上 下
23 / 29

23話

しおりを挟む
ジョウside

ウチの店は俺がNo.1になってから、クリスマスイヴにイベントをしクリスマスには店を閉めてホスト達の体を休めさせ、その後にくる年末の忙しさを乗り越える…というシステムになった。

それはオーナーであるナルキさんと話し合いスタッフの健康第一を1番に考え、金稼ぎよりもホスト達の身体を優先にすることでより質のいい接客が出来るのではという俺の提案をナルキさんが認めてくれたから。

そのため煌びやかな世界で人に囲まれて過ごす俺は毎年クリスマスだというのにひとりぼっちで過ごす。

昨日のイヴはトラウマを忘れてトモさんと心穏やかに過ごせると思っていたのに結局、トモさんに振られてしまった俺は毎年、襲いかかる不安感と向き合いながら一睡もできないまま過ごしクリスマスを迎えた。

カヲルさんとはクリスマスパーティーにお邪魔すると約束したが、トモさんに振られた俺がトモさんの働くカヲルさんのお店に行けるはずがなく結局、今年のクリスマスもひとりぼっち。

しかし、ふとした瞬間に思い出すのはトモさんとの甘いキス。

あの時のトモさんは間違いなく俺に好意があった……

ような気がした…

俺のことを拒む素振りすら見せなかったし、トモさん自身だって俺の身体を撫でくれていたから。

俺はあのキスの味を思い出し思わずソコの芯が疼き身震いする。


J「あんなにもしっくりきたキス初めてだったのにな…」


そう思いながら恋人達が手を繋ぎ華やいでいる街を一人寂しくポツポツと歩いていると、偶然、見慣れた後ろ姿を見つけ俺は小走りで近寄る。


J「ナルキさん。こんなとこで何やってるんですか?」

N「おぅ!ジョウ~1人で寂しいから街にいるカップルみて潤ってんの。」

J「余計に寂しいじゃんw」

N「うるせぇ。」

J「よかったら一緒に飲みに行きません?」

N「おぉ~いいね~」


ナルキさんとそう話しながら歩いていると、たまたまショーウィンドウに飾られてあったスノードームが俺の目に止まった。

そのスノードームは白いクマが2匹、雪の中で寄り添っていて1つの赤いマフラーを分け合って巻いている。

あまりの可愛さから俺は自然とその店に吸い込まれそのスノードームを手に取る。

するとナルキはんがすかさず俺の横に来て言った。


N「誰かにクリスマスプレゼントか?」


と…

クリスマスプレゼントなんてあげる相手もいないし、むしろ俺は失恋したばかりでそれをナルキさんにバレたくない俺は見栄を張り答える。


J「はい……。」


それがまた虚しさを増させるのに、勢いのまま店員にスノードームを渡すと、店員はスノードームがクリスマスプレゼントだなんてロマンティックですね。なんて言って微笑み、ナルキさんはキザな男だよな?って笑っているから俺は苦笑いしか出てこなかった。

会計を済ましスノードームをラッピングされている間、ナルキさんは珍しくキャンドルを買っていて、俺は店内を見渡しながら誰からも連絡なんて来ていないのに来たフリをしてインスタを開く。

するとそこには俺の番犬であるププが嬉しそうにとても綺麗な整った顔をした男性とツーショットを撮っていて、思わず俺の手が止まった。

こ…これは…まさか…トモさんの素顔!!!?

俺はその写真を見て何故かトモさんだということが一瞬でわかった。

俺はまだ生で素顔のトモさんを見ていないというのに…俺よりも先に素顔のトモさんと会いやがって…


J「あいつ……」


可愛らしくラッピングされたスノードームを受け取ると、怒り心頭な俺はナルキさんを道連れにその勢いのままカヲルさんの店へと向かう。

ププめ…俺より先にトモさんとツーショットを撮るなんて…おぼえておけ…

俺はそう鼻息を荒げていたがナルキさんはなんだよ!?今日は聖なる夜だから抗争はお休みだぞ!?なんて横で言いながらふざけて笑っていた。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冬生まれ
BL
モテる友人、斉藤 結那【さいとう ゆな】とは全く真逆の奏人【かなと】は、いつも彼と比べられ馬鹿にされていた。そんな結那に逆恨みした奏人は、彼を陥れようとある作戦を思いつき、実践するのだが……。

上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い

papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。 派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。 そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。 無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、 女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。 一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…

リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。 乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。 (あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…) 次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり… 前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた… そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。 それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。 じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。 ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!? ※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております

学祭で女装してたら一目惚れされた。

ちろこ
BL
目の前に立っているこの無駄に良い顔のこの男はなんだ?え?俺に惚れた?男の俺に?え?女だと思った?…な、なるほど…え?俺が本当に好き?いや…俺男なんだけど…

女子に間違えられました、、

夜碧ひな
青春
1:文化祭で女装コンテストに強制的に出場させられた有川 日向。コンテスト終了後、日向を可愛い女子だと間違えた1年先輩の朝日 滉太から告白を受ける。猛アピールをしてくる滉太に仕方なくOKしてしまう日向。 果たして2人の運命とは? 2:そこから数ヶ月。また新たなスタートをきった日向たち。が、そこに新たな人物が!? そして周りの人物達が引き起こすハチャメチャストーリーとは! ちょっと不思議なヒューマンラブコメディー。 ※この物語はフィクション作品です。個名、団体などは現実世界において一切関係ありません。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...