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65話
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病院に着き受付でオサの名前を伝えるとすぐに産婦人科へと案内された。
「本日、担当させて頂きます野村です。今日はどうされましたか?」
*「数日前から食欲がなくて胃がムカムカして…少し微熱が続いてます。咳とか鼻水はないんですが…あと精神的にも不安定で常にイライラして…」
N「オサ先生から少しお伺いした所によると貧血も少し出てるみたいなので、念のため血液検査と尿検査をしておきましょう。あと…毎月ちゃんと月経は来てますか?」
*「あ…私…元々、不順で…」
N「年齢的にも早めにそちらも治療されてる方がいいですよ?将来、お子さんを希望するならね?じゃ、検査行ってきてください。」
*「はい…」
子供か…考えた事なんてなかったな。
私は看護師さんに案内されながら血液検査と尿検査をした。
しばらくしてまた、診察室に呼ばれた。
N「お待たせしました。検査結果ですが…」
*「はい…。」
N「妊娠されてますよ?おめでとうございます。」
*「え…」
私の反応に不思議そうな顔をするお医者さん…
N「あ…未婚ですね?今、3ヶ月ですね。どうされるかはお相手の方としっかり話し合ってください。結論は早めの方がいいですね。」
*「ぁ……はい…」
それからお腹にエコーを当てて薄っすらと見える影のような赤ちゃんを見せてもらった。
ドクドクと元気に動く赤ちゃんの心拍も聞かせてもらい…なぜか自然と涙が溢れた。
私こんなんでちゃんとお母さんになれるのかな…そんな不安と喜びが入り交じる。
すると、先生がティッシュで私の涙を拭きなが話してくれた。
N「大丈夫ですよ…赤ちゃん元気に育ってます。」
*「先生…私、母親の愛を知らないのに…ちゃんとした母親になれるんでしょうか?」
私がそう話すと先生は私をゆっくりと起き上がらせてくれた。
N「一説によるとお腹に宿る赤ん坊は雲の上からお母さんを選ぶと言われてるんです。」
*「え?」
N「雲の上からあのお母さん可愛いな…とかあのお母さん優しそうだな…って赤ん坊たち同士が相談をして母親を選び、そのお腹に宿るそうですよ。貴方は今、母親としてお腹に宿っている命に選ばれたんです。お腹に宿った赤ん坊は貴方に愛されたい。愛しく想われたい。その一心で今、ただ必死に成長しています。もちろん、お母さんの抱える不安はとても大きい…体の変化や精神的な変化に襲われますから。でも、それはお腹の赤ん坊が元気に育っている証拠でもあります。良かったら…お家でこの絵本読んでみてください。」
そう言って先生はひとつの絵本を私に手渡した。
*「私があなたを選びました…?」
N「これを読めばお腹の赤ん坊が今、どんな想いでいるのか分かると思いますよ。それではお大事に…」
そう言って先生は優しく微笑んだ。
そして、私は先生に頭を下げて診察室を出た。
赤ん坊はお母さんを選ぶ…か…
ジユは果たして私の妊娠を喜んでくれるのだろうか…?
もし、ジユにお腹の子を拒まれたら…
私は一体、どうすればいいのだろう…
色々あったとはいえ…まだ、私たちは付き合い始めて日が浅い。
しかも、3ヶ月って事は…逆算すると初めてジユと私が愛し合ったあの日に出来たことになる。
この子はあの日私たちを選んでここに宿ってくれたの…?
