あなたの虜

樺純

文字の大きさ
上 下
18 / 46

18話

しおりを挟む

トウジの作業室に押し込まれた私はまた、いつものトウジの気まぐれが始まったと思って呆れていたら、なぜかトウジの顔は切羽詰まっていて私はその顔に少し戸惑った。

*「ちょっとトウジ…どうしたの…な…なんで彼女出来たなんてくだらない嘘ソラにつくの?」

T「ねぇさん…見なかったの?ソラの薬指の指輪…」

*「え……見てない…」

T「また、一緒に働くんだしソラの負担になりたくないんだ…俺がまだソラの事を忘れてないってソラが知ったら…気まずくて仕事…しにくいだろ?だから…ソラの前だけ彼女いるってことにして…お願い…」

トウジは眉毛を下げて両手を私にすり合わせる。

*「そんな嘘ついてもすぐバレるよ?」

T「バレないよ…ねぇさんが言わない限りは…メンバー自らチーム内の恋愛事情を外に漏らすような危険な事しないから…だからねぇさん…しばらく落ち着くまではお願い。」

*「うん…わかったよ…」

そう話し終えると私はトウジの作業室から出て、トウジの切ない恋心にため息を落とした。

…とはいえ私の仕事は山積みで韓国でのプロモーションが始まる前に片付けないといけないことが沢山ある。

私はデスクに戻り考える事が山積み過ぎてため息が出そうになるが、冷静なフリをしてなんとか仕事を片付けていく。

しかし、仕事の合間合間につい出てしまうのはやはり大きすぎるため息…。

すると、隣にいるセブチ 先輩が私の顔を不思議そうに見つめきた。

*「な…なんですか?」

セ「いや、元気だけが取り柄のミラがさっきからため息ばかりで珍しいなと思ってさ…まさか…恋煩い?」

*「はぁ!?ま…まさか!!そんな訳ないじゃないですか!!悩み事が多いんですよ!仕事に集中してくださいよ!!」

セ「ため息ばかりのやつには言われたくないよ~」

なんて言いながらも私たちは仕事をテキパキと片付けていった。


ある程度、重要案件はまとまり韓国でのプロモーションへのスケジュールを確認してまとめようとした時…

突然、マネージャー室の内線が鳴った。

その内線を取ったセイジ先輩の顔がだんんと曇っていき、キーボードを叩いていた私の手が止まる。

ゆっくりと受話器を置いた先輩を見計らい私は問いかけた。

*「どうしたんですか?なんか…ありました?」 

セ「ユウが振り付けの練習中に怪我した…様子見てくる!」

セイジ先輩は立ち上がりダンススタジオに向かい私もその背中を追いかけた。

熱気漂うダンススタジオの扉を開ければ椅子に腰掛け顔を歪めているユウが目に入った。

周りには心配そうな顔をしたメンバーが集まっていて、ダンススタジオの中の空気は重い雰囲気を醸し出している。

セ「ユウ、大丈夫か?」

Y「大丈夫ですよ…少し休めば…」

ユウがそう言って立とうとするが痛みが強いのか、すぐに顔を歪めて椅子に尻もちをつくように座り込んでしまい、そんな様子のユウを見てセイジ先輩が難しい顔をして言った。

セ「捻挫だと思うけど一応、念のため病院で診てもらってる方がいい…」

Y「いや、ほんと大丈夫なんで…」

セ「ミラ、〇〇先生に連絡して今から診てもらえるか確認して。大丈夫そうならユウを連れて〇〇先生の所に行って診察してもらって?俺、この後社長と会議あるから…ミラに任せる事になるけど…」

*「大丈夫です…先輩は会議に行ってください。」

セ「よろしくね?ユウ、無理だけはするなよ?」

セイジ先輩は勇輝の肩を励ますように叩くとそう言って社長の元へと向かった。

私はスマホを取り出しいつもお世話になっている掛かりつけのお医者さんに連絡をした。

すぐに、来ても大丈夫だと言う事で私がユウに付き添うことになった。

 病院までタクシーで向かったが横で痛みから顔を歪めるユウの様子を見て、少しでも早くユウを診察させたいという気持ちが私の焦りとなり病院に着くまでとても、長い時間のように感じた。

*「ユウ…降りられる?」

私が手を差し出しながらそう言うが、ユウは無言のまま顔を歪めて一人でタクシーを降り足を引きずりながら歩く。

*「ちょっとは私に頼りなさいよ…」

私がそう言いながらユウの身体を支えようと腕を持つと、ユウは私の方を見てニヤッと笑った。

Y「なにそれ俺のこと誘ってんの…?」

ユウはそう言うと遠慮なく私の肩に手を回し、体重を預けてきて忘れていた現実を思い出す。

そうだった…この人今…私に惚れてるんだった…

*「顔近いから…!」

私の首筋に顔を近づけて匂いを嗅いでくるユウの顔を押して、少し距離を取りながらもユウのカラダは支えて私たちは診察室に向かった。


つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

【R18】優しい嘘と甘い枷~もう一度あなたと~

イチニ
恋愛
高校三年生の冬。『お嬢様』だった波奈の日常は、両親の死により一変する。 幼なじみで婚約者の彩人と別れなければならなくなった波奈は、どうしても別れる前に、一度だけ想い出が欲しくて、嘘を吐き、彼を騙して一夜をともにする。 六年後、波奈は彩人と再会するのだが……。 ※別サイトに投稿していたものに性描写を入れ、ストーリーを少し改変したものになります。性描写のある話には◆マークをつけてます。

【完結】一夜の関係を結んだ相手の正体はスパダリヤクザでした~甘い執着で離してくれません!~

中山紡希
恋愛
ある出来事をキッカケに出会った容姿端麗な男の魅力に抗えず、一夜の関係を結んだ萌音。 翌朝目を覚ますと「俺の嫁になれ」と言い寄られる。 けれど、その上半身には昨晩は気付かなかった刺青が彫られていて……。 「久我組の若頭だ」 一夜の関係を結んだ相手は……ヤクザでした。 ※R18 ※性的描写ありますのでご注意ください

ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編

タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。 私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが…… 予定にはなかった大問題が起こってしまった。 本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。 15分あれば読めると思います。 この作品の続編あります♪ 『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...