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第十五話
しおりを挟む裏の駐車場につきユサは助手席を開けて私を見た。
Y「どうぞー。」
ニコッっと口角を上げて笑うユサを見ると私の胸はザクザクと痛かった。
A「ありがとう…」
車に乗ると後ろでミネトとサラナがもうすでに楽しそうに話している。
私はシートベルトをしようと手を伸ばすが、ロックがかかりうまくシートベルト出てこず手こずってしまう。
Y「ほんと鈍くせぇな~。」
ユサはそう言って私の方に身を乗り出し手を伸ばしてシートベルトを引っ張った。
顔を上げるとすぐそこにユサの顔があって、ユサに抱かれていた日々のことを思い出した私の心臓が慌ただしく暴れる。
私は思わずユサから目をそらして窓の外を見つめた。
Y「人にシートベルト付けさせておいて、のん気に外眺めてんじゃねぇよ。」
ユサは私の頭を人差し指で押してクスッと笑いながら自分のシートベルトも締めた。
ゆっくりと動き出す車…少し窓を開けると心地よい風が吹いて私の心のモヤつきも晴らしてくれそうな気がした。
そして、私たちが向かったのは遊園地。
どうしてもミネトがサラナと観覧車に乗りたいと言って大騒ぎするので日帰りで私たちは近くの遊園地にやって来たのだ。
ユサが車を止めてミネトとサラナが後部座席から降りて行く。
私も助手席からおりようとするとユサに手首を掴まれた。
Y「さっきからどうした?お前、朝から変だぞ?熱でもあんじゃねぇの?」
ユサは私のおデコに手を置こうとしたが、散々私のことを抱いておきながら、ユサが寝言で愛してると言ったルルさんの写真を大切に飾っている現実に腹が立ち、私は咄嗟にその手を振り払った。
一瞬、驚いた顔をしたユサから目をそらし私は車をおりた。
駐車場から遊園地の入場口に向かい、チケットを購入し、ユサと気まずい空気のまま中に入ってパンフレット見ているミネトとサラナの横でぼーっとしていると…
「あれ?ミネト?」
ミネトを呼ぶ声がして私とサラナは自然とその声の方へ視線を向けた。
M「ヒサトくん!?ここで何やってんの!?」
この人…どっかで見たことあるな…?
私は見覚えあるその人が誰だったか思いだすように考え込むものの…なかなか思いだせない。
H「勤め先の人達とここに遊びに来たんだよ。あ…あれもしかしてアノンちゃんだよね?」
A「え…あ…はい。」
H「やっぱり!同じ高校だったじゃん!あれ?覚えてない?」
そう言われて顔を覗き込まれ私は思い出した。
私が高1の時、寝坊したミネトを置いて一人で登校していると前を歩いていた上級生がイヤホンの片方を落とした。
私は慌ててそれを拾い追いかけてイヤホンを渡したのがヒサト先輩だった。
A「あぁ…思い出しました!私たちの2つ上の学年のヒサト先輩…」
H「ふふふw そうそう!ラノンとキヒヤもウチでバイトしてるからあっちにいるよ?良かったら一緒にどう?」
私はヒサト先輩のその言葉を聞いて…今日は私にとって史上最大の最悪な日になりそうな気がした。
M「先輩!俺たちはやめとくよ。俺とアノン以外にも連れいるからさ。それぞれで楽しもう?」
ミネトは珍しく顔を引き摺らせながらそう言った。
H「そっか…アノンとゆっくり話してみたかったのにな?じゃ、またね。」
ヒサト先輩はそう言って笑顔で手を振りながら戻っていった。
Y「知り合いか?」
トイレに行っていたユサが戻るとがヒサト先輩の後ろ姿を見ながらそう問いかける。
M「あ…えっと…俺の高校ん時の先輩だよ。」
何故かミネトは焦りながらそうユサに答えた。
Y「そっか。」
SR「アノン!あっちでカチューシャ買おう!!」
サラナはそう言って嬉しそうに私の手を引き、ミネトとユサから少し離れた出店へと連れて行った。
つづく
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