ジユはまだ若いし夢もやりたい事も沢山あるだろう。
しかも、2ヶ月後には仕事でマルタに行くことになってる。
そうなればジユが帰ってくる頃にはもう、お腹の子供は8ヶ月の終わりか…
…情緒不安定なのが自分でも分かるほどに気持ちが落ち込んで嫌な事ばかりが頭の中を支配し…手に持つ先生がくれた絵本と赤ちゃんの写真を見つめた。
少し絵本を開くとお月様の絵に黒い文字で淡々と話が書かれている。
でも、その一文一文はとても重くて想い言葉ばかり…
自然と私の頬には涙が流れていた。
この子を…産みたい。
私を選んでくれたこの子を…
あの日、ジユのそばにずっといたいと思った日に宿ったこの子をこの手で抱きしめたい。
私は自然とそう心から思った。
つづく
「本日、担当させて頂きます野村です。今日はどうされましたか?」
*「数日前から食欲がなくて胃がムカムカして…少し微熱が続いてます。咳とか鼻水はないんですが…あと精神的にも不安定で常にイライラして…」
N「オサ先生から少しお伺いした所によると貧血も少し出てるみたいなので、念のため血液検査と尿検査をしておきましょう。あと…毎月ちゃんと月経は来てますか?」
*「あ…私…元々、不順で…」
N「年齢的にも早めにそちらも治療されてる方がいいですよ?将来、お子さんを希望するならね?じゃ、検査行ってきてください。」
*「はい…」
子供か…考えた事なんてなかったな。
私は看護師さんに案内されながら血液検査と尿検査をした。
しばらくしてまた、診察室に呼ばれた。
N「お待たせしました。検査結果ですが…」
*「はい…。」
N「妊娠されてますよ?おめでとうございます。」
*「え…」
私の反応に不思議そうな顔をするお医者さん…
N「あ…未婚ですね?今、3ヶ月ですね。どうされるかはお相手の方としっかり話し合ってください。結論は早めの方がいいですね。」
*「ぁ……はい…」
それからお腹にエコーを当てて薄っすらと見える影のような赤ちゃんを見せてもらった。
ドクドクと元気に動く赤ちゃんの心拍も聞かせてもらい…なぜか自然と涙が溢れた。
私こんなんでちゃんとお母さんになれるのかな…そんな不安と喜びが入り交じる。
すると、先生がティッシュで私の涙を拭きなが話してくれた。
N「大丈夫ですよ…赤ちゃん元気に育ってます。」
*「先生…私、母親の愛を知らないのに…ちゃんとした母親になれるんでしょうか?」
私がそう話すと先生は私をゆっくりと起き上がらせてくれた。
N「一説によるとお腹に宿る赤ん坊は雲の上からお母さんを選ぶと言われてるんです。」
*「え?」
N「雲の上からあのお母さん可愛いな…とかあのお母さん優しそうだな…って赤ん坊たち同士が相談をして母親を選び、そのお腹に宿るそうですよ。貴方は今、母親としてお腹に宿っている命に選ばれたんです。お腹に宿った赤ん坊は貴方に愛されたい。愛しく想われたい。その一心で今、ただ必死に成長しています。もちろん、お母さんの抱える不安はとても大きい…体の変化や精神的な変化に襲われますから。でも、それはお腹の赤ん坊が元気に育っている証拠でもあります。良かったら…お家でこの絵本読んでみてください。」
そう言って先生はひとつの絵本を私に手渡した。
*「私があなたを選びました…?」
N「これを読めばお腹の赤ん坊が今、どんな想いでいるのか分かると思いますよ。それではお大事に…」
そう言って先生は優しく微笑んだ。
そして、私は先生に頭を下げて診察室を出た。
赤ん坊はお母さんを選ぶ…か…
ジユは果たして私の妊娠を喜んでくれるのだろうか…?
もし、ジユにお腹の子を拒まれたら…
私は一体、どうすればいいのだろう…
色々あったとはいえ…まだ、私たちは付き合い始めて日が浅い。
しかも、3ヶ月って事は…逆算すると初めてジユと私が愛し合ったあの日に出来たことになる。
この子はあの日私たちを選んでここに宿ってくれたの…?
ジユはまだ若いし夢もやりたい事も沢山あるだろう。
しかも、2ヶ月後には仕事でマルタに行くことになってる。
そうなればジユが帰ってくる頃にはもう、お腹の子供は8ヶ月の終わりか…
…情緒不安定なのが自分でも分かるほどに気持ちが落ち込んで嫌な事ばかりが頭の中を支配し…手に持つ先生がくれた絵本と赤ちゃんの写真を見つめた。
少し絵本を開くとお月様の絵に黒い文字で淡々と話が書かれている。
でも、その一文一文はとても重くて想い言葉ばかり…
自然と私の頬には涙が流れていた。
この子を…産みたい。
私を選んでくれたこの子を…
あの日、ジユのそばにずっといたいと思った日に宿ったこの子をこの手で抱きしめたい。
私は自然とそう心から思った。
つづく
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