…
しかし、私はそんな王様が不憫にも思え同情心が生まれた。
H「私を脅そうっていうの?」
T「いいえ…ただ…あなたが誰かを愛してるように王様も素直に誰かを愛せる世界になればいいのにな…って思っただけで…」
H「そんな事ここのお役人達が許すとで思う?王様に黙って王様の想い人を島流しにして。この国を支配してるのは王様なんかじゃないのよ?全てを握っているのは…あの家臣たちよ。」
T「…そんなの…王様が可哀想すぎますよ…」
H「人の心配してる場合?王様にお子の事を知られたら…そんな事言える余裕あるのかしら?」
ホミラ様はそう言い残し私の部屋を出て行った。
確かにそうだ。
ホミラ様の言う通り、この妊娠が王様に知られてしまえば自分の命、コハクの命、そして宿ったばかりのこの小さな命でさえも危ないのに。
しかし王様にこの事実を隠すことなんて不可能で、私は覚悟を決め全てを王様に話そうと心に決め、その夜、王様の元を訪れた。
淡い色の布を身に纏う王様の横に私が座ると王様は私の顔を見る。
Y「役人達に嬉しい報告があると言われたんだが?なんだ?」
いきなりの言葉に私は震えだし息が荒くなる。
Y「大丈夫か?」
T「王様…その…お……お子を…」
Y「身籠ってるのか?」
口籠る私を見て王様は落ち着いた顔をしてそう言った。
T「は…はい…」
Y「良くやった!!」
私はビクッと震えると王様のその言葉に戸惑い固まる。
そして、王様は私をギュッと抱きしめ耳元でこう囁いた。
Y「外にジラがいる…奴に俺の子じゃないと言ったのか?」
T「い…いえ…」
Y「そうか…お前はこの子を産みたいか?」
その言葉に私は微かな恐怖が生まれ、王様から離れようとするが王様は私を離さず耳元で語りかける。
Y「この子を無事に産みたいのか?」
T「……はい……」
Y「ならばジラ…いや役人達には俺の子だと言え…分かったな。」
そう言うと王様は私を解放した。
思わず私は涙が溢れ出し、震えていると王様は優しく私の頬を撫でた。
Y「何も心配するな…幸せになるよ…身体を大切にしろ……」
私はその言葉の意味が分からないままただ涙を流し、王様は私の涙が止まるまで側で肩を抱き寄せてくれた。
つづく
H「トナおめでとう…お役人から聞いたよ?お子を授かったんだってね?」
その目は私への嫉妬心で溢れていて、思わず私はお腹に手を当てて授かったばかりの小さな命を守ろうとする。
T「あ…ありがとうございます…」
H「ここへ来て1年半も経つ私でさえ…あの人は抱いてくれないっていうのに…ここに来て1カ月でお子を授かるだなんて…本当にそれは王様の子?」
私はホミラ様のその言葉に返す言葉が見つからず目を泳がせる。
H「ここにいるお役人達はどの側室よりも正室である私との子を望んでいるのに…まさか側室であるトナに先を越されちゃうなんてね…正室である私の立場がないわ…」
T「す…すいません…」
H「謝らないでよ…おめでたい事でしょ…にしてもトナは想い人がいるんだってね?」
その言葉を聞いて私はドキッと心臓が返事をし、暴れだすのを顔に出ないよう必死で誤魔化す。
なのに、目の前にいるホミラ様は扇子で優雅に風を吹かせながら私のことを全て見透かしているような眼差しで見つめ…
私は恐怖のあまり喉をゴクリと鳴らした。
H「もしその子が王様の子ではなく…その想い人の子だったら…どうなるか…さすがに分かってるわよね?」
ホミラ様はニヤッと笑い私の様子を伺う…
しかし私もそんな事まで言われて黙っているわけにもいかない。
この王宮では自分の身は自分で守らないといけないのだ。
T「分かってますよ…しかしホミラ様もご存知ですよね?王様の正室というお立場でありながら…護衛のミズキさんと恋仲になるなんて…この王宮では重罪ではないのですか?」
それはたまたま、食事係の人間が噂として立ち話をしていたのを私は聞いてしまったのだ。
この王宮内に王様を純粋に愛してる人間はいない…それは私も含めてそうだろう…
しかし、私はそんな王様が不憫にも思え同情心が生まれた。
H「私を脅そうっていうの?」
T「いいえ…ただ…あなたが誰かを愛してるように王様も素直に誰かを愛せる世界になればいいのにな…って思っただけで…」
H「そんな事ここのお役人達が許すとで思う?王様に黙って王様の想い人を島流しにして。この国を支配してるのは王様なんかじゃないのよ?全てを握っているのは…あの家臣たちよ。」
T「…そんなの…王様が可哀想すぎますよ…」
H「人の心配してる場合?王様にお子の事を知られたら…そんな事言える余裕あるのかしら?」
ホミラ様はそう言い残し私の部屋を出て行った。
確かにそうだ。
ホミラ様の言う通り、この妊娠が王様に知られてしまえば自分の命、コハクの命、そして宿ったばかりのこの小さな命でさえも危ないのに。
しかし王様にこの事実を隠すことなんて不可能で、私は覚悟を決め全てを王様に話そうと心に決め、その夜、王様の元を訪れた。
淡い色の布を身に纏う王様の横に私が座ると王様は私の顔を見る。
Y「役人達に嬉しい報告があると言われたんだが?なんだ?」
いきなりの言葉に私は震えだし息が荒くなる。
Y「大丈夫か?」
T「王様…その…お……お子を…」
Y「身籠ってるのか?」
口籠る私を見て王様は落ち着いた顔をしてそう言った。
T「は…はい…」
Y「良くやった!!」
私はビクッと震えると王様のその言葉に戸惑い固まる。
そして、王様は私をギュッと抱きしめ耳元でこう囁いた。
Y「外にジラがいる…奴に俺の子じゃないと言ったのか?」
T「い…いえ…」
Y「そうか…お前はこの子を産みたいか?」
その言葉に私は微かな恐怖が生まれ、王様から離れようとするが王様は私を離さず耳元で語りかける。
Y「この子を無事に産みたいのか?」
T「……はい……」
Y「ならばジラ…いや役人達には俺の子だと言え…分かったな。」
そう言うと王様は私を解放した。
思わず私は涙が溢れ出し、震えていると王様は優しく私の頬を撫でた。
Y「何も心配するな…幸せになるよ…身体を大切にしろ……」
私はその言葉の意味が分からないままただ涙を流し、王様は私の涙が止まるまで側で肩を抱き寄せてくれた。
つづく
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